▼優しい怪我

失ったふりは出来なくても

手に入れたふりは良く出来る

悲しい顔は常だけど

笑顔だってその気になれば作れる


痛い気持ちを隠しながら

日々を過ごしてそれでもまだ楽しくて

こんな僕に罰を与えてくれと

神に祈る程の度胸もない


いつだったか隣にいた人も

今では僕の足元遥か下で

何処まで昇ってきたんだろう

僕は本当に昇ってきたのか?


全部失ってそれをふりだと思い込みながら

他人を騙しながら実は自分を騙して

嘘は誰に対しても嘘だから

逆に僕に対しても優しい

気がつけばずっと

自分自身に優しい怪我を負わせてきた


笑顔を作る行為は僕を悲しませ

幸せなふりは僕を不幸にして

手に入れたという言葉はいつだって僕から何かを奪っていた


そして自分は高みから他人を見下ろしていると思い込んで

同じ目線で見たい筈なのに

だからこそか

僕はいつの間にか俯いて上目遣いをしていた


能ある鷹は爪を隠し

それを真似た僕は爪を失った

無防備な自分を認めたくなくて

偽物の刃を構えてた


いつからか

いつだったのか

思い出せないくせに思い出そうとして

今日も

頭が痛い


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