*永久に・・・闇色
光宿らぬ虚ろな瞳

漆黒の不安の中で生きる・・・君


『永久に・・・闇色』-とわに・・・やみいろ-


「ベル・・・?」
そう呼ばれる度に
手を握って無防備な頬にキスをする。
「いるよ。」と耳元で囁きながら。
これが
綱吉に自分の存在を示す精一杯の方法だった。

いつも、何かを見ているようで見ていなくて。
それでも君は
いつも不安そうな声色で俺の名前を何度も呼んで。

「綱吉、大丈夫?怖くない?」
「うん。もう大分慣れたよ。
いつもベルが傍にいてくれて、こうして抱きしめてくれるから・・・。」

1ヶ月前だった。
綱吉が原因不明の失明をしたのは。
突然真っ暗になって、ベルの顔も何も見えないと言って泣きついてきた綱吉。
あの時の顔、今でも思い出すと胸が苦しくなる。
でも、1番辛いのは綱吉なんだよね。
急に光を失って闇の中に落とされて、どれだけ不安になった?
流石の王子でも
もう1度綱吉に光を与えることは不可能だった。

もう心さえも光を失ってしまったかのように無表情な綱吉。
それでも俺が名前を呼べば
失明した事への不安は何もないと思わせるくらいの笑顔になる。
それが逆に俺の心を締め付ける。

だって、知ってるから。
俺が任務に行っている夜中
部屋で1人泣いていることを。
任務が終わって綱吉の元へ帰ると
頬に幾つもの涙の跡を残した綱吉が眠っていた。

こんな恐怖と不安のどん底にいながら
見えない光の中で必死に生きているのに。
それなのに、何もしてあげられなくて・・・。

抱きしめるとそれがひしひしと伝わってくる。
ベルはその時、生まれて初めて涙の味を知った。
「・・・ベル?泣いてるの?」
つつ・・・とベルの涙は頬を伝い
綱吉の首筋へと落ちていく。
「うしし・・・違うよ・・・俺は泣いてないから・・・大丈夫。」
震える声を必死に抑えて
悟られないように精一杯の嘘をついた。
「綱吉・・・大好き。愛してるから・・・。」


俺のことを永遠にその瞳に映せなくても

不安の中を彷徨いすぎて壊れそうになっても

俺はいつでも傍にいて

君を愛してあげるから・・・


end


失明してしまった綱吉とそれに悲しむベルの話。
ベルは綱吉が失明してしまったことも悲しいけど、
何より綱吉に何もしてあげられないことが1番悲しくて悔しい・・・
そして生まれて初めて悲しみを知る・・・そんなシリアスちっくな感じです。
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