*指、心臓そのあとは?
しろうさぎがやってきた。


おなかがすいたおおかみさん。


しろうさぎ、はやく逃げないと食べちゃうよ?






* * *



「・・・・あの、ひばりさん・・・?」


「・・・何」





「・・・・・この体勢、かなりきついんですが」






沢田綱吉十四歳。

―――今、とってもピンチです。



放課後の応接室。



その中でも存在感がある、ずっしりした革のソファー。


その上に俺、そしてそのさらに上に・・・・ヒバリさん。


仰向けに寝転ぶ体勢にも関わらず、身体を支えている場所が異常に少ない、
ほとんどずり落ち三秒前の状態で。



(・・・・・・・・背中、いた・・・)



発端は俺が指をカッターで切ったこと。

傷自体はそんなに大したことは無かったのだけど、問題なのはその後。



それを異常に心配したヒバリさんが傷口を見せろと乗っかってきたのだ。



そこで大人しく見せていたらそれで終わりだったのだけど、
何故か俺は傷口を見せることを拒んでしまったのだ。


確かに人が怪我をしたのを心配するのは人として当然のことだけど・・・。

相手があのヒバリさんだと、また話が違ってくる訳で。



「いいから、早く見せなよ・・・っ」



無理ありすぎのこの体勢は、さすがの委員長にも辛かったらしい。

喉から搾り出すような声は、いつにも増して迫力があった。


「い、嫌ですっ」


対照的に、俺の口から出た声は恐怖とこの体勢のせいでほとんど裏返っていて。



それでも彼は諦めるということを知らないらしく、

もはや心配というより殺気が篭った目付きで俺の指を睨み付けていた。





・・・・・すいません、かなり怖いんですが・・・・





そう心の中で呟いた瞬間。


怯んだ隙を見つけられたのか、

俺の傷ついた指は、手首から委員長に捕まってしまい―――・・・



喰われた。



「ひゃあっ」


正確には、口に含まれた。

指先に伝わってくる、痛みと体温。


俺の情けない声にも構わず、傷口を舌先で抉り、滲み出た鮮血を舐め取っていく。


それは漫画とかでよく見る『消毒』と呼ばれるものでは決してなくて。



「・・・・っ」



熱い。


傷口からじわじわと侵食されていく感覚。


―――そう、もうこの指は、俺のものじゃない。


そんな錯覚に襲われる。



かり、と軽く歯を立てられ、痛みで肩が震える。


ぴりぴりとした麻痺感が、何故か心地良くて・・・。




「・・・・・・っ、あ・・・・・」




・・・・このまま指、食い千切られたりしたらどうしよう・・・。


徐々に強くなってくる痛みと圧迫感。

それは目の前の肉食獣が捕食を止める気が無いことを表していて。




・・・・・・いいや、もう。




諦めなのか何なのか、俺は自分でも驚く程素直に従順に、

血を求める恋人に身体を預けた。







* * *




しろうさぎがやってきた。



おおかみさん、追いかけてきてくれるでしょう?




キリカ様から頂きました相互記念リク小説です。
キリカ様は血を入れるのが上手いと思います。
見習いたい・・・!!
もうなんて言うんでしょう・・・とりあえず萌え。
うんとにかく萌え。
なんと言おうとm(略

素敵な小説ありがとうございましたぁv
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