▼罪(カネシュウ)

※激しくヘタレなカネさんなので
カッコイイカネさん好きな人は見ない方が良いと思います(汗)


真夜中
深い深い闇の中にカネルドは居た

「・・・・・・・」
ゆっくり瞳を開けるカネルド

その金の瞳には何も映ってはいない

全ては闇にのまれている
足場すら無いただ漂うだけの場所

「ここは・・・・?」
闇の中に小さな呟きだけが響く

ここには誰も居ない

自分だけしか存在しない

いつも傍に居るあの碧の瞳の少年も・・・

あえて言うなれば
自分の中に2つの心を宿しているだけ

何も考えずにそのまま漂っていると

一筋の光が見えてきた

始めは小さな光の点

カネルドはその光に呼び寄せられるように光に近づいていく

近づくごとに光がどんどん大きくなっていく


そして


「!!」

光はカネルドを包み込み
いきなり視界が開く

「ここは・・・」
その金の瞳を見開き周りを見渡す


そこは戦場だった

レジェンズウォーの地
『レジェンズキングダム』

沢山のレジェンズが倒れていく

上を見ると文明が破壊され次々消滅していく・・・

そしてその向こうには
かつての自分が居る

無表情に

非情に

迷いも無く

全てを破壊する者


『お前が・・・・全てを壊したんだ』

「!!」
声が聞こえた
聞こえたというより頭の中で響いたという感じだ

『お前が全てを殺した』

『大切な者を傷つけた』

その声はカネルドを責める

カネルドの心がチリっと痛む
これは多分自分ではない心

「・・・・・私は・・・・」
胸に手を当ててカネルドは言う

「私は・・・間違ってはいない」

『間違っていない?破壊する事が正しいと?』

「自然を・・・地球を護るためだった」

『自然と地球を護るためにその他の命すら消滅させる事が正しいと言える?』

「何かを助けるためには・・・何かを犠牲にすることもある・・・」

『それじゃ、君がしていた事は人間と同じ事なんだよね?』

「!!!」
心が激しく痛む

『何かを犠牲にしなくては護れない未来に何の意味がある?』

『結局、お前がやってきた事はただの『破壊』なんだ』

『その罪は決して消えはしない』

『無くした文明が取り戻せないように』

『無くした命も取り戻せない』

『お前の心に光が宿るなど絶対に許せる訳が無い』

『その罪の重さに心が潰れてしまえばいいんだ』

頭を抱え耳を押さえ
声から逃げようとする

心を持つという事は弱くなるという事なのか?

「私は・・・・私は・・・・」

目の前に今までのレジェンズウォーの光景が流れていく
何度も何度も起こる戦いを目の当たりに見せられていく
目を閉じても頭の中に見える光景

心が・・・罪の意識で押し潰されていく








「おい!!大丈夫か??」
誰かが自分に向かって声をかける

「!!」
はっと目を開けるカネルド

そこは

シュウの部屋の中だった

心配そうに見つめる碧の瞳と目が合う

「大丈夫?うなされてたみたいだけど?」
小さな手がカネルドの頭を撫でる

「いやぁ〜なんかさ、ねずっちょとわるっちょがうんうんうなされてるから」
「どうしたのかって思ってたらいきなり光ってお前になるからびっくりしちゃったよ」

「・・・・・・・・」
まだ現実に戻れなくて呆然としているカネルド

「えっと・・・起きてる?」
取りあえず聞いてみるシュウ

ふっと視線をシュウから外すカネルド

「私は・・・此処に居ても良い存在なのだろうか?」

「はぁ?」
カネルドの言葉に素っ頓狂な声をあげるシュウ

「私は・・・長い間・・・文明を破壊し続けてきた・・・」
「それが、当たり前なのだと、自然を護るためなのだと信じて疑わなかった」

「失った命は取り戻せない、文明も取り戻せない」

「私が行ってきた事は許される行為ではない・・・・」
「それなのに、こんなに、穏やかな生活をしていていいのだろうか?」

声が震えている
手で顔を隠してはいるが瞳には少しだけ涙が光る
「私は・・・・・」



「許すよ」
シュウがカネルドの言葉を遮る

「!」
顔を上げるカネルド


シュウの両手がカネルドの顔を挟むように添えられる
そしてコツンっと額をカネルドの鼻先に当てる

「許すよ、他の誰が許さなくても俺は許す」
「お前はよく頑張っただろ?」

「ジャバ・・・なんとかを宇宙に連れていったし」
「まぁ・・・あれはワル夫だけど・・・」
「でもお前は『シロン』で『ランシーン』なんだ」

「失ったものが取り戻せないなら次から頑張ればいい」
「後ろばっかり見てても始まらないし」

「間違いに気がついたのはすごい事だと思うから・・・・」

「だから此処に居てもいいのか?なんて悲しい事いうなよ・・・・」

添えられた小さな手
温かな手

その手の温もりと
少年の優しい言葉は冷え切ったカネルドの心に光を与える


自分の犯した罪は消えない
消えはしない


ならばその罪を背負ったまま
この小さき手の少年の傍にいよう

この少年とこの文明を護る事が

今の自分のたったひとつの救い


・・・償いなのだから



おしまい