▼扇風機委員(ランシュウ) その2
「まぁまぁ、待って待って!」
シュウがシロンの手からひょいっと抜け出してランシーンの方へ向かう

「「サーガ?」」
シロンとランシーンが同時に声を出しシュウを見つめる

「ワル夫ちゃんと手加減してたって、床とか壊れてないじゃん?」
「してなかったら俺達絶対死んでるし(笑)」

「な!ワル夫」シュウがランシーンに笑いかける

「・・・・・・・」ランシーンは何も言わない
シュウの優しい言葉はランシーンにとってはとても嬉しいものだが
力加減が上手くできない自分に激しい憤りすら感じてしまう

「まぁちょっとそれでも加減が足りなかったんだよなぁ〜」
むぅ〜っと手を顎にあてて考えるポーズをするシュウ

「あ!そうだ!」ぽむっと手を叩いて

「なぁなぁ、ワル夫、俺のほっぺたつねってみ?」
そう言って自分の左頬をランシーンに向ける

「言っとくけど痛くしちゃダメだぞ!」
「優しく、優しくな?」

「・・・・・・」
ランシーンはシュウを見つめている

「ホラ、早くしろ〜」
シュウは戸惑うランシーンを急かす

そして

ランシーンがゆっくりと手を伸ばしシュウの左頬に触れる

そして左頬に触れた右手にほんの少しだけ力を入れる
「痛っ!」シュウが小さく声を上げた

「!!!」
ランシーンはその瞬間手をシュウの頬から離した

シュウの頬が少し赤くなっている

ランシーンの心が激しく痛む

シュウは左頬を撫でながら
「痛ってぇ〜・・・う〜んもうちょっと加減しないとダメだなぁ」
「まぁ、ねずっちょキックより遥かにマシなんだけどな」

「ほい、じゃあもう一回再挑戦!!」
そう言ってシュウは右頬をランシーンに向けた

ランシーンは自分の右手を左手でぎゅっと握り締め
「いえ・・・私は・・・結構です」
シュウから視線を外す

「ん?どうして??」
シュウはキョトンとしている

「したく・・・ないんです」
ランシーンのかすれた様な小さな声

「ワル・・・・・」
シュウは名前を言いかけて言葉を止める

そして次に出た言葉は
「・・・・ランシーン」
ランシーンの本当の名だった

「!!」
ランシーンはシュウを見つめる

シュウはいつになく真剣な瞳でランシーンを見つめる
「いいか?ランシーン、よく聞けよ?」
「何をそんなにビビッってんのか知らないけど逃げるな!」

シュウはまだ続ける

「もしも、クラブでうさぎを飼ったとするよな?」
「うさぎはレジェンズのメンバーどころか俺達よりも弱い存在だぞ?」
「力加減解らなくてうっかり潰しちまったらどうするんだ?」
「それともそういうのが怖いからって逃げてばっかなのかよ!」

「力加減って経験の問題なんだ」
「俺も小さい時に、まぁ何回か失敗してるし・・・」

「俺はつねられたくらいで死んだりする訳じゃないから・・・」
「だから・・・・逃げるなよ・・・」

シュウがランシーンの翼を掴む


「・・・・・・・・・」

ランシーンはシュウの言葉を聞きながら
少し目を閉じ・・・考え
そしてゆっくりと開く
「・・・・わかりました」

ランシーンの左手がゆっくりとシュウの右頬に触れる
そして震えるほど僅かに・・・ゆっくりと力を入れる

「・・・・・・・」

シュウの碧の瞳がランシーンの蒼い瞳を見つめる

そして

にかっと満面の笑みをこぼし
「はい!たいへんよく出来ました」と一言声を出して
自分の頬に触れるランシーンの手を優しく撫でた

「じゃあ、もういっちょ翼で扇いで見てくれよ!」
「さっきの調子でな!!」
シュウはパタパタのみんなのいる所へ向かう

「・・・・はい」
ランシーンはゆっくりと翼を広げる

4大レジェンズの面々は自分のサーガを護る様にしっかりと支えている

バサリッ!
風が吹いた
とても穏やかな風
強すぎず、弱すぎず
絶妙なコントロールだ

「おお!ばっちりだな!!」
シュウが親指を立てて喜ぶ

「はい」
ランシーンは笑っていた


そして正反対なのが・・・

「・・・・でかっちょ?」
シュウが不思議そうな顔でシロンの顔を見つめる
その顔は明らかに不機嫌極まりない顔だった
シュウを支えていた手にもやたらと力が入っている
「どしたの?」

「別に・・・何でもねぇよ」
何でもないと言いながらもその声には怒りの色が混じっていた






その夜

ランシーンが夜の散歩に出かけている時

シロンがシュウの頬に不意に触れた
「ん?何??」シュウが不思議そうにシロンを見つめる
「頬・・・痛くねぇのか?」シロンが訊ねる

「頬?・・・ああ、つねられたこと?平気だよ」
頬の赤みは綺麗さっぱりなくなっている

「痛いだろ?痛いよな??」それでもしつこく聞いてくるシロン
「え?別に平気だって、お前(ねずっちょ状態)に蹴られる時より全然マシだし」

「イヤ!!絶対痛いハズだ!!痛いよな??痛いって言え!!コンチクショー!!」
俺様全開のシロン
かなり切れている

「あー!あー!!解った!解った!!痛い痛い!!これでいいのか?」
半ば呆れ口調で言うシュウ

その瞬間

「!!!」

シロンの口がシュウの左頬に触れ
『ペロリ』舐められた

「んな!!」
「ちょ・・・ちょちょちょ・・・おま!!何すんだよ!!」
慌ててシロンからずさっと後ずさりパジャマの袖で頬を拭う

「何って消毒v」
「ばい菌を綺麗に取っとかないとマズイだろ?」
しれっというシロン

「このアホドラゴン!!余計にばい菌つくっての!!」

「んだとコノヤロー!!」

マツタニ家の子供部屋でいつものごとく喧嘩が始まる

シュウはまだ気がつかない

『ばい菌』とは『ランシーン』を指しているということを

シロンの行動はランシーンに対する『やきもち』から来ているということを・・・


おしまい


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あとがき

はい、あとがきです
お蔵入りSSを手直ししてあっぷしました
すんごい長いですね^^;ぷちじゃない(笑)
手直しして少しマシになったと思いたいです

問題は2竜がすごいヘタレってことか(笑)