▽過去の詩集 第1期:名前の無い詩61-80
▽第1期:名前の無い詩 61
魔女を焼く火を掲げ
猟人の決意の声
我が手に罪人を裁きし
権と剣を

縄を締めて磔刑の十字を
枯れ木の爆ぜる音
貴女の足元に処刑人の
火と悲を

亡き者は今更についと語る
所詮愚かしい所業に過ぎぬと

真実など行方は知れぬままなのだと
2007/8/13(月) 10:27


▽第1期:名前の無い詩 62
貝の殻に刻む地図
湾曲する想いの墓地

在らぬ地へ運ぶ鳥の翼に
ただ鎖をかけて

雪の中に溶ける花
瓦解する詩歌の郷

帰らぬ地へ導く夢の手に
ただ鍵をかけて

私を今此処に置いて行く
その代償を忘れないで
緩やかに縛り付ける蔦の感覚で
2007/8/13(月) 10:29


▽第1期:名前の無い詩 63
震えて割れる氷 冷たい衝動
何もかも凍らせて
砕け散ったエリーゼの純白だけ
手元に残るの

揺れて尽きる炎 熱い衝撃
何もかも焦がして
焼きついたコスモスの紅だけ
手元に残るの

まだ寂しさは傍らに寄り添ったまま
何故貴方は残らないの?
灰も欠片も残るのに

私は一人残る
どうかその檻を開けて
喉に短剣を
2007/8/13(月) 10:33


▽第1期:名前の無い詩 64
魂の拠に澱むように
血の中の剣の銀月
ひとつだけ孤高に語る

轍の足跡に戸惑うように
水の中の睡蓮の命
ひとつだけ艶やかに示す

祭壇の供物に憐れむように
神の中の唯一の慈悲
それだけが鮮やかに見える

絶つ術を 断つ手立てを
2007/8/13(月) 10:36


▽第1期:名前の無い詩 65
天の気紛れ 闇の固執

燦然の空は悪戯を
唖然の地は諌めるを
毅然の海は崇めるを

燻る火に贖いを
強まる痛みに憂いを

そして終曲を奏でよう
2007/8/13(月) 10:39


▽第1期:名前の無い詩 66
絶望を縁取る死化粧が虚ろを流れ
希望を彩る花畑が段々と枯れ果てる

戯れた時間を糸車に巻き取って
透き通る
回想のような
壊れた心を篭に拾い集めて

忘れたコトバはイクツだろう
乾いたヒトはイカホドだろう
2007/8/13(月) 10:41


▽第1期:名前の無い詩 67
この処刑場でまた会えますか
楔を断頭台に打ちこみ
魂をつなぎ止め
朽ち果てゆくここで

この時間でまた会えますか
夕日が断罪の地を包み
血のように美しい
日と月が揺らぐ時で

この季節でまた会えますか
木々が鎮魂を歌い
虫が死を紡ぐ
冬をかいまみる四季で

見えるその瞬間まで
もう一度静かに眠れ
2007/8/29(水) 10:43


▽第1期:名前の無い詩 68
嘆きに連なる思い絶て
限りに施す傷を描け

幾つ影を数えたら終わるだろう
ただあの岸に流しておくれ

足掻きに重なる痛み断て
渇きに更なる傷を向け

幾つ星を数えたら始まるだろう
ただあの湖に沈めておくれ
2007/8/29(水) 10:43


▽第1期:名前の無い詩 69
季節狂わす花の我を
見届けるのは永なる空
灰に骨埋めて見限ろう

生死歪ます神の我を
見届けるのは有なる地
水に肉沈めて見限ろう

途切れた夢は至福であり
途絶えた現は暗鬱であり

混じる血は祭壇に
交わす手は棺桶へ
2007/8/29(水) 10:44


▽第1期:名前の無い詩 70
鑑を割り映そう
白で着飾る貴方を
問い掛ける口を奪いたまえ
意志を砕き嘆こう
黒で塗り潰す私を
応え失う思考を奪いたまえ
鍵を捨て歩もう
赤で縁取る彼方を
絶え果てる姿を覆いたまえ

