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「気が付けば君を探してしまう」



君がアウドムラに乗り込んで来た時から、私は常に君の気配を追っている。
同じフロアに居なくてもはっきりと感じられる君の気配は、絶えず動いていて、私が近寄るとすうっと逃げていってしまう。
まるで、指の間から零れ落ちる砂の粒のように。寄せては引く波のように。
掴まえそうで掴まえられないもどかしい気配が、今日も私の意識を攫っていく。
こんなことではいけない。
我々には地球での任務が有り、早々に完遂して宇宙に戻らなくてはならんのだから。
珍しく止まっている気配に、逃げられないようそっと近付けば、視界に飛び込んできたのはあろうことかキスシーン。
ああ。
7年の歳月は、少年だった君を大人にしたのだな。
今更そんなものを目撃したところで、赤面するような純粋さは失っているが。
何故こんなに、胸が痛むのだろう。
何故これ程までに、君が気になって仕方ないのだろう。
艦橋で、MSデッキで、食堂で。
チラリと視界を掠める君の姿を、何故私は無意識で追ってしまうのか。
姿が見えなければ、意識を総動員して気配を探る。
そうして辿り着いた君の気配を感じて、私は胸を撫で下ろすのだ。
何故、君を探してしまうのか。
何故、同性の君にここまで執着してしまうのか。
何故、何年経っても君を忘れられないのだろうか。
君の持つ、私には太刀打ちできない強大な能力が、私を磁石のように引き寄せるとでも言うのか。
それとも、今も地球圏に漂うララァの魂が、私と君の魂を結びつけているとでも言うのか。
目を逸せない。逸らしたくても、逸らすことができない。
君を見れば、否応なくあの日を思い出すのに。
…アムロ・レイ。
君の何がそこまで私を惹き付ける?
君の存在が、私を縛り付ける重力になるようだ。
私にはまだ、しなければならない事が残っているというのに。
重力になど縛られたくはないのに、君にならいいかとも思えてしまうのだ、この私が!
私の心の中は、二律背反の感情が鬩ぎあっている。

こんな、狂おしい感情を、私は持ったことがない。








<落ちる恋に10のお題> ☆「月の咲く空」様からお借りしました☆

赤→白inアウドムラ 
シャアは本気の恋をしたことがないんじゃないかと捏造して。復讐に身をやつす男に、そんな暇があるか。
ララァへの思いも、失って初めて解ったんじゃないかな、泣いていたし。
目的の為に利用しつつも才能を愛していたのは事実で、でも彼女自身をも知らぬうちに愛していたんじゃないかしら。だったらいいな〜という希望的観測の元に。
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