▼香の標 3(ウォルシュウ) 

心当たりのある場所

それは今日シュウと別れた場所

どうもリーオンと2竜の雰囲気からして
シュウが消えたのは別れた後のようだ
だとしたら子供の足のこと、そこまで遠くに行ってる訳はない
「攫われた・・・とかなら話は別だがな・・・」
最悪の事も考えつつ一縷の望みを託してあの場所へ向かう


今日お昼を食べた現場に着く

もう今は夜ってこともあり
昼間とはまったく違う顔になっている場所
工事も一旦終了してるので
人影など無く静まり返っている

シュウが向かった方向へと視線を移すウォルフィー

「何処にいる・・・?」
小さく呟く


その時ふっとウォルフィーの鼻にある香りが届く
「!!・・・この香り」

間違いない!今日昼にシュウが手につけたと言っていた香水の香り

多分自分でなければ気付く事も出来ないほど微かな香りだ

「やっぱりこっちの方にいるんだ・・・・」

ウォルフィーは鼻に全神経を集中させる
そうでもしないと消えてしまいそうな程の微かな香りだから

ゆっくり・・・ゆっくりと歩みを進めるウォルフィー

そしてしばらく歩いているとその香りは突然途切れた
「この辺で・・・・消えた?」

慌てて辺りを見回すウォルフィー
何も無いただの裏路地
自分の横には『危険』の文字の立て札があるだけ
「何処だ・・・部長・・・」

風がどんどんと変化しているのは属性が違う自分でも解る
2竜にはもう気持ちの余裕がないのだ

「早く見つけないと・・・」
気持ちだけが焦っていく

そしておもむろに下を見ると其処には


『マンホール』があった


今は蓋を閉じられた状態だ

え?まさか?此処に?
余り考えたくないことだ
この辺りのマンホールは深い
落ちると10数メートルは真っ逆さまだ

でも・・・もしシュウが此処を通った時
この蓋が開いていたとしたら?
立て札に気付かなかったとしたら?
あのシュウの事だありえない事ではない

ガコン・・・と音を立ててウォルフィーは蓋を開けてみる

そしてもう一度あの香りを探す

汚水の匂いがする
気分の良い匂いではないがそうも言ってはいられない

出来るなら・・・違っていてほしい
出来れば違う場所で無事で居るという事を願いたい
香りがしない事を願って神経を集中させる

しかし結果は非情なものだった
香水の香りが確かにする

シュウは間違いなくこの下に居るのだ

「部長ーーー!!!」
ウォルフィーはマンホールへ飛び込んだ