▼第一章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」


このSSは、「魔法少女リリカルなのはStrikerS アル=ヴァン編」の続編です。

J,S事件後の、とある物語。

この物語は、なのは本編に関わってくる要素はありません。

今まで、ハッキリと分かっていなかった『老王』の物語。

では、どうぞ。




第一章「戦歴の果て」


"J,S事件"が終わって数ヶ月後。

俺達は、最後の老王『老王の心臓』の在り処の情報を入手した。

今思えば、まさかあんな事になるとは、当時誰も思っていなかったに違いない。

この真相を知る為には、その前の話から話す必要があるだろう…


─────時空管理局 本局──


本局のとあるカフェにて、一組の男女が居た。

男の名は、アル=ヴァン・ガノン。モニターを展開し、ミッドチルダ魔法についての資料を黙読している。

この男、一見何も変哲も無い男と見られる。

だが、局員でも上層部と一部の者しか知られていない、魔界アルデバランの魔王である。

何故、魔王でもある男がこんなところに居るかと言うと、彼自身が起こした事件によって、魔王として君臨していた魔界を追われる事になってしまった。

だが、その真実はさだかではない。

真実を知っているのは、その事件の関係者と彼のみである。

「……………」

資料を読み終えると、モニターを軽く触れて閉じる。

そして、テーブルに置いてあるコーヒーを一口、口に入れる。

「どう?」

アルに向って正面に座っている女性。

フェイト・T・ハラオウン執務官。

アルに話しかけながら、アイスコーヒーを飲んでいる。

「理解できない訳ではないが、近代ベルカとは違ってて、習得するのに骨が折れそうだ。」

「でも、なんで色んな魔道式を覚えようとするの?」

フェイトは、ミッドチルダ式のみ。

普通は、一人一つの魔道式。それをアルは、近代ベルカを習得し、そしてミッドチルダ式を習得しようとしている。

アルは、一瞬驚いた表情をし、眼を閉じて口を開いた。

「簡単に言えば、数多くの魔法を使いたい…かな。」

とは言ったが、これと理由なんて無かった。

そして、ゆっくりと眼を開けると…

自分の顔に間近にフェイトの顔が現れる。

「本当に?」

少しニヤケながらも、疑問を持った表情をしている。

「ッ!?ち、近いぞ…」

眼を開けた途端、心臓がとても速い鼓動を始めた。

興奮とは違い、驚きに近い感じのものが鼓動を速めた。

そう言い、アルはフェイトの両肩を両手でゆっくりと押し離した。

「正直に言えば、これと言った理由はないんだ。興味?自分でも分からないな…」

それを聞いたフェイトは、驚き呆れる。

「理由はないんだ…つい、何かあるのかと思ったんだけどなぁ。」

と、少し残念そうな表情と口調で話す。

無理して、理由を作れば強くなる為。と言っておこうと考えたアルだが、無理して言うまでもないと判断して口にする事をやめた。

ストローを咥えながらこちらを見つめられ、どうすれば良いのか分からず、ただ頭を掻く事しか出来ないアル。

すると、右側から二人分の足音が聞こえ始める。

二人は、一斉にその方向に顔を向ける。

「フェイトちゃ〜ん!アルく〜ん!」

そこには、高町ヴィヴィオと昔からの友、高町なのはの姿があった。

二人は、少し小走りでこちらに走り寄る。

「ごめんね。中々仕事が片付かなくて、ヴィヴィオを迎えに行くのも時間が掛かっちゃって。」

「ううん、大丈夫だよ。なのは。」 「忙しいんだから、気にするな。」

両手を合わせ、片目を閉じてペコペコと頭を軽く何回も下げて謝るなのは。

すると、なのはと手を繋いでいたヴィヴィオがアルの元に歩み寄り…

「アル=ヴァンさん、こんにちわ。」

挨拶を述べ、制服姿でペコりと頭を下げる。

その様は、とても可愛らしく自然と笑顔がこぼれる。

「久しぶりだな、ヴィヴィオ。元気にしてたか?」

笑顔で、頭を右手で優しく撫でながら話す。

それを聞いたヴィヴィオは、うんと笑顔で頷いた。

「アル君、どう、ミッドチルダ式は?」

アルとヴィヴィオが話している間、なのはは既に席に座っていた。

そして、肩を軽く叩いて先ほどアルが黙読していた資料と同じものをモニターに映す。

「ん?あぁ、さっき全部読んだが、中々難しいね。近代ベルカとは全く違うし、まるで、魔法を知らない人が魔法を一から習得するような感じだな。」

肩を叩かれ、振り向いてモニターとなのはの顔を見つめながら話し、モニターを閉じる。

ベルカとゲヘナ式は少し似ているもの。

ミッドチルダ式は、ゲヘナやベルカとの接点が少ない為、習得するのには時間が掛かる。

理解するだけでも一苦労。彼には、少し疲労が溜まっていた。

「今度、私がミッチリと個人レッスンをしてあげる!きっとすぐに出来るようになるって♪」

「おいおい。個人レッスンはごめんだ…」

笑顔で勧めるなのは。

機動六課にいた頃の、フォワードメンバーが受けていた訓練を思い出し、苦笑いするアルであった。


─────ポートフォール・メモリアルガーデンエルセア──


多くの墓地がある此処に、一人の男がひとつの墓地の目の前に佇んでいる。

男は、タゴハを口に咥え、火をつけて一服する。

心地よい風が、彼の身体に纏わりつき、過ぎ去っていく。

ある程度まで吸い終わると、携帯吸い殻入れに吸殻を入れてポケットへしまった。

そして、墓地を見つめながらゆっくりと敬礼をした。

彼の名は、レキ。

