*ほんのちょっとのさようなら
「ベル、本当に行っちゃうんだね。」
俯きながら綱吉が言うと
ベルは綱吉の柔らかな髪を持つ頭をぽんぽんと叩いた。
「ジャッポーネでの大きな仕事が終わっちゃったからね。
俺だって、綱吉置いてイタリアになんか帰りたくないけど。」
「ベルはヴァリアーの幹部だから急がしいんだね・・・また、会える?」
今にも雫が零れ落ちそうな大きな瞳が不安げにベルへと向けられる。
ベルはふっと微笑むと
当たり前じゃん、と言いながら綱吉を両腕に納めた。
「また直ぐ仕事でここに来ることになるよ、きっと。」
綱吉の頭をふわりと撫でると体を離し
目線が同じ位置になるまで体を下げると
ベルは片手で綱吉の頬を包み、軽く触れるだけのキスをした。
綱吉は別れ際に軽いキスだったことに驚き
かといってそれが不満だなんて言い出せないままひたすらベルを見つめ続けた。
ベルには綱吉の考えがお見通しなのか
口の端を吊り上げるとそれらしい言い方で、人差し指を綱吉の唇に置いて話した。
「この続きはまた会ったときのお楽しみってことで。」
「えっ・・・」
「安心しなよ。直ぐに会えるから。」
唇の感触と温もりが消えてしまわぬうちに、きっと。
*ほんのちょっとのさようなら*
ベタねた微シリアス。
ベタな話ってたまにすっごく書いてみたくなる時があります。