▼失われた涙

嗚呼、私の3年間は霧のように掴み所のない影に覆われて

嗚呼、悲しみも寂しさも名残惜しさも何も湧いてこない

私の笑顔は奪われた、気付けば涙だって奪われていた


中学生から高校生になる、というその間の壁は

もっと高くて、もっと強くて、もっとずしりと重いものだと思っていたのに

何故こんなにも低い? 何故、こんなにも脆い?

むしろ僕には壁が見えない、それはハードルにすらならない

何も経験出来ない、何も実感出来ない、何も成長しない

僕はこんなつまらないものを期待していた訳ではないのに

輝かしい未来なんて見えない、その分では壁は確かにあるのかも知れない

永遠に未来を覆い続ける、薄暗い曇り空のような壁が


誰が僕の空をこんな風に塗りたくったのだろう

どうしてこんなにしてしまったんだろう

何か恨みがあったのならば、僕は何度だって頭を下げるのに

だから、輝かしい未来を信じていられたあの頃の僕を帰してください

だけど分かっている、そんな僕は二度と戻らない、二度と開かないドアの向こう側だ


卒業式で泣ける人は、ずっと幸せに、少なくとも楽しくは生きてこられた人だろう

(もしくは、正反対に、学校生活に絶望し続けた人か)私はその分では幸せだけど


卒業式で泣いた人には失礼だろうと思うけど

私にはどうして泣けるのか分からない

でも、周囲では涙を流す人


ああ、あの人は私を馬鹿にしていた人

ああ、あの人は学校に来ないクラスメイトの悪口を言っていた人

ああ、あの人は私の人生を台無しにした人


ねぇ、何故、そんな人が、一体どうして、泣いているんだ

ねぇ、あれから僕はいつまで経ってもぽっかりとした虚無の中で、

そう、泣くのを我慢する必要も嗚咽をこらえる必要も無いぐらいに

何も 何も無いというのに


どうして僕をそうした貴方が泣いているんですか

どうして他人を傷付けた君が泣いているんですか

僕の涙を返してください 貴方達が傷付けた誰かの涙を返してください


学校に来られなくなったクラスメイトのことを悪く言う、

その同じ口で、「私たちのクラスは永遠」だなんて、言わないでください

何人も欠けたクラスのままで、一生、欠けたままでいるつもりですか

何故、感動して涙を流せるんですか

貴方達は私達から、笑顔だけではなく涙も奪ったというのに

幾人かの綺麗な涙の中で、貴方達の涙は汚いです、狡いです

友情は永遠、という言葉に吐き気を覚えるような、

昔はこんな僕じゃ無かったのに、こんなにしてしまったのも貴方達でしょう


一方的な被害妄想だと、言いたければ言えばいい

また、そうしてください、だって貴方達はいつだってそうだった

友達には「一生友達」というくせに、他の人には「死ね」と簡単にナイフを放つ

愚かな人間だったんでしょう、だから貴方達は一生愚かなままでしょう

私は少なくとも、貴方達と同じ意味での愚かではない

それだけは私の胸に少しだけ嬉しい響きだった、


貴方達と同じでは無い、


例え私がそれ以上に愚かだったとしても、


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