▼生まれる心(カネシュウ) その1
その少年は私の中にシロンとランシーンという心を作った
彼らは私ではない・・・
だが彼らの中に私は確かに存在して
私の中にも彼らは存在している



金色に輝く満月の夜
窓が開け放されているシュウの部屋

風が窓から入り込み
冷たい風がシュウの頬を撫でる
肌寒さを感じ目を覚ます
「ん・・・寒・・・・」

寝ぼけながらにいつも傍らにいるもの
毛並みがふくふくで温かい小さな2匹のねずみに手を伸ばす
「・・・アレ?」
いつも居るはずの場所に2匹がいない
「ねずっちょ?わるっちょ??」
慌てて手でもう一度同じ場所を探る
布団が冷たい・・・随分前からいないのがわかる

先ほどまでの眠たげな感覚は消え去り
シュウははっきりと目を覚ます
「おい!どこいっちまったんだよ?」
声をかけるといつも返事が返ってくるのに
今は返事が無い

「お前が探しているもの達は今はここにはいない」
窓の方から声がした
いつものシュウの大好きな声
・・・・でもいつものシュウの大好きな声とはちょっと違う声


そこには白いドラゴンがいた
でもシロンとは違う3対6枚羽根を持つドラゴン
名前は・・・・・
「えっと・・・・カリメロ?」


「・・・・カネルドだ」
さりげなく突っ込むカネルド


「なんでお前がここにいんの?」
シュウが訊ねる

「さあな・・・・」
ここに吹いてくる冷たい風とシュウの纏う風の悪戯か
カネルド自身にも解らなかったが今ここに自分は存在していた

「あいつらは?戻ってくる?」
心配そうに聞いてくるシュウ

「会いたいのか?」
そう聞いてきたカネルドにシュウは小さく頷く

「大丈夫だ、彼らが目覚める頃には私は消えて元の2体に戻るだろう」

「そうなの?」

「・・・・そうだ」

「何で解るの??」
カネルドの顔を見つめるシュウ
初めてこの白いドラゴンと瞳を合わす
いつもの青い瞳ではない金色の瞳


カネルドはしばらく黙っていたが
一息ため息をつくと
シュウから瞳を逸らし口を開いた
「私には彼らの心は強すぎるのだ」

「強すぎる・・・?」
シュウは理解できない

「・・・・私には心が無い、彼らが目覚めたら
私の意識は押さえ込まれる・・・ということだ」

シロンとランシーンはカネルドの心
カネルド自身には心という物が無い
シロンやランシーンが目覚めるとその強い意志のため
自身は奥深くへ押さえ込まれてしまう

カネルドは風属性の頂点に近い位置にいるドラゴン
戦いの鍵を握る最強といわれるドラゴン
戦いの本能とレジェンズウォーを遂行するという使命を
全うするための意識しか持ってはいない

「心・・・・無いの?」シュウは再び聞く

「・・・・・・・」もう返事する気もないらしい
この辺はやはりシロンとランシーンではないというのが解る
2竜なら呆れてもこんな態度はシュウには絶対にしないだろうから

(2へ続きます)