*融解境界線2(雲雀編)
*融解境界線*



気持ち良さそうな青空に導かれて階段を上り
雲雀は屋上のいつも寝ている安全柵の近くに仰向けに寝転がった。

四時限目の授業が行われている今はどこのクラスも体育がないのか
活気のある声はひっそりと息を潜めている。
その声どころか、今は何も音がなく、雲雀が眠るには最適の環境だった。

(今日はなかなかいい日だね)

そんなことを心の中で呟きながら、静かに空を見上げる。
鮮やかに広がる蒼を暫く眺めていると
不意に、華奢な体をした小動物のような愛しい恋人が
空をキャンパスにして浮かび上がった。

その恋人──沢田綱吉に出会うまでは考えられなかった出来事に
少し不思議な、温もりのような感覚を覚える。

これまで誰も愛そうとせず、群れることに殺意すら芽生えていた自分が持った
初めての“愛情”という感情。
まさか自分にもあるとは思っていなかった。

そんな不思議な感情に浸りながら
雲雀はいつの間にか静かに瞼を閉じていた。



***



大抵こういう時の眠りは浅い。
夢を見ない時に現れるぼんやりとした暗闇の中に雲雀はいた。

思考は働いておらずぼーっとしていると
遠くで風と木の葉の音が聞こえた。
周りに敏感な雲雀はその音で現実に戻される。

青空の眩しさに最初はうっすらと目を開く。
すると直ぐに雲雀は視界の右端の方になにかがあるのを見つけた。
そちらに焦点を移すと、それは寝る前に空に描いた恋人の姿で。
腕で顔をかばうようにしていたのか、大きな瞳は二本の細腕の上からこちらを見ていた。

(僕は今、葉と風の音で・・・)

「・・・綱吉?」

驚いた雲雀が独り言のように言ったその言葉が聞こえたらしく
綱吉は慌てて起こしてしまったことを謝った。
そして自分が起きたのは葉と風のせいだということを伝えると
今度は綱吉が素っ頓狂な声を上げて驚いていた。

今まで他人の気配で起きなかったことなんて
絶対に無かったのに。
なぜ、綱吉は・・・


(・・・あぁ・・)

そうか、なんだ、簡単なことじゃないか。

「応接室に行くよ。」

キスをして、ぽかんとしている綱吉が何か言葉を返す前に
右手を引いて階段へと向かった。


僕が寝ていて

君が来ても起きなくて。

何でだと思う?

鈍感な君は

きっとずっと分からないだろうね。

答えは簡単さ

───君という存在は、僕の中ではとっくのとうに“他人”じゃないってこと

これが愛ってやつなんだね。

この答えは僕だけが知っていればいい。

君は、これに気付いた僕から

精一杯の、溢れんばかりの愛情を受ければいい。

end



なんだろうこれちょっとすっきりしません。
雲雀さんはもう綱吉という存在が隣にいるのが当たり前で、
無警戒を越して自分の一部のような感じ?
当然本人(雲雀)は無自覚でした(笑)
気づいたら自分の心の中ですっごく大きい存在になっていたとかその類です。
綱吉はそこんとこ鈍感な子ですから一生分かりません。
むー表現し切れてない気がします。
日々精進ですね。
では、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
                                           2008.2.29 純白華
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