▼雨(シロシュウ)

「今日は空で風に当たりたいな〜」
シュウの一言(おねだり)で
シロンはシュウを背に乗せ大空を飛んでいた

今は雲の上だ

「うおぉぉぉお〜!!高っけぇ〜!!怖ぇええ!!」
高度が高くなると悲鳴を上げるシュウに半ば呆れながら
「お前が空の風に当たりたいって言ってたんだろが?」
と話しかけるシロン
「高ぇもんは高ぇし怖ぇもんは怖ぇえんだよ!」
半泣き状態のシュウ

そんなシュウを見つめ
はぁ・・・とため息をつくと高度を落とすシロン

どんよりと曇った雲を抜け下へどんどん降りていく

ぽつり・・・シュウの頬に雨粒が当たる

「ん・・・雨?」
シュウは周りを見回す
どんより曇った雲は雨雲だったのだ

雲の上を飛んでいたので天気がいいとばかりに思っていたが
地上には結構な雨が降っていた

ザアアァァァァ・・・・・
「ひゃあぁぁ〜冷てぇ〜!!」
シュウに冷たい雨粒が当たる
「ちっ」
シロンは小さく舌打ちをすると
背中に居るシュウをツメでひょいっと摘み
自分の胸元に持ってきて抱きかかえた
「でかっちょ・・・・」
シュウはシロンの体で雨から護られている
「・・・・・・・」
シロンは何も言わずに地上を目指す

大地に足を下ろすと
シュウとシロンは大きな木の下へ雨宿りに入る
「だいぶ向こうから乾いた風も感じるから多分夕立だろうな」
「ここで雨宿りして止んだら家に帰るぞ」
腕を組んだ状態でぶっきらぼうにシロンは話す
シロンは『風の竜』
風を読むのはお手の物だ
シロンが言うのだから間違いは無い

「・・・・うん」シュウは返事をしながら
隣に居るシロンを見上げる

シロンは全身雨に濡れ
頭や顔から雫を落とす
元々ドラゴンのシロンだが顔立ちは割りと端正な方だ
シロンの端正な顔立ちにキラキラと雨粒が光り
とても綺麗に見え
シュウは一瞬ドキリとする

「・・・・・なんだ?」
シュウの視線に気づきシロンはシュウに向いて話しかける
ぱっと前に向き直り視線を外すシュウ
「な・・・なんでもない」
顔が少し紅くなる

「・・・・・?」
シロンにはシュウの今の行動の意味が解らない

というかシュウが自分を見てときめくなんて想像も出来ないから(笑)

雨は強さを少し増す
大きな木の下にいても
木々の間から小さな雨粒は落ちてきて
シュウやシロンを少しづつ濡らす

「・・・・・・・」
シロンはシュウを見つめ

そしてバサリ・・・と片翼を動かした

シュウの真上にシロンの翼が広げられる

シュウはシロンを見上げた

シロンは腕を組んで空を見上げたまま何も言わない

そんなシロンを見つめ
くすっと笑いシュウは
「ありがとな・・・・」と呟く

シロンのさりげない優しさが

とても暖かく感じた雨の日の出来事


おしまい