潜む思いは凱旋を願い
叶わぬと知りつつ祈り捧げ…
2007/8/29(水) 10:45


▽第1期:名前の無い詩 71
傷み抱きし今を
如何と成すか

手の僅かな隙間を潜り逃げ出す水のように
貴方の心もまたすり抜けるのだろう

何故と聞かないで 永久に
理由の所在は奥深く 池の泥より深い位置

翳り戴きし雫を
如何と成すか

それは要らぬ物を除く浄化の過程だと
その本性を知りながら己を誤魔化し

問いはしないと 目を背け
自虐の想いで締め括り

言葉を無くし立ち尽くすのだ
2007/8/29(水) 10:46


▽第1期:名前の無い詩 72
乖離の鈴 燕下の物
来る先は 苦難の徒
垣間見る 行路の終
朽ち果てしその夢現
茫漠の空 歴然の意
我が手に 照らす術
飾る花の 枯れ色を
光と成せと言うのか
果て無き 今を記し
革の表紙 閉ざそう
2007/8/29(水) 10:47


▽第1期:名前の無い詩 73
隠れた涙の泉だけ
爛れた肌の傷だけ

幾らかの摩訶不思議
どれに喩えと言うのだろう

篝火に色彩の罠
高嶺に濾過の術

幾つかの残酷劇場
どれに乗ぜよと言うのだろう

愚者の選択肢を数えよう
2007/8/29(水) 10:47


▽第1期:名前の無い詩 74
夕日が造る時を
顎門が喰らうまま
憂色が染める
空もまたその臓腑

月蝕が垣間見る影
顎門が噛み砕くまま
奇祭が歌う
物語もまたその臓腑

巡らせた血の網を潜り抜け
騙し騙す手をすり抜けて
永久に遊戯を楽しみましょう
2007/9/12(水) 16:47


▽第1期:名前の無い詩 75
私の示度はいくつをさしているだろう
きっと目盛りの帰趨を指していて
小さく揺らめきながら
しがない音をこの世界に起こすのだ

微かに火は光を織りなしているのか
恐らく問いも答えもありはしない
一人で佇みつつ

暗闇の中で答えを手探るのだ
2007/9/12(水) 16:47


▽第1期:名前の無い詩 76
縋る目 屈む脚
尚飾る城の装飾
翳す手 潜る身
更に色付く木々
永らく還らぬ子の家へ
逃げる目 屈む夜
尚捜すその背
翳す剣 潜る船
更に深く縁取る
暫く見えぬ親の巣へ
2007/9/12(水) 16:47


▽第1期:名前の無い詩 77
繊月を裂いてその紐で
兎を括る

冠雪を綯ってその紐で
羊を括る

さぁ、生贄を祭壇に
聖なる短刀を突き立てる感触を
色彩が二色だけを浮き上がらせて
罪滅ぼしは罪重ね
罰のがれは罰嵩み
2007/9/12(水) 16:48


▽第1期:名前の無い詩 78
惑いの森の主の言伝
迷いの海の主の言伝
川巡りてすれ違い
せせらぎはせせら笑う

離縁の誓約の紙
証の署名の筆
空行き交いてすれ違い
漫ろは虚ろに移ろう
2007/9/12(水) 16:48


▽第1期:名前の無い詩 79
霧を帯びて舞うまでに
下弦の月を分けましょう
暗きの一点 唯一の灯り

藁を葺いて纏うまえに
上弦の月を裂きましょう
闇よりの使者 使者にして相対者

弓を引いて
的は天
2007/9/12(水) 16:48


▽第1期:名前の無い詩 80
霞が如く散り逝けと
其れは風に詩を乗せ
遠く果てた者たちを
更に踊らす鎖を張る

抗わぬまま従いゆく
玩具は軋り動きだす
痛みなど無いのだと
無表情にして告げる
2007/9/12(水) 16:49
2011/12/8(木) 01:23
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