▼風の竜(ランシュウ)

穏やかな風の吹く平日の午後
秘密基地の屋上で漆黒の翼を持つWDのランシーンは
『螺旋の書』を開き
繰り返して来た長い歴史を振り返る

「ワール夫!」
屋上に元気な少年の声が響く

「・・・・・サーガ?」
本を膝の上に広げたままシュウの方へ振り返るランシーン

「そんな難しい顔して何の本読んでるの?」
シュウはとたとたと歩いて来て
ランシーンの膝の上の
本との隙間にちょこんと座る

「『螺旋の書』・・・レジェンズの歴史(予言)書ですよ」

「ああ、『螺旋の書』ね」
シュウもこの本の存在は知っている

「ところで・・・・」
ランシーンはきょろきょろと周りを見て
「シロンはどうしました?いないのですか?」と聞いてくる

「でかっちょ?あいつ今日バイトだよ」

「バイト・・・」

「最近さー、あいつなんかすごく頼りにされてるみたいで」
「結構頻繁にバイトにいってるなぁ〜」
「忙しいけど頼りにされるってのは良い事だよな^^」
へへっと笑いながらシュウは言う

「頼りに・・・・ですか」
ランシーンが複雑そうな顔をする

「?」
「ワル夫・・・どうしたの?」
それを不思議に思ったのかキョトンとした顔で
シュウはランシーンに聞いてくる

「いいえ、別にたいしたことではないのですが・・・」

「うん」

「私たちWDは本来『恐れられ、忌み嫌われた存在』ですから・・・」

レジェンズウォーの鍵を握り

何度も螺旋を繰り返し

『地球を護る』という名目の元

破壊と殺戮を繰り返して来た存在

仲間など居なかった

友など居なかった

心も持たず

ただ、ただ『戦いに勝利する』
その使命だけを繰り返していた存在


ランシーンは螺旋の書の文字を
つっと指でなぞりながら
「そんなWDが『頼りにされる』というのを不思議に感じてしまって・・・」
と苦笑する


「だーーーーー!!ワル夫!!」

「はい??」


いきなり大声を上げたかと思うとシュウは
ランシーンの体をよじ登りはじめる

「サ・・・サーガ??」
慌てるランシーン

そしてガシッとランシーンの鼻の上あたりに抱きつき
目を見つめるシュウ

「いいか?歴史は歴史!過去は過去!!」

「そんなもん見てても過去は直らないの!!」

「過去のお前・・・いや、お前達は『忌み嫌われた存在』だったのかもしれない」

「でも今は違うだろ?」

「時間が流れていくように、景色が変化するように」

「お前達という存在も変化してる、変わってきてる」

「変化しないものなんてないんだよ?」

動かない石も雨や風により形を変えられたり
本だって色あせる事もある

「どんな風に変わるのかは」

光輝くのか、色あせるのか

「全てはお前達しだいじゃないのか?」


「・・・・・サーガ」


「まあ、これは全部父さんの受け売りなんだけどさ」
「でも、俺もそうだと思う!」

「今のお前達には『仲間』も『友達』もいて『家族』もある!」
「『心』だって持ってるんだろ?」

「過去は『教訓』として残しておいて」
「その『教訓』を生かして未来を作る」

「それでいいだろ?」

真っ直ぐにランシーンに向けられる翠の眼
その瞳を見つめ
目を閉じて考える

そして口元を少しだけ上げて笑い
「・・・・そうですね」
・・・と返事を返す


「よし!それじゃ」
ランシーンの顔からぴょこっと飛び降り
したっと下に着地するシュウ

そしてランシーンに向き直り親指を立て
「宿題・・・教えてくれる?」

「はい?」
話が突然変わって訳が解らないランシーン

「いや〜;;俺、この間のテストで5点取っただろ?」
「その所為でハルカ先生からたんまり宿題出されちゃって〜;;」

「・・・・・・・」

「さすがに次5点以下の点数取っちゃうと父さん母さんにバレちゃうからね^^;;」

「・・・・それは、確かに過去を振り返ってはいけませんね(苦笑)」

「そうそう、過去は『教訓』として残しておいて」

「『教訓』を生かして未来を作る・・・ですね?」

「うん;;」
頭を掻きながらてへっと舌を出すシュウ

「では・・・未来を変えるために頑張って勉強しますか」
くすりと笑ってシュウに言うランシーン

「お・・・おう!じゃあ俺下から宿題持って来る」
たたたと走って下へ向かうシュウ

「はい」

優しい風が漆黒のWDの周りを吹き抜ける

過去を振り返る事もたまには必要かもしれない
でもそれは過ぎたこと

過去を変えられないのならば

未来を変えればいい

未来を変えるのは

運命を切り開くのは



全ては自分達次第



おしまい



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あとがき

ボ・・・・ボツネタあっぷ・・・orz
ごちゃごちゃ説明くさくて
面白くないからボツだったんだけど;
ごめんなさいショボ内容で(ぬあ;)
多少は修正いたしました〜
(あんま変わっていないんだけどね;)