その日、トリコは新種の植物を発見した。





「ふーん、で、何で僕の所に来てるんだい?」
そう言いながら笑顔で応える四天王の一人、ココの目は笑っていなかった。
それどころか常人では卒倒しそうなほどの不穏な空気を隠そうともせずに、同じ四天王の一人、トリコに向って放っていた。
「だからよ、これに毒があるかどうか見てほしいんだって、さっきから言ってるじゃねーか。」
その空気を感じているはずなのに、のほほんと気にもせずにさらにココの気を立たせる言葉を発する。
「僕もさっきから言ってるはずなんだけど。今日は小松君が来るからさっさと出て行けって。」
その言葉が終るか終らぬかのタイミングでビュっ、と何かの飛沫がトリコ目掛け飛んできたが、それを器用にトリコはよけた。
飛沫は壁に当たると、ジュっと音を立ててその壁を無残にも溶かしてしまった。
「……塩酸飛ばすかフツー……。」
いくら何でも致死毒は飛ばさないとしても、麻痺毒くらいだろうと高をくくっていたトリコだったがよけて正解だった。
確かに致死毒ではないし、毒薬でもない。
ただし劇薬ではあった。
しかも飛沫の軌道は確実にトリコの眼を狙っていて、当たれば確実に大けがを負う事になっていた。
「いいじゃないか毒薬よりは。それにご飯を食べれば治るだろ?」
「治るが痛いじゃないか確実にッ!!」
さも僕の温情をありがたく思えとしれっと笑顔で答えるココに、トリコは大声で抗議しながらも、存外真面目な顔で話を進める。
「急に押しかけて悪いとは思ってるよ。けどよ、こいつからは何となく嫌な感じがするんだよ。今んところ広い範囲には群生していなかったし、まだ花や種も付けていないみたいだから、ヤバ目のやつだったら早く処理した方がいいと思ってよ。ま、俺の感が外れてればいいんだけどよ……」
トリコの言葉を聞いてここは少しばかり驚いた。
基本、トリコは放任主義だ。
それが自然の摂理の内にあるのなら、例えそれがどんなに有害なものであっても自分から手を出すことはしない。(同じ四天王のゼブラは違ったが)
自然の摂理を曲げてまで「処理」しようとは考えないのだが……
そんなココの考えを読み取ってトリコはさらに話を続けた。
「どうもこいつは……人工物っぽいんだよな……。」
自分たちがそうであるように、トリコはこの植物からも同じ匂いがするという。
それもトリコが危惧するほどの何か……
「分かった。お前がそこまで言うのなら。」
そう言ってここはグルメケースの植物に向かい視力を解放した。
「赤外線、紫外線、ガンマ、アルファ、エックス線……どれにも異常はないなあ。総合的な電磁波だと……ちょっと見たことのない波形だな。あまりいい感じはしない。」
ココは一旦視力を閉じるとトリコに向きなおった。
「ふう……結論から言って、これには毒がある。でも何の毒カは分からない。」
「ココ、でもか?」
「僕でも、だ。それが怖いね。摂取すれば何の毒かは分かるけど、そこまで博打は打ちたくない。IGOに持って行ってそこで分析してもらうといい。」
ココは話を打ち切りトリコを追い出しにかかる。
「ちょッ!?俺だけで行くのかよ!お前も来いよッ!!」
「何で僕が行かなきゃいけないんだ。見つけたのはお前だろッ!」
「どっちにしろこいつに毒がある限りお前が招集されふに決まってるだろッ!それにこいつの得体の知れなさを上手く説明するのがメンド臭い。」
「説明出来ないじゃなくて面倒臭いってかッ!?それが本音かッ!!とにかく今日は小松君が……」
「小松が来るのは夕方からだろッ!今すぐ行ってついでに(庭)の食材2〜3個土産に持って帰れば小松も喜ぶって。」
「……なんでお前が小松君のスケジュールを把握してるんだ……。」
「突っ込むところソコッ!?とにかくさあッ!今ビジョンブラッドベリーが旬だろ?あと夜来鳥の産卵シーズンだし、スパイスナッツも……」
トリコが口にした食材たちは全て、先日小松が調理してみたいといった食材たち。
当然(庭)にはそれら食材が全て揃う。
「……分かった。どうせIGOに持ち込めば遅かれ早かれ呼び出しがかかるだろうし……面倒な事は先に済ませよう。」
こうして二人は謎の植物を持ってIGO第1ビオトーブへと向かった。


注意、これはギャグです。

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