▼04
「それでも君を愛すだろう」





随分長い回り道をしたものだ。
自分の気持ちを偽らず、最初から本音をぶつけていたら、もっと早く私に応えてくれたのだろうか。
だが、これまでのことがあるから、今が幸せだと思えるのだろう。
君が私の手を取ってくれたことを、心の底から感謝できるのだろう。
私は誰も愛せない、その資格があるとも思っていなかった。
なんと味気ない人生を送っていたのだろうな…。
だから失って初めて、ララァの大切さを思い知らされたのだ。
才能を愛しているとは言ったが、彼女自身を愛していたことに気付かなかった私は、なんと傲慢で愚かだったことか。
あの時は本当に君を憎んでいた。いつか必ず、この手で殺すと誓っていた。
だがそれも、よく考えてみればお門違いでしかない。
全ては私自身が悪いのだから。
君を殺すことが出来なかったのは、恐らくあの頃から君を愛していたからだろう。
初めて君と出会ったあの日、私を見て逃げるように去っていった君は、幼さの残るほんの少年だった。
それから幾度もMS越しに対決し、どうしても撃ち落とせなかった唯一の存在。
同士になれと延ばした手を払われた時、私がどんなに気落ちしたか、君は知らないだろう?
戦争が終り、私の復讐も終わりを告げた時、真っ先に思いを馳せたのは君のことだった。
持てる手駒を総動員して、それこそ何年も君を探したのだよ。
存在自体が無かったかのように君の消息は途絶え、なのに私の中の無意識は君の存在を確かに感じていた。
地球に降下して、思いもかけず君と再会を果たした時に、私は身が震える思いだった。
生きていた、生きていてくれたと、酷く安堵したものだ。
なのに君は、私を意識しすぎてか素っ気なくていつだって喧嘩腰で。
非常に残念に思ったものだ。
だがな、あのダカールで君が私を送り、迎えにきてくれたことと、宇宙に戻る際に君が援護してくれたこと、とても嬉しかったのだよ。
『護ってみせる』と叫んだ君を、抱き締めたいくらいだった。
どうしても一緒に戦いたかった。
広大な宇宙の中、私の傍でMSを駆る君を見ていたかった。
はからずしもそれは叶わなかったが、真正面の敵として再び合まみえることには成功した。
本当は、総帥などどうでも良かったのだ。
私の願いは只一つ、君と宇宙でMSを駆っていたかったのだから。
私が望むもの全てが私には縁の無いものと知った時、私は君に討たれることを選んだ。
手に入らないのなら、生きていても仕方がない。
望まずに道化を演じ続けなければならない世界になど、用はない。
サザビーすらも惜しいとは思わなかった。
ただひたすら、君に討たれることを望んでいた。
なのに君は。
怒りながらも私を救ってくれたのだ。
生きて再び君に逢えるとは思いもしなかったから、これはなんと都合のいい夢かと苦笑を禁じ得なかった。
そして君を愛していると自覚した時、くすんでいた世界が色彩を取り戻したようだった。
冷たく暗い洞窟から、暖かく日当りの良い場所に出てこれたような気持ちがした。
私の好きな、星の煌めく宇宙に漂っているような気がした。
愛憎とは表裏一体というが、本当だったな。
こうした穏やかな生活を夢見たことは一度もなかったのだが…今はもう失うのが怖くて堪らない。
君が居なくなってしまったらと考えると、怖くて夜も眠れない。
君が傍に居てくれればそれだけで安心でき、温もりを全身で感じると鳥肌が立つ程嬉しいのだ。
正直言って、こんなに独占欲が強いとは思っていなかったんだが…
もし君が、動けない体になったとしても私は君を放さない。
どんな姿になったとしても、だ。
懇願されても、脅されても、私は絶対に君の手を放さないから覚悟しておくのだな。
君は私が初めて、心の底から欲しいと思った人だから。
例え憎まれようとも、君が存在してくれるのならば。
私は君を愛することを止めないだろう。
そしてアムロ。
私に応えてくれてありがとう。
私を愛してくれて、ありがとう。







赤→白
二人で迎えた朝、白の寝顔を見ながら思うこと。相変わらずウチのシャア様は甘甘なので、起きた白さんの為に朝食を運んであげるんですよ(笑)。
甘やかし過ぎだよ、シャア様!

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