▼優しい炎 (グリディノ)

穏やかな日曜の昼下がり
スパークス家の1室でディーノがピアノを弾きながら
一人ブツブツと呟いていた

ガチャ・・・
ドアが開いた

グリードーが顔を覗かせる
「ディーノ?何してるんだ?」
相変わらず片手には大工道具を持っている

「え?ああ、なんでもないよ」
笑顔で答えるディーノ
「グリードー今日は何処の修理?」
と話題を変える

「修理はもう終わった、今日は久しぶりに今からOFFだ」
「だからたまには外出時以外でもお前と一緒に居ようと思ってな」
ディーノに向かってグリードーは言う

「グリードー」
少し顔が綻ぶディーノ

「久々にお前のピアノでも聴かせてもらおうかな?」


「え?・・・・」
一瞬ディーノの顔が困惑の色に変わる

そんなディーノの顔を見て
「無理なのか?無理なら別にいいぜ」

「あ・・・いや、無理じゃないんだけど・・・・」
少し考えるような顔をするディーノ

「・・・・・?」
いつもは直ぐに聴かせてくれるのになんでだ?
グリードーには解らない

「・・・・よし!」
そして、ディーノは何かを決めたような顔をして
ピアノへ向き直った



ぱらり・・・っと楽譜が捲られる

ディーノはゆっくりと鍵盤に手を置く



そしてピアノが旋律を奏でだす

グリードーは瞳を閉じその旋律に耳を傾ける

時折ディーノの手が止まり音が止まる

「・・・・・・・・?」
グリードーはちょっと違和感を覚えた

初めて聞く曲だな

でも・・・なんかぎこちないというか・・・時々止まるし

初めて弾く曲だからか?ディーノも慣れていないのか・・?

たまにはこんな事もあるか・・・

ただ・・・そんな感じで何も考えずに聴いていた


そしてその曲は終わる



グリードーは手を叩く
「良く頑張ったな」グリードーはそう言う
その言葉の中に上手いという言葉はなかった



でも本当にディーノはどうしたんだろう?という疑問も出てくる
いつもはもっと上手く弾けるはずなのに・・・・



その疑問の答えは
ディーノの答えで直ぐに出た


「この曲・・・・僕が作った物なんだ・・・・」
少し恥ずかしそうに小さな声で言う


「!!!!!」
驚きの顔をするグリードー



「僕は・・・今までピアノは楽譜通りにしか弾かなかった」
「野球も、勉強も、教えられた通りにしか出来ないつまらない人間だって思ってた」

自分の胸の内を語るディーノ

「でもグリードー昔言ったよね?」
「僕達も破壊だけじゃなく何かを作り出す事が出来るかもしれないって・・・」

「だから・・・・その・・・あんまり上手くは出来なかったけど・・・・」
「作ったんだ・・・・」
ディーノは顔を紅くしていた


「ディーノ・・・」
グリードーが呟く



「この『優しい炎』は僕がグリードーをイメージして出来た曲なんだ・・・」


「!!!」
更に驚愕の事実

ディーノが自分をイメージして作ってくれた曲



ぎこちない曲だと思っていた
ディーノにしては珍しくチープな感じだと思っていた

正直・・・馬鹿にしていた

でも・・・この事実を知ってグリードーは後悔する
何故、もっとしっかり聴いていなかったのか


「ディーノ・・・」グリードーは真剣な声で言う

「何?」


「もう一度初めから聴かせてくれないか?」
「しっかりこの耳で聴いて」
「お前の初めて作った曲を覚えておきたい・・・」

この胸に刻みつけておきたい



ディーノはグリードーの瞳を見つめ
「・・・・うん」
小さく頷く


ディーノは再び鍵盤に手を置いて
深呼吸する

そして・・・・

『優しい炎』の旋律が始まった

2度目だからか今度は止まる事はなかった

グリードーは瞳を閉じて
その調べを聴く
今度は聴き逃すことなく
記憶に入れるように聴く

優しく、時に激しく変わるリズム
ディーノの思いが伝わってくる

確かにぎこちない曲なのかも知れない
知らなければ馬鹿にしていた

だが今聴いている曲は自分にとっては
どんな名曲よりも素晴らしく聴こえる

人の思いとはそんな物なのかもしれない



そして曲が終わった時


グリードーはディーノを抱き締めていた

「グ・・・グリードー?」
ディーノは顔を紅らめグリードーを見る

「ありがとう・・・ディーノ」
「いい曲だ・・・俺にとってはどんな名曲も霞むくらいにな・・・」
耳元で囁き、その腕に優しく力を込める

ディーノはその言葉を聞いて幸せそうに微笑む


教えられた通りにしか出来ないと思っていた人間がいた

破壊しか出来ないと思っていたレジェンズがいた



でも『優しい炎』はその2つの心に


新しい炎を生み出した



おしまい

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あとがき

グリディノSS第2弾です
頑張ってみたのですが・・・ちょっと心配
もっと甘々にしたかったのですが
すいません(平謝り)

取りあえず今回のテーマは
文中でも言ってるように

何も生み出すことの出来ない人間だと
思い込んでいたディーノくんに
何か作らせて見ようと出来たお話でした〜