• 最近読んだ本でおもしろかったものです。
▼写楽百面相 (新潮文庫) 5
写楽百面相 (新潮文庫)
泡坂妻夫「写楽百面相」
 ペンネームは本名のアナグラムだそうである。この人は面白い人で、紋章上絵師、手品師の顔も持つ作家である。一番始めに読んだ本は紋章上絵師としての「家紋の話ー上絵師が語る紋章の美」だった。家紋について知りたいことがあって読み始めたのだが、これがえらい面白くて、作者に興味を持ったのだった。近くの小さな図書館には彼の本2冊しかなくて、その一つがこれ。謎の絵師として名高い写楽について、彼だったら絶対書くだろう一冊。既に高校生の時に写楽に惹かれていたという。巻末には写楽について書かれた本のリストが載っている。写楽考も面白いところだが、当時の歌舞伎役者や力士が出てきて楽しませてくれる。これを書いていて泡坂氏の訃報が入ってきた。残念。惜しい。もっといろんな小説を期待していたのに。ご冥福を祈ります。

2009/2/6(金) 11:56 ..No.6
▼写楽 5
写楽
皆川博子作「写楽」を読む。まるでその場面を見ているような筆致で、すっかり引き込まれてしまった。あとがきを読んで、なるほど、これは映画のシナリオを書いたその人だったのである。納得。篠田正浩監督、今は亡きフランキー堺の主演で話題の映画だったが、残念ながら観ていない。いつか観る機会もあろうが、この本だけでも十分楽しめる。
謎の絵師写楽、彼がいつ出てくるのか、半分ほど読み進んでも出てこない。たぶんと思いはしていたが、それがはっきりと「東州斉写楽」として名前が出てくるのはずっとあと。そしてついには…というわけで、たった数ヶ月の絵師、幻の絵師となったという、謎解きがされる。

2009/2/2(月) 14:09 ..No.5
▼あかね空 5
あかね空
山本一力「あかね空」
これは良かった。
読み終わってからのすがすがしさ。
ただひとつ、あの傳蔵の出自が明かされなかった。
読者にはわかっているのだが…
あの時さらわれた子だ。
これが本人に明かされたとすると、また物語が増えるわけだ。
もうひとつ読みたい気がする。
いや博徒の話はあまり好まない。
京都から身一つで江戸に出てきて、豆腐やとして成功した男の話。
波瀾万丈ではないけれど、それほど幸福な生涯ともいえない。
好きで夫婦になった女が、娘時代の気だての良さをずっと持ち続けるのかと思っていたら、子供を持つに従って変化していく。
人間の業というか、哀しさを覚える。

2008/8/29(金) 11:48 ..No.4
▼円朝芝居噺 夫婦幽霊 5
円朝芝居噺 夫婦幽霊
期待通りの面白さ。虚か実か。不思議な気持ちにさせられる。
だいぶ前に朝日新聞の書評に載っていた時から読みたいと思っていたもの。明治の頃の速記本を手に入れた時から話が始まる。初めは苦労して解読した円朝の芝居噺「夫婦幽霊」が高座の口調で語られる。最後は円朝の息子朝太郎と芥川龍之介が表れ、謎が残る。著者自身にもまだ不確かなところが残るそうだが、いつかまた書かれることもあるのだろう。楽しみにしていよう。

2008/7/31(木) 11:17 ..No.3
▼幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (髪結い伊三次捕物余話) 5
幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (髪結い伊三次捕物余話)
読んでいるうちに江戸の市中にいる気分に。久しぶりに面白い江戸人情話に会った。中でも「備後表」は映画を見ているようでどきどきはらはら。そして思わず目頭が熱くなる場面も。オール読み物新人賞をとり、直木賞候補にもなったらしい。
登場人物が魅力的。主人公の伊三次というのは廻り髪結いだが同心の手下もやっている。その同心というのがまた魅力的。体格はよさそうだが、あまり男前ではなさそう。彼にはいなみという元女郎の奥方がいる。彼らの周りで起こるそれほど大事件ではないが、彼らにとっては大変な事件の数々。

2008/7/28(月) 15:11 ..No.1
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