▼ブリーチ どうせなら

あたしはひとつ、お願いをしてみる
目を閉じて、心から

あなたとずっと居たいです

裏切られるなんて、思わなかった
でもたいして気にしてはいない
なぜならそれを、本気で願うことになろうとは
思ってなかったから
本気だったけど、当たり前だったから

あたしはひとつ、お願いをしてみる
目を閉じて、心から

あなたとずっと居たいです

切実な薄汚れた願いだけど

どうか叶ってください

あたしは心から願う


「どうしたんだよ、葛」
「…なんでもない」
「いや…」
鎌蔵は何か言いかけて、止めた。何か言ってしまえば、それがどんな言葉であれ
、葛が泣き出してしまうのではないかと思ったのだ。
当の葛は、眉間に多くのシワを寄せ、口をへの字に曲げていて、怒っているように見えても、泣きそうには見えたものではない。だが、長年隣で過ごしてきた鎌蔵には、彼女が泣きそうなことが手に取るように分かる。そういう子なのだということを、知っているのだ。
鎌蔵と葛は、病院の廊下に置いてあった椅子に並んで座っていた。
彼らの目の前の病室からは、さっきまでの騒がしさが嘘のように、物音ひとつ聞こえない。それがかえって心配を誘うのだが、一度覗いた以外、全く覗いていない。なので2人には、中の様子が分からなかった。
鎌蔵の方は、心配で中を覗きたくてたまらないのだが、葛がその行為を拒んでい
るようでできなかった。鎌蔵が葛を優先させるのは、別に彼女が好きだからという訳でなく、ただ大事だからだ。彼が流魂街にいる時からの、心の寄りどころなのだ。
ふと葛が顔を鎌蔵の方に上げた。その顔は、何やら決心した顔だった。
「鎌蔵、行くぞ」
「…どこへだよ」
葛は黙って手前の病室を指差す。
「さっき看護婦さんが…」
「いいから来い!…お前、斬魄刀の声を聞いたよな?」
鎌蔵は驚いた。それが顔に出たのか、葛が答える。
「何、少しばかり米守の機嫌が好いみたいだったからな。…そうではないかと思
って」
「何で機嫌好いとか分かるんだよ…」
鎌蔵は知っている。昔から人に限らずあらゆるものの機嫌やら気分やらが分る
子だった。そして何故と聞くと必ず答える。
「何となく、だ」

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