▼アルバイト(2竜)
穏やかな風の吹く午後の日
秘密基地の屋上で
横になり風に当たりながら昼寝をしていたシロン

バサリっと羽ばたきの音と共に
漆黒の翼を持つランシーンが秘密基地の屋上に降り立った

「なんだ?早いな、仕事終わったのか?」
シロンが聞く

「ああ、今日は会議だけだからな、早めに終わらせた」
「そのかわり・・・・明日は早そうだがな・・・」
ランシーンは答える

「そっか・・・・」


・・・・・・・・

しばらく沈黙が続いたが
ふいにランシーンが口を開く

「シロン・・・お前、サーガがもうすぐ誕生日なのは知っているのか?」

「ん?ああ、まあな」

「何かプレゼントとか考えてはいないのか?」

「考えてねぇなぁ・・・まぁ空の散歩とか連れていきゃあ」
「それなりに喜んでくれそうだからな」

それを聞いてランシーンは深いため息をつく
「コレが自分の半身だと思うと情けなくなってくるな・・・」

目をピクリと動かすシロン
「んだと?コラ・・・」

今にも喧嘩が始まりそうになる

「私はサーガに高級ホテルのスイートルームを2泊3日プレゼントするつもりだ」
「もちろんパパさんやママさんも一緒にな」

「お前もそれくらいのコトをしてみたらどうなんだ?」
「サーガの誕生日だろう?」

ランシーンの言葉にピキっとお怒りマークを顔に浮かべ
シロンは答える
「別に金かけたからってそれでサーガが喜ぶかどうかなんて解んねぇだろが?」


「確かにそうかもしれない・・・」
「そうかもしれないが・・・」

ひと呼吸おいてランシーンは続ける

「お前・・・いつまでパパさんやママさんのスネをかじる生活続けるつもりだ?」
「私達がマツタニ家に来てから食費も倍増しているはずだろう?」
「家の手伝いで小遣いもらう生活に甘んじていてどうする!」
「ワニの穴の支払いもダンディの奢りかツケだろうが」

「こんな所で昼寝ばかりしていて良いと思ってるのか?」
「そんなんじゃ、ペットとして飼われてるのと同じだろう!」
「少しは働け!!」

「くっ!」

ぐうの音も出ないほど正論を叩き付けられるシロン

「別に誕生日プレゼントに豪華な物をプレゼントしろとは言うつもりはない」
「私はお前より常に1歩前に進んでいたいからな」
「まあ今の状態では1歩どころか話の次元が違いすぎるがな」
鼻でふふんと笑うランシーン

「まあせいぜい空の散歩でもプレゼントすればいいさ」
「お前は私の半身だが・・・・私ではないのだからな」
バサリと黒い翼を広げるランシーン
「私はしばらく散歩でもさせてもらおう」
「お前は此処で昼寝でもなんでもしていろ」

「ペット君」


くくっと意地悪な笑いを浮かべ
そう言葉を残してランシーンは空へ飛び立つ

「・・・・・・・」
シロンは空を見上げ
小さくなっていくランシーンを睨む




風を受け秘密基地からどんどん離れていきながら
ランシーンは呟いた
「これで少しはやる気になってくれればいいのですがね・・・」
その言葉には意地悪な色はなく
穏やかな優しさがこもっていた






それから一週間後
ウォルフィーと同じ工事現場で
安全メットを被ったシロンの姿があったとか


おしまい


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あとがき

すいません変なお話で
いや・・・いい大人が働かないで
ゴロゴロしてるのはどうかなぁって思って
出来たネタでした
しかもランシーンさん働いてるから
シロンかなり劣勢(笑)だしね

はじめは『ワニの穴』のバーテンでもって考えたけど
シュウの学校行ってる時間の方が仕事しやすいし
シロンがカクテル作れるか微妙だったので
ウォルフィーの紹介でってことで(笑)

私の中ではレジェってモンスターなんだけど
人間と同じだって思っちゃうんですよねー
あんまりにも人間くさくて(笑)