▼星に願いを・・・ その1
ある平日の夕方
秘密基地から家に帰ってくると
マツタニ家に小包が届いていた
小包と言っても結構大きな箱だ

「母さん、コレなに?」とシュウが聞いてみる

「ああ、それ?それは日本のお祖父ちゃんから送られてきたのよ」
「お祖父ちゃんが海外だからこういうの飾ると喜ぶ人いるんじゃない?って言ってね」
笑顔でヨウコが答える

「へ〜飾る物かぁ、食べる物が良かったな〜」とシュウ

ねずっちょシロンとわるっちょランシーンはその言葉を聞きながら
「お前(貴方)らしいな(ですね)」と笑いながらガガガ語で話していた


「ねぇねぇ!開けていい?」
中身は食べ物じゃなくてもやっぱり梱包は開けてみたいシュウ

「いいわよ」とヨウコ

「えへへ、な〜にが入っているのかな〜♪」
などと歌いながらワクワク包装紙を開けるシュウ

そこから出てきたのは

『日本人形(藤娘)』
綺麗にケースに入れられている日本人形
手には藤の花を持つ結構有名な人形だ

「へぇ〜人形か」とシロン
「日本の文化って物でしょうか?」とランシーン
以外に興味津々で見つめる2匹

がっかりなのはシュウ
「人形かよ〜」
やっぱりシュウは男の子
人形もらっても嬉しい訳がない
※別に自分がもらった訳ではないが

「お前こんなケースに閉じ込められて窮屈そうだなぁ」と
シュウが何気なく言ったセリフ

あれ・・・?なんだろうこの感じ
すごく嫌な感じ

「・・・・・・・」
しばらく黙って人形を見つめていたシュウ

ガラスケースに閉じ込められた人形
閉じ込められている人形

ふっとある記憶が甦ってくる・・・

全然違うものなのに

何故か重なってくる

ガラスケースが黒い水晶に・・・

その中に閉じ込められた人形・・・
その人形がある人物の姿と重なる

「どうしたの?シュウ」
ヨウコがシュウに話しかけ
シュウを覗き込む
そのヨウコが人形のガラスケースに映る

「!!!」シュウの顔が強張る

「ガ?」「グ?」
一瞬シュウの纏う風に少しだけ変化が起こる
とても苦しく悲しい風

「シュウ?」ヨウコがもう一度聞く

「!!あ!!母さん??」
はっと気がつくシュウ
「あ〜・・・えっと、母さんはい、コレ」
人形をケースごとヨウコに手渡す

「大丈夫?シュウ顔色悪いわよ?」心配そうに訊ねるヨウコ

「あ〜、うんうん、平気平気!!俺ちょっと部屋に鞄置いてくるよ!」
そう言って直ぐに2階へ鞄を持って駆け上がるシュウ

慌てて2匹もそれを追う

ドサっと鞄を机の上に置き
自分もベッドの上に腕で顔を隠すようにして
寝転がるシュウ

ずっと忘れていた記憶

いや・・・忘れていた訳じゃない

思い出したくないから心に仕舞い込んでいた記憶

「ガガ・・」「ググ・・」
心配そうに枕元にちょこんと座り
シュウを見つめる2匹

「お前ら・・・・」2匹と目を合わす

シュウは2匹の頭を撫でながら
「大丈夫だよ、大丈夫・・・」と呟いた


(2へ続きます)