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「運命なんて言葉で終らせない」




運命を信じるほど俺はロマンティストじゃない。
それでも貴方との出会いは、運命としか言い様がないのかもしれない。
きっと初めてMSで戦った時から、俺の人生は貴方に縛られていたんだ。
その時は物凄く恐ろしい人だと思ったのに、あの泥道で会った貴方は酷く親切で穏やかで。
いくら中立コロニーといえど、敵艦クルーの俺に優しくしてくれるなんて。
そんな優しい人だとは思いもしなかった。
落ち着いた態度と、低く柔らかい声は大人の男性のもので、まだ子供だった俺には何もかもが眩しすぎた。
恐ろしいのに惹かれて止まない相手、それが貴方だったよ。
生身で殺し合ったり、一緒に酒を飲んで穏やかに話したり、大人気なく取っ組み合いの喧嘩をしたり。
俺は結構温厚だと思うのに、何故か貴方の前では喧嘩腰になってしまって、自分でも不思議だった。
でもそれは、貴方にだけは何も隠さず、自分をさらけ出す事が出来たからなんだ。
深層意識の中で、貴方は俺から絶対に離れていかない、という自信があったからだ。
俺と貴方はどこか似ているのかもしれない。
だから、反発するけど無意識に惹かれ合うんだろう。
自他共に宿敵と思っていた貴方と、共通の敵に立ち向かえた時、俺は心底嬉しかったんだ。
貴方が待っているから、怖いけど宇宙に上がろうと思えた。
同じ立ち位置で戦えば、誰よりも信頼できる人。
安心して背中を任せられる、たった一人の人だと思っていたのに。
なのに、シャア。
貴方は又、俺の前から姿を消してしまった。
数年ぶりに再会できたと思えば、数年後には真正面の敵として現れるなんて、貴方はほんとに酷い人だ。
一緒に戦った皆を裏切ったこと、どう釈明するつもりなんだ?
ブライトもハヤトも、貴方を物凄く信頼していたのに、何とも思わないのか?
…いや、そんな卑劣漢じゃないことは俺が一番知っている。
良くも悪くも貴方は純粋な人だから、白か黒かはっきりしないとケジメがつかないんだ。
だから、極端に走ってしまったんだろう?
誰よりも地球の汚染を危惧していた貴方だから、それを加速させる人々が許せなかった。
違うかい?
そして、そんな自分が嫌で、道化を演じるのが辛くて、俺に殺されたかったんだろう?
残念だけど、俺は貴方を殺してなんかやらない。
もう二度と、貴方を失いたくないんだ。
百式の残骸を目の当たりにして、俺がどんなに後悔したか知っているか?
壊れたコクピットに貴方の姿がなくて、どれほどの喪失感に襲われたか解るか?
もっと早く、貴方と一緒に宇宙へ上がっていたらと思うと、悔しくて気が狂いそうだったよ。
他の誰かに殺されるくらいなら、俺がこの手で貴方を殺す。
でも、貴方が死んだら俺も生きていけそうにない。
敵同士は殺しあうのが運命、だとは思わない。思いたくもない。
そんな言葉で、俺と貴方を終らせたりはしない。

だから、シャア。

早くその、透き通るようなアイスブルーの瞳を開けてくれ。
そして俺を見つめてほしい。
早くその、低く柔らかい声音で俺の名前を呼んでくれ。
そうしたら、俺はもう二度と貴方の手を払ったりしないから。






CCA後の白→赤への告白。
シャアが昏睡状態で目覚めない時、枕元に座ってシャアの手を握りながら告白するアムロ。
相思相愛なのに気付かなかった、鈍感なニュータイプ二人に萌えます。
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