▼星に願いを・・・ その2
その日の夜

シュウは悪夢にうなされるように
泣きながら眠っている
「ん・・・かぁさ・・・」
母親を助けたかった
でもなにも出来ずにただ見つめるだけしか出来なかった自分

閉じられた目から止め処なく流れる涙

いつも幸せそうな寝息を立てながら寝ているシュウではない
纏う風も以前悲しみに満ちている

「ガーガ!!」「グーグ!!」
揺り起こそうとする2匹

「・・・・・・!」
目を覚ますシュウ

「夢・・・・」顔色は悪い
心臓も早鐘のように早く打っている

シュウの前にポトンとタリスポットを落とす2匹
リボーンの合図だ
「ナニ?散歩したいの?」
「そんなんで起すなよな〜」と苦笑しながら言う
さっきまであんなに泣いていたのにそれに気がつかず
あくまでも心配かけまいと普段どおりで話すシュウ
そんなシュウを見て2匹は胸が締め付けられる思いになる

「シロン!ランシーン!カムバーック!!」
小さな風がタリスポットに吸い込まれる
窓を開け窓の外にタリスポットを向けて
「リボーン!!」
大きな風が巻き起こり風の2竜が出現する

シュウは2竜を見つめ
「散歩なら窓開けとくから帰ってきたら声掛けろな」
と言ってベッドに戻ろうとした時

ひょいっと後ろからパジャマを掴まれ
持ち上げられてシロンの腕の中に抱かれるシュウ

「でかっちょ・・・・?」

「今日は皆で散歩に行くぞ」とシロンが言った

ゆっくりと旋回しながら家を離れていく2竜

ランシーンがいつも夜に行っているという
星の綺麗な場所
そこへ案内するように先行するランシーン

「・・・・・・・」シュウは何も言わない

「なぁ、何か嫌なことがあるなら胸に仕舞ってないで俺達に話してくれねぇか?」

「・・・え?」

「お前今日夜ずっと泣いてたんだよ、寝ながら悪夢にうなされるみてぇによ」
「俺達はただお前の傍らに居るだけの存在か?」
「お前が悩んだり泣いたりしてるのにただ見てるだけで何も出来ねぇのかよ?」

見ているだけで何も出来ない自分・・・・
その言葉が黒水晶にのまれて行く母親を助けられなかった自分と重なる

「俺達はお前がずっと笑顔でいてほしいと願ってる」
「今のお前を・・・お前の纏う風を感じるのは正直辛い・・・」

「・・・・・・・」シュウは黙って聞いていた


そして星の綺麗な場所に着く
深い山の奥の拓けた場所
そこは人工的な町の光はなく
空には満天の星が散らばっている

「うわぁ・・・・」
あまりの星の美しさに感動すら覚えるシュウ

2竜は何も言わない
多分シュウが話してくれるのを待ってるのだ

「・・・・・・・」

「俺・・・夢を見たんだ」ぽつりと呟く

誰に話しかけるでもなく空を見つめながら
呟くように続けるシュウ

「母さんが・・・黒水晶に覆われてた・・・」

「!!」それにはっとするシロン
ランシーンはその時そこには居なかったが
カネルドになった時にシロンから記憶はもらっている

「もう終わったことで、母さんも無事で、忘れていたことだったんだ・・・」

手をぎゅっと握るシュウ

「忘れていたんじゃないな・・・多分思い出したくない記憶だから仕舞ってた」

シュウの握られた手が震える
瞳には大粒の涙

「俺・・・なんも出来なくて・・・ただ見てるだけで・・・」
「かぁさ・・・助け・・たか・・・」そのあとはもう言葉にはなっていなかった

静かな山の中の拓けた場所で小さな少年の泣き声だけが響く

シロンは泣いているシュウに近づき胸に抱く

そして子供をあやすように頭を撫でながら
「辛かったな・・・・」
「悪かった、そんな辛い思いさせちまって」
「でも、もう大丈夫だから、俺達がいる」
「絶対に守るから、お前のお袋さんも親父さんも・・・そしてお前も」


「私達は絶対に貴方を守ります・・・」
「この星に誓いますよ」
「だから泣かないでください・・・」
ランシーンもシュウの頭を撫でる


もう2度と同じ過ちは繰り返さない
この少年に涙を流させるようなことはしない
そう星に誓う2竜

満天の星は静かに1人と2竜を見つめていた



おしまい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あとがき

星に願いを・・・って願ってないし(笑)誓ってるし
しかもこの誓い近々あっさり破られるし(ダメじゃん)
すいませんすいません(平謝り)
ちなみに黒水晶とは本来『モリオン(モーリオン)』と言って
天然ではすごい希少な石なんだそうで
水晶の組織が紫外線等で壊れて出来るんだとか
(ちょっとくーフィルター入ってて解釈間違えてるかもしれません)
なので無理矢理組織を壊して黒水晶にして売ってるパターンが多いらしいです
私も持ってるけど多分加工処理されてる物だと思う(笑)
天然はすごい魔よけ効果抜群の石だそうですよ