そして、その墓地に眠っているのは、スバル・ナカジマやギンガ・ナカジマの母。クイント・ナカジマである。

彼にとって、彼女は戦友であり、かけがいの無い存在。

彼は、ゼスト隊に所属しており、彼らと共に日々任務にあたっていた。

だが、悲劇は起きた。

今や存在すらタブーと化した『戦闘機人事件』である。

部隊は全滅、ゼストは人造魔導師として、クイントは戦闘機人。

彼もクイントと同様、戦闘機人としての身体に改造されてしまって、今も身体はそのままである。

『戦闘機人事件』、『J,S事件』と数々の困難を乗り越えて、彼は今ここにいる。

彼の左腕には、彼女が使っていたリボンの一部が結ばれている。

そんな彼は今日、墓参りの為に此処を訪れていた。

前日は、ゼスト隊の戦友達が集っている墓地に訪れていた。

墓参りする日にちは、決まっていない。彼が行こうと決めた日に行く。それが彼のやり方。

そして、敬礼し終わりそっと腕を下ろす。

「……また、来ますね。」

少し悲しそうな表情で、そう呟くとクイントの墓地を後にした。


─────ミッドチルダ中央区画 先端技術医療センター ──


先端技術医療センター。入り口付近に建てられている柱に寄りかかり、ある人物を待つ男が居た。

昼間の首都クラナガンは、人が多い。

肌に突き刺さるような日差しが、彼に襲い掛かる。

ある人物と約束していた時間から、既に1時間が過ぎていた。

男は、ゆっくりと周りを見渡し、居ない事を確認すると医療センターの中に入っていった。

中に入ると冷房が効いており、外での温度差もあってか、一瞬寒気が全身に奔る。

彼は、何も迷う事無く道を進んでいく。

そして、とある部屋の前に着く。

一応、周囲を見渡し此処で正しいのか確認をする。

「失礼します。」

部屋の向こうに声を呼び掛けると、は〜いどうぞ。と返事が帰ってくる。

返事を聞き、部屋の扉を開けて中に入るとマリエル・アテンザの姿が現れる。

モニターに映る資料を見つめている。

「どうも、マリエルさん。」

男は、微笑みながら軽く頭を下げて挨拶をする。

「ワタル君、久しぶり〜。どう、調子は?」

マリエルは、彼をワタルと呼び、笑顔で挨拶を交わす。

ワタル。彼は、以前陸士108部隊に所属しており、マリエルとも付き合いがある。

「えぇ、いつも通りですね。」

「そう。あれ、レキ君は?」

どんな事についての調子かは不明だが、ワタルの後ろを伺う。

レキは墓参りをし、未だワタルと合流していない。

「レキは、墓参りに行ってます。それにしても、とっくに時間が過ぎているというのに、あいつは何をしているのなら…」

マリエルに人通り説明し、一人小声で愚痴り始めた。

すると、突然通信が入る。

突然の通信に、一瞬驚いた表情でマリエルの様子を伺う。

マリエルは、それを笑顔で返してモニターを再び展開し、資料を読み始めた。

安堵したワタルは、彼女に背を向けて通信を始める。

「やほぉ。元気?」

「き、騎士ヒカリ!?」

通信を開始し、通信者の顔が現れる。

それを見たワタルは、驚きを隠せず声を少し詰まらせる。

ワタルの大きな声に耳を押さえるヒカリ。

ヒカリの我慢した様な表情を見たワタルは、慌てて頭をペコペコと下げる。

よっぽど慌てている事がよく分かる。

「良いわよ、そんなに頭下げなくても。会議の合間での通信だから、ささっと話すわね。」

嫌そうな表情をしていたヒカリだが、そう話すと真剣な眼差しでワタルを見つめる。

「詳しい事はまた後日、皆集まって話そうかなと思ってるから。一応聞くだけ聞いといて。」

時間が無いとは言え、皆という言葉に引っ掛かり、疑問を持ちながらモニターを見つめる。

「………見つかったわ。」

ワタルには、その時点では何のことか分からなかった。

その為、それを聞いてもさらに疑問が膨らむばかりであった。

だが、次の言葉を聞いた瞬間。彼の疑問は一瞬にして砕かれる。

「──老王の心臓が。」




次回予告

第二章「魔界の遺産」






あとがき

どうも、こんばんわ。
SS書きのレキ・ジェハードです。
今回は、SS最新作「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」を読んで頂いて有難う御座います!
今回の物語の内容はというより、メインな話は
アルやヘレンやリバルが受け継いできた『老王』についての物語です。
今まで、老王って実際何?という人も居たのでしょうと思います。
今回は、老王の全てを明らかにしていこうかなと思います。
これで、主人公のアル=ヴァンの明らかになってなかった部分がほとんど明らかになると思います。
そして、今回は『A,B事件』にて初登場になった死神兄弟、レキとワタルが脇役と登場します。
脇役で良いんですかね?wもっと目立つと思いますw
そして、TOP絵を更新しましたが、解説をすると右上がレキ、左上がワタル。そして、正面がお馴染みのアル=ヴァンです。
後日、設定集の登場人物にて、キャラクターのラフ絵をどんどん補完できるようにしたいです。
レキとワタルは、『J,S事件』に関わっているので、レキとワタルの前の物語が気になるように書けたら良いなと思いますw
で、第一章はエピローグという感じに察して欲しいです。
第二章か第三章辺りから本編に入る感じですね。(まぁ、第一章も十分本編ですがw
どうか、これから毎週土曜日に更新いたしますのでどうが、今後ともよろしくお願いします!

では、長文失礼しました!( ・ω・)ノシ


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