*満月の夜3
自分としてみたいこと・・・?
首をかしげている『つな』に『綱吉』は更に言葉を続ける。

「つな・・・俺、お前が好き。」

・・・えっ?
今、何て言った?好き・・・だって?自分に?自分が??

『つな』は今確かに耳に入ってきた言葉に戸惑いを隠せず混乱し
『綱吉』が近づいてきたことに、顎にその手が触れるまで気付かなかった。

「つなが、好きなんだよ。」

「ちょ、ちょっと。何言ってんの?俺が、俺に・・・」

でもこの感情を『綱吉』が持っているということはきっと自分にもあるわけで・・・
そう思って改めて今目の前にいる『綱吉』を見ると
どうにも恥ずかしくなってしまい体温は勝手に急上昇しだした。
顔は真っ赤に紅潮し、顎にある『綱吉』の指が微かに動いただけで更に体温が上がる。

「つな、可愛い。」

「じ、自分に可愛いとか、言うな・・・」

「本当だよ。」

『綱吉』は手を離すとベッドに着き、
軽やかに床を蹴って『つな』に跨った。
スプリング音とベッドが反動で揺れる。

「ずっと思ってた。つなは可愛くて、好きだって。
 伝えたいってずっと願ってた。」

「うそ・・・だろ・・」

「強く思ってなきゃこんなことになってないよ・・・ねぇ、つな。」

「な、何?」

「俺はいつつなの体に戻るのか皆目見当もつかない。
 もしかしたら、あと1分後にはもう消えてしまうかもしれない。・・・忘れてほしくないな。」

月は更に輝きを増し
窓からキラキラと光を部屋へ投げかけている。
『綱吉』の澄んだ瞳がはっきりと『つな』の瞳に映し出された。

自分なのに何故かドキリとしてしまう。
まるで自分ではないみたいで。

「でも今夜のこと、朝つなが起きたらきっと夢だと思うんだろうな。
 何か証拠になるような物を・・・。!!」

何かを思いついた『綱吉』は
『つな』のパジャマの1番上のボタンに手をかけた。

「なっ、何するつもり!?」

「別に痕をつけるとかいうわけじゃない。このボタンを取るだけだ。」

ギュッと力を入れて引っ張ると、ボタンは糸が千切れる音の後に続いて手の中に飛び込んでいった。
『綱吉』はそれをベッドの頭の方にある目覚ましの隣に置き
きょとんとしている『つな』の顔の両サイドに手をつき真上から見下ろした。

「自分の1番上のボタンに手をかければ、今回のことが夢じゃないって分かるから。」

「・・・うん・・。」

「つな、目、瞑って」

言われるままに、『つな』は瞼を閉じ
それを確認すると『綱吉』はゆっくり肘を曲げて距離を縮めていく。
唇が触れるか触れないかまで近づいたとき
もう1度好き、と囁いて唇を重ね合わせた。

この言葉が
『つな』が意識を手放す直前に聞いた最後の言葉。
合わさった唇が
最後に感じた『綱吉』の感触。




薄い雲が再び月を覆って
世界を闇へと誘ってゆく




***



強い朝の日差しがつなの意識を目覚めさせる。
起き上がってしばらくすると
脳内に一気に数時間前の記憶が波となって襲ってきた。
きょろきょろと視線はもう1人の自分を探すが
既にその姿は無く。


───自分の1番上のボタンに手をかければ、今回のことが夢じゃないって分かるから。


多少躊躇いつつ、ゆっくりパジャマの1番上のボタンに手をかける。

「・・・ない・・。」

目覚ましを振り返ってみると
つなの目は時計の隣に静かに存在するボタンを捕らえた。

「本当に、あれは・・・」

自分に告白されて 可愛いといわれて キスされて・・・
つなは枕に勢い良くうつ伏せに顔を沈めた。
顔が暑くて火が出そうだったが
こうでもしないと羞恥心から脳がおかしくなってしまいそうな程だった。

「俺、俺・・・自分に、ファーストキス、奪われた・・・」




きっとそれは月と雲の悪戯


誰にも言えない秘密の夜



end




このカプはまさに天使の戯れです(ドーン
超ツナの口調がおかしいのは承知のうえですよ・・・
会話以外のところで名前を出すときはちょっと面倒だったけど書いてて楽しかったです。
ただ、勢いで書いてしまったので構成や表現が大変なことになってるかも・・・
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