▼誓いの翼(2竜)
天気の良い祝日の午後
今日はレジェンズクラブのクラブ活動という事で
クラブメンバー全員スパークス邸に集まり
それなりに寛いでいた

クラブ活動と言いながらも特にやる事も無く
ただ集まっているというだけの事なのに
何故か全員欠けることなく集まっている
これも部長であるシュウの人を引き付ける魅力のなせる業なのか
それはクラブ結成以来
ディーノがピアノの発表会だとか
メグが風邪を引いたとかの何か特別な事が無い限り
続いていた

広い庭の木陰で昼寝をするシロン
そしてランシーンはその横で本を読んでいた

「穏やか・・・・ですね」
吹き抜ける風を感じながらランシーンは呟く

「ん?何がだ?」
閉じていた目を開けてシロンが
首だけ動かしてランシーンを見つめる

「風が穏やかに吹いています・・・」
「これを『平和』と言うのでしょうか・・・」
ランシーンは読んでいた本に栞を挟み
本をゆっくりと閉じ
目を閉じて体で風を感じる


「そうだな・・・・」
シロンも目を閉じて風を感じる

閉じた目を開きランシーンは
向こうで遊ぶ愛しき子供の姿を見つめながら
「シロン・・・」
とシロンに話しかける

「なんだ?」

「お前・・・私達の翼は何の為にあると思う?」

「・・・・・・・・」
むくりと上半身だけ体を起こし
大地に座るシロン
「さあねぇ・・・飛ぶためじゃねぇか?」

「飛ぶため・・・そうだな、確かにそれもあるだろうな」
「だが・・・それだけではないだろう?」

「・・・・・・・」

「私達の翼は戦う為に存在しているのだ」

「・・・・・・・」

「この爪も、この牙も・・・・」
「我々は戦う為に生まれてきた、レジェンズとは本来そういうものだ」

「私達が生かされているこの事実・・・」
「この平和がいつまで続くのか・・・お前は不安にはならないか?」
「螺旋の運命は断ち切られた」
「私達は戦いの号令をかける気はないが」

もし自分達が号令をかけなくても戦いが始まってしまったら?
この世界は螺旋の運命から外れている
どんなことが起こるか解らない

「・・・・・・・」

「私は・・・もし戦いが始まったなら」
「・・・・・戦うつもりだ」

「!!お前・・・」
ランシーンの言葉に一瞬驚きの色を見せるシロン

「もちろん文明を破壊するとかそういうつもりは無い」
「ただ・・・護りたいのだ・・・あの子供を・・・」

あの子供が大切にしている者達を・・・

全身全霊を賭けて護りたい

「シロン・・・約束をしてほしいことがある」

ランシーンは一呼吸間をあけて
気持ちを決めたように言う
「サーガを護ってほしい」

「傍らに護るべき者を置いたままでは満足に戦う事は出来ない」

護りながら戦うのは
それは弱点をさらすのと一緒だ
そこを突かれては満足に戦えない

「お前はサーガを護れ」
「お前になら・・・背中を任せていられる」

お前なら必ず『サーガ』を護れると信じている
自分の半身だからこそ信頼出来る

それを黙って聞いていたシロンは
「まあ・・・言われるまでもないとは思うんだけどなぁ」
護りたい気持ちは同じ
「俺も・・・お前が前線で戦うなら安心して護りに集中出来るしな」

そしてふっと空を見上げ
青空を見つめながらシロンは言う
「だけど・・・・」
「今はそんな事考えなくてもいいんじゃねぇか?」
「起こるか起こらないか解らない戦いを心配するより」

おもむろにランシーンに視線を移し
「今はサーガと共に居ることに平和を感じていようや」
シロンは笑う

その笑顔を見ながらランシーンは
鼻でふっと笑いながら
「能天気だな・・・」と呟く

「おお〜い!!でかっちょ〜!!ワル夫〜!!」
遠くでシュウが大きな声を出して2竜に話しかける
「キザ夫の母さんの美味しいおやつ出来たみたいだから一緒に食おうぜ〜♪」
上機嫌にブンブンと手を振っているシュウ

「お呼びみたいだな・・・行こうか」
「早く行かないと食いっ逸れるぜ?」
シロンはゆっくりと腰を上げる

「そうだな・・・・」
ランシーンもゆっくりと腰を上げ
そして2竜はシュウが居るテーブルへ向かう


戦いが起こるのかどうかなど解らない
ただ今はこの幸せを護ろうと思うだけ

あの愛しい子供が幸せに暮らせる為の世界を護る

ただそれだけの事


おしまい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あとがき

いつもうちのサイトでは馬鹿なことばかりしている2竜ですが(笑)
たまには真面目な会話もするんですよ〜ってお話
喧嘩はするけど密かに仲が良い2竜を書いて見たかったのですw