▼分度器(オリジナル) 36

手芸部は今一年1人、二年2人と三年が七都と章子だけなのだが、章子は何かの呼び出しを受けていて部室にはおらず、一年の子は不登校、二年のうち1人は塾で部活を休み、もう1人はそもそも学校を欠席していた。顧問の先生に至っては、美術部の顧問が専門的なことをする日のみ部室にやってくるのだとすれば、彼女(女性、27歳独身)は専門的なことをする時に説明だけして去っていくという、1日でもまともに部活を取り仕切ったのは七都らが入部したその日だけだという、そういう先生だった。
だから部室には宿題をする後輩すらおらず、寂しさのあまりここにきたらしい。
少し場に慣れてきた奈緒は更に話しかけてみた。
「なんでこっちまできて黄昏んねん」
「そういう気分」
「ガラスの心でもかち割ったつもりか」
「かち割ってはないよ」
「ブローグン・ハートか」
「そうや」
「粉砕された心臓」
「そうや」
会話はそこで途切れた。
奈緒は軽くため息をつき、何もなかったかのように再び窓の外に視線を移した。七都は相も変わらず景色を眺めていた。

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