▼彼岸花

自転車で駆け抜けた

そこで視界の端をすり抜けた

緑の揺れる草の中 ぽつんと咲いた彼岸花


赤い花


飛び去って 走り去って行く日々

僕は何にも追いつけないまま

空回って転んで泣いてたあの頃

今では涙さえ出ないけれど


追いかけているのはまだ続いているし

体力はますます失っているし

きっと何時までも向こうから来るのを

じっと 待ってる


彼岸花が一本咲いてて それが無性に気になって
でも止まらない

走り去っているのは僕も同じで 皆 捨てて 拾ったフリしてる


道端に落ちたままのいつかのサンダル

それに加えて新たなスリッパ

なんでこんなに落ちてるんだろう綺麗に並べて置かれているけれど


気にとめたこともとめないことも いつか忘れて

直ぐに忘れて


だけど失ってないフリばかりして


それで更に失っていく
らしい


緑の中の赤

僕のマトモな精神の中の僅かな異常 一部だけ

そんな思考回路の中に重ね合わせて
こっそり笑ってみたり

嘆いてみたり


彼岸花 は 花言葉さえ

知らないし 意味も知らない 花が咲く意味

何が大切で何が分からなくて

全部分からないから困ってるだけ そのままで


夕暮れと彼岸花は似合わなくて

昼でもなくて 朝でもなくて

きっとただ咲いてるだけで そう

存在が強い 緑の中で目立ってる


花に咲く意味なんか無いさ 求めない方が楽で そう簡単で

知らないままにしておくのも良いだろう

だって何でも分かってしまうなら

これ以上何を望めば良いの



帰り道 また また緑の中を

いつもの自転車で昨日みたいに駆け抜ける

坂道に全てを任せて 流れに沿って落ちるのは気持ちが良いよ


それでは駄目だと知っている だからこそ反抗したくなってそうする

反抗期だからという理由で

意味もなく訳もなく反抗してみるし

そんな僕ですし


視界の隅で

端で



ぽつりと彼岸花 咲いた




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