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(シャアのお母さん、俺にも貴女の名前を呼び捨てることを許して下さい…。シャアがこれ以上傷つかないように、俺が護りますから)
アムロとシャアに挟まれる形になったアストライアが「ワン!」と一声吼えた。
アムロには、それが許しの返事のように聞こえていた。






(お母さん、貴女の名前をつけることを許して下さい。貴女の不肖の息子は、本懐を遂げられずにこうして生き延びていますが、今はそれを悔やんではいません。今更貴方のキャスバルには戻れないけれど、貴女の息子であることを忘れないように、貴女の名前を呼びましょう。それくらいしかしてあげられない愚かな息子を、どうか許して下さい)




…母の名を呼ぶことは、シャアにとっての贖罪なのかもしれなかった。








シャアとセイラの家に小さなメンバーが加わって一ヶ月、シャアはアストライアを我が子のように可愛がっていた。
シャアの足許にはいつもアストライアが居る。
大分大きくなった彼女は、シャアと転げ回って遊ぶのが大好きなお転婆な女の子。
『まるで小さな頃のアルテイシアのようだ』と、目を細める兄の姿に、当の本人は苦笑を禁じえなかった。
食事もシャアの足許で食べ、シャワーの間はドアの外で待っている。
眠る時もシャアのベッドの下で、セイラ特製のクッションをベッドにして眠る。
一度、アムロが親子のようだとからかうと、
「勿論、私の娘だ。マザコンでシスコンの男は、女性を幸せには出来ないから丁度いいだろう」
という、にこやかな答えが返って来た。
悪いこと言ったかな、と反省すれば、
「私には、アルテイシアとアストライアと君がいれば過ぎた幸せだよ」
と綺麗に微笑まれ、項まで真っ赤になったアムロがいたとかいないとか。








ーーーそして時々、アムロとアストライアが、シャアを取り合って取っ組み合いの喧嘩をするようになるのは、もう少し先のお話。

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