恋しくて、恋しくて
我を忘れていましたのです きっと




わたしは歩いていました
ただただ歩いていました

道にはなにもありませんでした
なにも見えませんでした
光さえ感じられませんでした
わたしはめくらだったでしょうか? 思い出せませんのです


ぽつりぽつり歩いていきますと
よくわからない影のゆらめきを感じました

蜃気楼だったでしょうか
陽炎だったような気もいたします
とにかく、影がゆらいだのです


わたしは特に気にもせず
ゆらゆら歩きました
ぐんぐん歩きました

ですが、影はついてくるのです
ゆらゆらひっそり貼りついて

わたしが歩くのに疲れて
そっと腰を休めても
先をぐんぐん行ってしまったりはせず
ぴったりとくっついて離れませんのです

わたしが声をかけると
そのたびゆらりゆらりとゆれました
ちょうど、葉が風になでられるように
それをわたしは好ましく感じました

影はわたしの家族であり友達であり恋人であったのです きっと




わたしは影を可愛がっていました

まるで子猫を可愛がるように
自分の子供を可愛がるように

歩くのも忘れるかのように
可愛がって可愛がって可愛がっていましたのです


ですが、ある日突然
影の姿を見つけられなくなりました
影はどこへ消えたのでしょう

わたしは未だ見つけていません
こうしている間にも
わたしは影を探して目をうろつかせているのです

はやく見つけてまた可愛がってやりたい
そうすることで、わたしは生きていたように思うのです




ふと消えた影を探して
ようやくわたしは歩き始めたのです

どのくらい経ったかわかりません
ですが、足は震えてギシギシを音をたてるほどでした
わたしはそれほどずっと影を可愛がっていたのでした


影はどこへ消えたのでしょう
ものなどなにもない道の中で
どこへ隠れられるというのでしょう

歩いて歩いて
どのくらいか歩いて
影を見るようになりました


ですが、わたしの可愛がっていた影ではなかったようです
わたしは影を探してまた歩きます
その繰り返しです

影はどこへ消えたでしょう




わたしが強く抱きしめた
次の瞬間
ふっと消えてしまったのです
ろうそくの火のように

どこへ消えたのだかわからなくて
ほかのたくさんの影の中を
わたしはふらりふらりさまよいました


影じゃない影は
すべて捨ててやりました
わたしの影が見つかりづらくなるからです

見ては捨て 見ては捨て・・・
幾度繰り返したでしょう


それでも見つからないのです




ねぇ、あなた
わたしの影を知りませんか

きっとどこかでわたしを待っているのです
きっと きっと きっと

どこかにいるはずなのです
わたしのそばにいるはずなのです


どこですか
わたしの影は
どこですか
知っているでしょう
わたしの影を


わたしの影は


どこですかどこですかどこですかどこですかどこですか



あなたの影も
わたしの影とは

ちが う      の   です


   ね ・・・








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