▼香の標 5(ウォルシュウ)



後日



クラブ活動の日
ウォルフィーは部長に呼ばれて
スパークス家の1室に2人で居た
2竜の射すような視線は痛かったが
シュウに付いて来てはダメっと言われているのか
付いてくる事は無かった

「この間はサンキュウな〜」
「俺さぁ、正直状況が良く解ってなかったんだけど」
「家に帰ったら父さん母さんには怒られるは、あいつらには怒られるは散々だったんだ〜」
頭を掻きながらシュウは言う

「うん、まあ普通怒られるわな、それだけ皆心配していた訳だし」
1歩間違えたらレジェンズウォーが始まりそうな勢いだったし

「それでさ、部長はなんでマンホールに落ちた訳?」
取り合えず1番気になっていた事を聞いてみるウォルフィー

「あ・・・それ?う〜ん・・・なんつうか」
「キーホルダー見ててさ、あいつらの喜ぶ顔考えてて」
「でもって下とか立て札とか見て無かったんだよな〜」

シュウにとってどれほど2竜が大切なのかが伝わってくる

「そっか・・・ま、あんまり余所見はしちゃダメだぞ!」
ウォルフィーは少し寂しそうだ

「そだな、以後気をつけマス!!」冗談めかして言うシュウ

それを聞いて、はぁっとため息をつきウォルフィーは
「・・・それで、部長は何で俺を此処に呼んだ訳?」
まさか親に説教された話をしたくて呼び出した訳じゃないとは思うけど

「あ!!そうそう!!ソレソレ!!」
「俺やっぱ助けてもらったの図書委員だって思ってるから」

「体・育・委・員!!」

「・・・体育委員だって思ってるから」
「だからさ、何かお礼したくてな?」

「別にいいって」

「いや!そうもいかないだろ?俺今あんまお金ないからさぁ物買う事出来ないし」
「体育委員の歌とか作ろうか?」

「イヤ!それは遠慮する」

「う〜んじゃあ、ネッカチーフとお揃いの柄の服とか作ろうか?」

「嬉しくないからそれ(汗)」

「え〜・・・じゃあ何がいいんだよ〜」
ぶぅっと頬を膨らますシュウ

「別に・・・・・」
いらないと言い掛けて少し考える

「体育委員?」
キョトンとしているシュウ

「じゃあ・・・キス・・・とかはどうかな?」
さりげに言うウォルフィー

「キ?キス???」
想像もしていなかった要望が出て驚くシュウ

「別に口じゃないって!頬とかな」
笑いながらウォルフィーは言う

「あ!ああ〜!なんだそうか〜」
「俺はてっきりあいつらみたいに・・・・」
と言って慌てて口を押さえるシュウ

「ん?あいつら?」
まあ想像はついてるがしらばっくれて聞いてみたりする

「イヤ!何でもない、何でもない^^;」
慌てて言いつくろうシュウ



「じゃあ頬にキスってことでOK?」
ウォルフィーは聞く

「うん・・・・」頷くシュウ

ウォルフィーは膝を付き顔をシュウの身長の高さまで落とす

「じゃあ・・・・・」
シュウは目を閉じてウォルフィーの頬に向かって唇を近づける

それを横目で見つめながら
「あ!実は部長に話が・・・」とおもむろにシュウに顔を向ける

「!!!」

「「あ・・・・・」」

お互いの唇が触れる

慌ててぱっと唇を離すシュウ
顔がリンゴやトマトのように真っ赤だ

「あ、ごめん・・・部長」しれっと言うウォルフィー
実はわざとだ(笑)

「え?・・・ああ、えっと・・・うん、別に良いよ」
そう言いつつも視線はウォルフィーを見ていない
「じゃあ!俺、もうあいつらのトコに戻るから」
そう言ってシュウは走るように部屋から出て行った

「・・・・・・・」
その後姿を見つめながら
ウォルフィーはポケットから小さな小瓶を出す


それは小さな香水だった

シュウが手に零した香水

そしてそれが手掛かりとなり見つけることが出来た思い出の香り

今はもうシュウからはその香りはしなくなったけれど

自分にとっては思い出の深い香りだから・・・・


ウォルフィーはその小瓶を見つめ
少しだけ笑いながら小さくキスをおとす



この『香の標』は自分とあの子供との

小さな思い出




おしまい