▼計画不自殺
死にたくはないんだ、

だけど一時的に消え去ってしまいたい

そんな風な瞬間の感情で僕は僕を殺し始める

ねぇ死にたくないよ、

そう言う僕を見捨てながら


冷えた地面に横たわり、そう、それは冬の夜に、

無防備な手は痺れて感覚が失くなっていく、それが心地良いような

誰か僕を見つけてくれないかなぁ、誰か助けてくれないかなぁ、

絶対誰か見つけてくれると信じてるからこんなことをするのよと

そんな風に何処かの誰かが、僕にそっくりな誰かが言った気がした

“僕はそんな言い方しない、”

そう思うそれも誰なんだろうと思い出せないまま、そう、寒くなる

いや、寒くは無かった、冷たいとも思わなかった気がする

ただ死が僕を連れ去ってくれそうな不安と安堵の中で横たわる

そしてガチャリと扉に鍵の閉まる音で、僕は見捨てられる


涙だけが熱かった。


それも直ぐに消え去って、そして初めて僕は寒いような気がする、

微かに身じろいで、ドアを叩く

コンコンコンコン

微かに、微かに。

コン、コン、コン、コン

それだけが僕の中で唯一真実であるような

静寂の中、いや、ぽっかりと空いた虚無の中の音、

コン、コン

やがて誰にも気付かれぬまま訪れるのは揺らぎ、

背筋が、自分の中の真っ直ぐの芯が揺らぐ

意識がふらりと揺れる

助けて、助けてくれよ

死ぬつもりなんて無いんだけど、そう、誰にも気付かれぬなら僕は死ぬ筈だ

誰も信用なんか出来なかったと、そう胸を張って何処かへ消え去っただろうな、

ポストの中の命綱、あれをどうか誰か捨てないで。

コンコンコンコンコンコンコン

しつこいぐらいに生に執着する自分を嘲笑ってしまいたいけれど、もう、この手以外動かない、これだけにしか頼れない

死に損なう。いつも助けられてしまう。

そうなるようにと計算して動く何処か無意識の世界の僕が、ふっと笑った気がした。

そして僕は、また誰かに助けられる。


意識が、戻る。


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