*愛する人へ
『愛する人へ』


昼休み。
ツナはヒバリに誘われ応接室のソファーでくつろぎ中。

「綱吉。」
「はい。」
「明日って何の日か知ってる?」
明日・・・2月14日。
ツナはその日にちで脳内を検索してみる。
結果として浮かんできたものはたった1つ。
「バレンタインデーですよね?」
「当たり。で、何をする日?」
「え?えぇーと・・・好きな人にチョコを渡す日・・・?」
「うん。じゃあ綱吉の好きな人は?」
「ヒ、ヒバリさん、です。」
ヒバリが何を言いたいのかを何となく察知したツナは、
言葉を詰まらせながらも愛するものの名前を口にした。
ヒバリは少し満足げに口元を緩め、
ツナの隣へ腰を下ろす。

「明日を楽しみにしてるよ。」
「あの・・・チョコって女子が渡す物なんじゃ・・・」
「違うよ。バレンタインっていうのは、愛する者への想いを形にして伝える日でしょ。
本来なら国が勝手に決めた群れるための日なんかに従いたくないんだけどね。」
いったんそこで言葉を切って、目の前にある無防備な唇に優しくキス。

「でも僕のことを愛してくれる人ができちゃったから。」

さらりと口にされる甘い言葉に、ツナは恥ずかしさから何も言うことができなくて、
ただ頬を朱に染めながらその瞳を見つめ返すことしかできなくなっていた。

「綱吉。」
「はい・・・。」
「明日の昼休み、またここに来るんだよ。」

結局ヒバリに会話の主導権を握られたまま、会話に終止符を打つように予鈴がなってしまった。

教室に戻り、ようやく我に返ることが出来たときのツナの脳には
先ほどの会話が繰り返されていた。

明日ヒバリの元へ行くと言うことは、すなわちチョコを持っていくこと。
つまりプレゼント用として売っている物を買って持っていくか、
自分で作った物を持っていくかの2択。

売っている物を買うとなると、女性が集まっている場に行かなくてはならない。
バレンタインチョコを男が店に買いに行くのはあまりにも恥ずかしすぎる。
かといって板チョコから作るのも、超が付くほどに不器用なツナにとっては
到底無理な話である。

ツナは暗中模索を繰り返すも良い案が思いつかなくて、
結果、ひとまず何かしらのチョコは冷蔵庫に入れておこうということになり、
帰りにコンビニに寄って板チョコを1枚買い、冷蔵庫に袋ごと放り込んだ。

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