▼風の竜(シロシュウ)
秘密基地の屋上で
面白そうに漫画を読んでいたシュウに
シロンはいきなり聞いてきた

「なあ、俺ってやっぱり怖いのか?」

「・・・?何で?」
シュウは漫画から目を離して
シロンを見つめる

「いや・・・別に」
「ちょっと聞いてみただけなんだけどな・・・」
シロンはシュウから目をそらしてそういう

「フーン・・・」
シュウはそれを聞いて
また漫画を読み始める

実は今日
ヨウコのお友達が小さな子供を連れて
マツタニ家に遊びに来たのだ

お友達とは何度か会ったこともあり
レジェンズにも理解があったため
シロンとランシーンはそれなりに普通に接していた


だが


小さな子供は泣き出したのだ
「怖い」と言いながら

結局その子供は最後まで泣き止まないで
お友達は「すいません」と一言言って
早々に帰っていった

それが・・・・ショックだったのだ

シュウは学校だったため
その場にはいなかった

でも、シロンの今の風を肌で感じ
シロンの感情を読み取る

少し沈んだ重たい風を

「・・・・んー、まぁ、怖いと言っちゃ、怖いかもなぁ」
シュウはそう漫画を読みながら呟く
「お前らデカイし」

「そうか・・・」

「ドラゴンだし」

「ああ・・・」

「ドラゴンって言ったら」

「・・・・・」

「火吹きそうなイメージあるし」

「俺は吹かねぇけどな」
それはグリードーだろ
と心で突っ込みながら答えるシロン

「うん、まあそうなんだけど」
「イメージだよ、イメージ」

「そうか・・・」

「首も長いしな」

「・・・・、首長いと怖いのか?」

「ん?いや・・・怖くないな、キリンも馬も首長いけど・・・」

段々と脱線していくシュウに
聞くんじゃなかったか?と思いだすシロン


「でもさ」

「俺は綺麗だと思うけど?」
ぽそりというシュウ

「・・・!!」
驚くシロン


「お前の金色の髪も太陽に当たるとキラキラしてるし」
「瞳も青い宝石みたいだし」

はじめは怖いかもしれないけど・・・
深く付き合えば
お前達の本当の姿を知ったら
きっとその恐怖も消えるから
だから・・・大丈夫

シュウの風はそうシロンに語りかける

「お前のその真っ白い翼とかさ、まるで天・・・」

「!!!」

シュウが言いかけてると
いきなりシロンはシュウの服の襟を銜え
シュウを天高く放り上げる

「ひょえぇぇーーーー!!」
くるくるくると回転しながら
ぽそっ!!っとシロンの背中に落ちるシュウ

そしてシュウが背中に居るのを確認して
一気に飛び立つシロン

「もう!なんだよいきなりーー!!」
首輪に掴まり
シロンに抗議の声を上げるシュウ
「俺漫画読んでたんだぞ!!」
「聞いてんのかー!!」

「・・・・・・・」
シロンに返事はない

「・・・あ・・・」
首輪に掴まっているシュウはふっと気がつく

シロンの白い首の部分が
ほんのり紅く染まっているのを

顔は前を向いているので見えないけれど
多分今のシロンの顔は・・・

「・・・・ぶっ」
少し吹き出してシュウは言う
「お前・・・もしかして照れてるの?」

「照れてねぇ・・・」
顔は前に向けたまま答えるシロン

「イヤ、照れてるだろー」

「照れてねぇよ!」

「照れてる照れてるw」

「照れてねぇっつってんだろが;;」



空の上で風の竜と風の少年の言い合いは続く


白き風の竜、シロンの風は
先ほどの重い雰囲気を捨て
いつものように穏やかな優しい風に戻っていた


おしまい