▼護る風・護る翼 その2

その日の夜
トイレに起きたシュウに
2匹はタリスポットを目の前に差し出した

「なに?リボーン?」

「ガガ!」「ググ!」

寝ている母親を起こさないように病室を抜け出て屋上へ向かう

「シロン!ランシーン!カムバ〜ック!!」
「そいでもってリボーン!!」

大きな風が巻き起こり目の前に大きな白と黒の風竜が現れる
無言でシュウを見つめる2竜

「なに?どしたの??」
シュウはキョトンとした顔で2竜を見つめる

「・・・何故、あんなことしたんだ?」とシロン

「あんなこと?」シュウは理解していない

「俺達のことなんかほっとけばいいだろう?」
「タリスポットに戻れば傷だって治るんだから!!」


その話を聞いてシュウの顔がみるみる赤くなる、怒ってるのだ
「ほっとける訳ないだろ!あんなのに撥ねられたら怪我どころじゃなくなるんだぞ!!」
「死んじゃったらタリスポットに戻っても意味無いじゃんか!!」
「それに・・・・」
「そんなこと考えてる暇なかったから・・・・・」
そう呟いたと同時にシュウは真っ白な竜の腕の中に抱きとめられていた

「馬鹿か・・・お前は・・・」
「お前がいなくなったら・・・俺達が此処に居る理由もなくなっちまうだろうが・・・」
シロンはシュウの頭を撫でながらそう耳元で呟く

普段なら「馬鹿」と言う言葉には過剰に反応するシュウだが
今はシロンの腕の中で大人しくしていた
「ゴメン・・・」と小さく呟いて



そのシロンとシュウのやりとりを黙って見つめていたランシーン
「本当に無事でよかった・・・」と呟き

そして一息ついてから
「さて・・・少し安心したので私はこれから散歩でもしてこようと思っています」

「あぁ?」シロンは明らかに不満そうな声

「サーガ、今日はゆっくりと空を飛びたいので先に寝ていてください」
「朝方には戻ってきますので」とランシーンはゆっくりその大きな黒いと翼を広げる

「朝だとみんなに見つかっちゃうぞ?」
心配そうに声をかけるシュウ
「大丈夫ですよ、それまでには戻りますから」
そう言い地を蹴り一気に大空へ飛び立つ

「なんでお前はこんな時に散歩なんか行くんだよ?」
「サーガが心配じゃねぇのかよ?」とシロンがランシーンに言う

「お前が護っているからな、私は安心して私のしたい事をやらせてもらうだけだ」
そう一言だけ告げると大空高く舞い上がりもうその姿は見えなくなっていた





シロンとランシーン
風のサーガの守護竜
もとは1体のウインドラゴン

しかしその性格はまったく正反対
そのウインドラゴンの
陽と陰・光と影の部分を分かつように存在する2体

彼らのシュウを護る風・護る翼は同じのようで
まったく違う特性を持っていた











その日の明け方
1台の車が原型を留めないほどボロボロになり
警察の前に放置されていた
中に入っていた人間は生きてはいたが
口からは涎を垂らし焦点の合わない目で空を仰いでいた・・・







検査も無事終了して退院してきたシュウ
ヨウコにおやつのケーキを買ってもらい
今日はお祝いとばかりにケーキにパクついている
いつもながらの温かいミルクティー入りのマグカップを横に置き
ねずっちょシロンとわるっちょランシーンもケーキを食べる


RRRRRRR・・・・

電話が鳴った
ヨウコが電話の方へ歩いていく

「もしもし」(多分海外なので Hello ですね)
「あ!こんにちは、どうしました?」
「・・・・はい、はい・・・」


遠くでヨウコが電話で話す声

しばらくして電話を切るヨウコ


むぐむぐケーキを頬張りながらシュウが訊ねる
「母さん、誰から??」

「あ、警察の人からよ、犯人が捕まったんですって」
「でも・・・ちょっと事情聴取出来る雰囲気ではないみたい」とヨウコ

「・・・?なんで?」シュウが聞く

「詳しくは解らないけど精神を患っているとか・・・・」
「黒い悪魔がどうとか言ってるらしいわ」

「へー・・・」
ほとんど怪我もなかった所為か
ヨウコもシュウも割りとのん気に会話をしている


『黒い悪魔』
この言葉を聴いてシロンはケーキを食べる手を止める

そのまま聞き流していたがランシーンの
「私のしたい事をやらせてもらう」という言葉

そしてシュウが撥ねられた時黙って車を見つめていたランシーンの姿

・・・・まさか・・・?

ランシーンを見つめるシロン

ランシーンはいつもと変わらない顔でケーキを食べている
ふとシロンの視線に気付き
「なんだ?」と声をかける


「お前・・・昨日、何してた?」とシロン

しばらく黙ってシロンを見つめていたが
視線を外して
「別になにも、ただの散歩ですよ・・・ただのね」
そう言ってまたケーキを食べるランシーン





サーガを傷つけるものが居れば私はそれを絶対に許しはしない



シロン・・・お前がサーガを護る壁となり盾となるのなら



私はサーガを傷つけるものを破壊する刃となり剣となろう・・・



それが私の護る風・護る翼・・・・




おしまい


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あとがき

ちょっと暗くて痛いお話でした
ランシーンさんが微妙に怖いです
攻撃は最大の防御なりを地で行ってます
といいますか私の中のランシーンさんはこんな感じ
ただ、誤解の無いようにいいますが最後にも言ってるように
ランシーンさんは自分の私利私欲のために破壊行動は起こしません
あくまでもシュウを護るため
シュウの精神や身体を傷つける、壊そうとする物に対して発揮されます
だから恋のライバルとかそういう物とはまったく別次元のお話です
むしろ私のイメージではシュウくんが選んだのが自分ではなくても
それがシュウくんの幸せならきっと黙って見守る位置にいる
それがランシーンさん、大人です
シロンさんはきっと自分を選んでほしくて暴れる(笑)タイプ、子供です(てか俺様?)