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天使とか悪魔とか妖精とか。
赤い糸の伝説みたいに生まれた時からの決められた運命の相手とか。
星の導きとか何とかかんとか。
そんな子供向けの作り話にファンタジー。そういうモノは世の中に溢れてて、それを楽しむ人も数多くいるけれど。
俺はね、そういう荒唐無稽なものはあんまり好きじゃない。
物語よりも論説文。恋愛ドラマよりもニュース番組。妄想よりも確かな現実。むしろ後者の方を好んでる。
面白みがないと言われても仕方がない。だけど俺は理性に重きを置いて生きている。
そのはずだった。
だけど。
……あからさまにはっきりと、見えているんですが俺の目には。ふわふわと、浮いている幽霊みたいな若い男が。
超ファンタジックな光景が、ってほどではないけれど、これは現実かよおい嘘だろうって程度には目を疑っちまうんですけどどーすれば?
幽霊、だよなこれきっと。
…………非現実的だ。まあでも、ホラーならね、まだいいっていうか許容範囲にしておけるかなあ。ほら人間さ、お亡くなりになる時くらいは多少なりともなんかの情念っていうか死にたくないとかそーゆー感情、強く思ってそれが残るかもしれないしってカンジで何とか納得が……納得できないけど出来る範疇には収められる。多分。
だけど。
夏の真昼。強烈に降り注ぐ太陽の光。でっかくも黄色いヒマワリの花。
そのヒマワリの真横にってつまり空中に浮いているわけだけど、その浮いている若い男。一応その姿は透けているけど、真夏のホラーなんてそんなおどろおどろしいカンジじゃない。
ぼけーっとほけーっとふわふわと、浮いて浮かんでそれだけだ。
……なんで現実主義者の俺にこんなモノが見えるんだ?
思わず俺はボケっと阿呆みたいなツラで、その男を茫然と見上げた。
……非現実的なものはすごい苦手なんだけど。でも自分の目で見ちまったものは信じざるを得ないのかもしれない。
これは、そんなふうにして俺が出会ってしまったヒマワリの幽霊(?)の話である。


続く



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