▼空の散歩&kiss

お天気の良い日曜日
今日はクラブ活動も無い日のため
お母さん特製の美味しいお弁当とおやつと水筒を持って
空の散歩でも楽しもうと言う事になった

シュウをどちらが乗せるのか朝から2竜が揉めていたが
「行きはでかっちょ!!」
「帰りはワル夫!!」と言うシュウの言葉で収まった

ちなみにお弁当等の荷物はシュウを乗せていないランシーンが持つことにもなった
リュックでは少々荷物が多いうえ荷物を手に持っていては
首の装飾を持つことが出来ずに振り落とされるのが目に見えているからだ


「行くぞぉ!!」とシロンが声をかける
首の装飾をぐっと握り「ほいほ〜い☆」とシュウが元気よく答えたのを合図に
2竜は地面を蹴り上げ羽ばたき大空へ飛び立つ

舞い散る白と黒の羽根を見つめるヨウコ
「気をつけて行って来るのよ」と優しく声をかける

家を少し旋回しながらランシーンは
「大丈夫ですよ、私達が居ますから」とヨウコに答え家を離れていく




「うっひゃああぁあぁ!!気ん持ちいい〜☆☆」
全身にキラキラの太陽の光と風を浴び
流れる雲を見つめながら大喜びのシュウ

「手、離すなよ!落ちるから」
「それと下も見るな」
下を見るとビビって泣き出すのが解ってるのでシロンはシュウに注意する

「わぁってるよ!」
元気に親指を立てて返事をする
勿論片手は装飾から絶対に離さないで




どれくらい飛んだだろう
時間もすっかり忘れて飛んでいたので
お昼はとうに過ぎている
シロンが下を見ると国境も余裕で越え今は海の上だ

少し後ろを飛んでいたランシーンがシロンに声をかける
「そろそろ一度降りて食事でもした方がいい、サーガを空腹にさせるな」


「んなこと言たって下は海だろが」とシロン


ランシーンは指を斜め下へ指し
「あそこに小島がある、そこで休憩だ」


そうして2竜は小島へ近づく

どうやら無人島のようだ
軽くランシーンが辺りを旋回して
猛獣の類はいないか、危険な島ではないかを確認する
そして大丈夫なことを判断してからシロンに合図を送ると
シロンがゆっくりと島に降りていく
ランシーンも後を追って降りる


食事の時だけは小さい姿になる2竜
お弁当を多めに作ってくれているとはいえ
大きいままでは2竜には足りないので


サンドイッチにからあげ、たこさんウィンナーその他沢山
母親が3等分に分けられるように数を考えて作ってあるお弁当
シュウがそれを綺麗に3等分に分け、飲み物をコップに入れる
飲み物はミルクティー
ほのかな紅茶の香りが食欲をそそる

1人と2匹は手を合わせ

「いっただっきまぁ〜す!」

「ガガ〜!」

「ググ〜!」

そしてお弁当に手をつける


もぐもぐと食べながら
「ここも良い風が吹いてるよな〜・・・」とシュウが言う

メグが見ていたら口に物をいれて話すな!とチョップが来る所だが
シュウに甘々な2匹なので気にしていない

っていうかその仕草ひとつひとつを幸せそうに見る2竜はもうほとんど病気といえよう
※グリードー談(グリードーも決して人(竜?)のことは言えないが)

「グググ〜ググ(その良い風は貴方が居るからなんですよ、サーガ)」

「ガッガガ〜 (そうだな・・・)」2匹はシュウを見つめながら言う

「はは、何言ってんのか全っ然わかんね〜」笑いながら2匹に言うシュウ

これも相変わらずな会話
2匹は苦笑しながらまたお弁当を口にする


お弁当とおやつを食べ終えすぐに大きくしてもらった2竜
1人と2竜は風を受けながら休憩しつつ
明日の学校の話やクラブ活動の話など
他愛の無い話がしばらく続く


日もそろそろ傾きはじめ少しづつだが空も赤く染まってきている頃
「そろそろ、帰りましょうか?」とランシーンが言った

「え〜・・・」っとシュウがちょっぴり帰りたく無さそうに言うと

「そうだな、今から帰ってもここからだと結構時間かかるし
あんま遅くなるとお袋さんや親父さんが心配するからな」とシロン

両親の名が出てくるとちょっと迷いつつも「うん」と頷くシュウ

「それでは・・・」と
いそいそとゴミを片付けて
そのゴミ袋をシロンに差し出すランシーン

「なんだよ、コレは」

「見て解らないのか?ゴミですよ」

「ゴミは解ってるよ!なんで俺に渡すのかって聞いてるんだよ!」

「ゴミは持ち帰り、それが基本でしょう!
自然を守るためのレジェンズがそんな事も出来ないでどうする?」

正論である

「帰りは私がサーガを乗せる、行きはお弁当等を持っていた」
「そうなると帰りは当然お前がゴミを持つということになる、違うか?」
口の端を上げてくくくっといかにもな顔をして笑うランシーン


「うっ」
お弁当を持つのとゴミを持つのとは違いがはっきりしているが言い返せない
すごく不満な顔タラタラでゴミを受け取るシロン


「あのさー・・・」
2竜の会話の間にシュウが口を挟む

「「ん?」」
どうした?っという顔をしてシュウに向き直る2竜

「今日は・・・その・・・アリガトな、すっごい楽しかった」
「それでな、うんと・・・・ちょっとこっち来てしゃがんで」
ちょっと考えながらシュウが2竜に手招きする

「なんだ?」

「なんです?」

2竜はしゃがんで顔をシュウに近づける


ほんの少しだけ2竜の口に柔らかな感触
シュウの唇が触れたのだ

「!!!」

口を手で押さえながら耳まで真っ赤になるシュウ

「これはお礼・・・だよ」ちょっと笑ってシュウが言う


すごく嬉しい反面
もっとディープなものがほしいとか思ったりもする2竜だが
それはちょっと子供であるシュウには無理な話

でも素敵な収穫があったのは確か

「じゃ、そろそろ帰るか」

「そうですね」


すっかり空も暗くなり
今度は星空の散歩を楽しみながら
帰る1人と2竜の姿があった



もちろんゴミは忘れずに


おしまい


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あとがき

「Kiss」のお題は別にいらなかった?と思ってしまった
もっと濃厚なものをと考えていたけど
濃厚なものすると絶対2竜が止まらなくなるので
フレンチなものにしました
だって無人島だからね、しかも暗くなりかけてるからね(笑)
お弁当持ってお出かけということで
やっぱゴミは持ち帰りだよね〜っていうのがこのお話のネタです
ランシーンさんの話し方が変なのは気にしない方向でお願いします
つうかシロンさんには敬語あんま使わないのねランシーンさん(笑)