▼MARIA 1

エイクくんのお母さんが亡くなった時のお話です
流血描写が多少含まれているため苦手に思う方は読まないようにお願いします
読んだ後で気分が悪くなった等の苦情は受けられませんので
自己責任でお願いいたします


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『MARIA』



アース・エイク・・・

可愛い子

愛しい子達

願わくば、すこやかに・・・・




海に面した温暖な気候の
総人口数1000ほどの小さな町
『シーナッグ』

これはのちにこの小さな町の名前すら変えてしまうほどの
凄まじい被害をを引き起こした大災害

大竜巻

その大竜巻の中
命をかけて我が子を護り抜いた小柄な母竜の物語


『シーナッグ』
竜の住む町
その町の住宅街の中にその親子は住んでいた

父親の名前は『ダトー』
母親の名前は『マリア』

この夫婦の間には6歳になる娘『アース』と
2歳になる息子『エイク』という子供が居た

時には厳しいけれど温厚な父親
いつも優しいけれどしんのしっかりとした母親
それは何処にでも居る普通の親子だった

その日は風がとても強く
まだ午後3時過ぎだというのに雲が厚く空を蔽い薄暗かった

父親ダトーが出張のため家を留守にしていたその日
悲劇は起こる

ビュウビュウと吹き荒れる風の中
アースは小学校から家に帰宅する

バタンとドアを開けて中に入ると
アースはすぐに風を遮るようにドアを閉め鍵をかける

「ママ!ただいま〜」
アースはランドセルをリビングにあるソファーに置いて
母親マリアが居るであろうキッチンへ向かう

甘く香るケーキの香り

キッチンのドアを開けると大好きな母親が
ケーキにホイップを付けている所だった

「おかえりなさい、アース
もうすぐケーキ出来るから
みんなで食べようね」
マリアがアースに向かって笑顔で言う

「うん!」
アースは元気に返事を返す

手を洗った後
ケーキにホイップがつけられて
上にいちごが乗せられていくのを
アースはワクワクしながら見つめて
「ねえ、ママ、アタシもお手伝いしたい!」と言ってみる

マリアは笑って
「じゃあ、これを振りかけてくれる?」とチョコチップの袋を手渡す

チョコチップをケーキの上に振りかけるアース
「できた〜」
いちごケーキの上にはチョコチップがてんこ盛りになっていた

「ありがとう、アース」
マリアはアースの頭を撫でる

チョコチップをかけただけの事だが
手伝ったという気持ちと褒められた事がとても嬉しく感じるアース
上機嫌だった

ケーキを切って分けた後
リビングで眠っていたエイクを起こして
おやつの時間が始まる

これがいつもの日常

おやつの時間
マリアに今日学校で何があったのかを楽しそうに話すアース
マリアはいつも笑いながらその話を聞いていた

勿論隣で食べてる弟エイクは
アースの話などまったく興味なく
必死にケーキにパクついている
ほっぺたを大きく膨らませて
口の周りにいっぱいクリームをつけて
もぐもぐもぐもぐ

「ああ!もう、お行儀わるいわね〜
お口の周りにクリームいっぱいじゃない!」
行儀悪く食べるエイクに不満の声を上げつつ
口の周りをナプキンで拭いてあげるアース

「あら、優しいわね」
くすくすと笑いながらアースがエイクの世話をするのを見つめるマリア

「だってもうアタシ大人だもの
レディはこれくらいのことしなくちゃ」等と
ちょっとおませなことを言うアース

しかしエイクがまたケーキを食べるとほっぺたにクリームが付く

「あ!また・・・」
アースがナプキンで拭いてあげようとすると

マリアが手を伸ばして
エイクの頬に付いてるクリームを指ですくって
ぱくっと食べてみる
「ホラ、綺麗になったわね」
マリアがそう微笑むと
エイクの顔がぱあぁ!っと明るくなり
今度はすごい勢いでケーキにがっついて
顔じゅうにチョコとクリームを付けて
尻尾を振りながらマリアに顔を向ける
その顔は
ママ!とって!とって!と甘える感じそのままだった

マリアは笑ってエイクの方に歩いていき
エイクを抱き上げ膝の上に乗せて
エイクの口をナプキンで拭く

それをアースは
フォークを口に銜えてじっと見つめる
いくら自分はレディだ大人だと言い張っても
まだまだ6歳、母親に甘えたいのが普通である

その視線に気づいてマリアはアースに
いらっしゃいっと手招きする
この辺りはやはり姉弟なのか
ぱあぁ!っとさっきのエイクのように顔を明るくさせて
椅子から飛び降りて母親の膝の上にいくアース
子供二人が小柄な母親の膝の上でひしめき合って座っている
かなり重いと思うのだか
マリアにとっては二人の子供の成長を肌で感じられる瞬間

とても幸せな事だった

そんな幸せな時間も過ぎて
おやつの時間はゆっくりと過ぎていく