▼忘れない時(2竜)
ゆっくりと流れる時間の中
秘密基地の屋上で優しい風を感じながら
黒い風竜ランシーンは本を読んでいた
隣には白い風竜のシロンが居る
シロンの膝の上ではシュウが穏やかな寝息をたてていた

ランシーンは読んでいた本に栞を挟み閉じて
シロンの膝の上で寝ているシュウの髪にふわりと触れる
「おい!なんだよ、勝手に触んなよ」
シロンはシュウに触れるランシーンの手を
バシッと払いのける
「別にサーガはお前のモノではないだろう」

「違う!サーガが起きちまうだろうが」
本当は触られたのが気に食わないだけだが
とりあえずシロンはそう答える

「・・・・・・・・」
ランシーンはそれを聞いて
ふぅっとため息をして
空を見上げる
「サーガの髪・・・伸びてきていますね」
呟くように言うランシーン

「そうか?まぁ人間だからなぁ」
「髪だって伸びるし、背だって伸びるわな・・・」

そう、サーガは人間だ
ゆっくりとだが確実に時間は流れ
成長していく・・・・

「私たちの時は・・・・止まっているようなものだ」
髪も伸びなければ成長もしない
生まれたときからこの姿のまま

「そうだな、怪我をしてもタリスポットに戻れば元通りだし」
「翼や髪もタリスポットに戻れば元に戻るからな・・・」

そう・・そしてそれは
遠くない未来
自分達の時間の流れの中では
ほんの一瞬にすぎないかも知れない未来の
サーガとの別れを意味する

ランシーンはシロンの目を見つめ問いてみる

「お前は・・・耐えられるか?」

「何がだ?」

「サーガの存在しない未来にだ・・・」

「・・・・・・・・」

この幸せな

この大切な

満たされた日々を

「失いたくはない・・・・」

永遠に続いてほしいと願う気持ち

再び空を見つめるランシーン
「だが・・・失ってしまうのならば」

それを失ったときの
辛さ、悲しさ、孤独

その気持ちを永遠に抱いたまま
長い時を過ごすのならば

いっそのこと消えてしまった方が・・・
「忘れてしまった方が・・・いいのかもしれない」


「・・・・・・・・・」
シロンは何も言わない


そしてしばらく沈黙が続いた




「俺は・・・忘れるつもりはねぇけどな」
シロンは呟く

ランシーンはシロンを見る

膝の上で幸せそうに眠る子供の髪を触れながら
シロンは言う
「俺は忘れねぇ」

サーガの風

サーガの声

サーガの笑顔

サーガの香り

サーガと過ごした思い出の日々

俺たちに与えてくれた沢山の心

「俺たちが忘れちまったら」
「何も残らねぇじゃねぇか」
「サーガの存在自体消しちまってどうすんだ?」

「俺たちが生きてる限りこいつは存在してるんだ」

形は無くなるのかも知れないが
サーガとの思い出は無くなる訳じゃない

俺たちが忘れない限り

「だから俺は・・・」

永遠にこの思い出を抱いて生きていけるように
精一杯この時間を大切に大切に
今を過ごして行こうと思う

「忘れねぇ・・・・」


ランシーンはそれを聞いて
「・・・・そうだな」と呟く




かつて心を持っていなかった頃
孤独という感情など無かった

だから一人でも生きてこられたのだと思う

心とは脆く弱い物だ

だがシロン、お前を見ていると
それだけでは無いのかもしれないと思う

心とは強い物でもあるのだな・・・・


私もこの思い出を胸に抱き
共にこの長い時の中を過ごそうと思う


永遠に



おしまい

・・・・・・・・・・・・・・・・・

あとがき

ボツネタだったものを手直ししてあっぷしました
意味が解るか微妙に心配(汗)
2竜の心の違いを書きたかったんだけど
(忘れたい派と忘れない派)
上手く伝わってないカモ
ボキャ少なすぎでスイマセン^^;