▼第六章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」第六章「役割」
アルがフェイトに老王について話している時、レキは一人、本局の食堂に足を運んでいた。
昼食を食べる為でもあり、先に部屋を後にしたワタルを追いかける為でもあった。
両手をポケットに入れ、辺りを見渡す。
すると、遠くの方に一人食事を取っている彼を見つける。
そして、両手をポケットから外に出し、ゆっくりと迫る。
「………」
一瞬、迫り来るレキの瞳を見ると、淡々と食事を続ける。
彼に近づいたレキは、テーブルにもう一つ、食事が盛られたお盆を見つける。
ワタルは、いずれ彼が来ると見て、予め用意していたのだ。
それを見たレキは、黙って椅子に座り、食事を取り始めた。
「どう思う。今回の件…」
食事を取りながら、目を合わす事無く、ただ問い掛ける。
「調査の事か?それとも、老王についてかな?」
「……両方。」
質問を質問で返し、それに応えるレキ。
すると、食事を一旦止め、手元にあるコーヒーカップを手に取る。
「今回の任務は、老王に関した調査。老王の心臓が存在するか調べるものだ。何も無ければ、それで良し。捜索部が再び動くだけさ。だから、別に今回は楽な任務だ。そう固くなる必要は無い。」
そう言い、コーヒーを一口流し込むと、再び食事を取り始めるワタル。
それを聞き、食事を取りながら話すレキ。
「なら、なんでそんな簡単な任務、あんたは引き受けた?それに、どうして俺を誘ったんだ?」
レキには理解出来なかった。
そこまで言うのなら、何故自分を誘ったのか?他の局員を使えば良いというのに。
老王について知らずとも、調査としては十分だと思った。
そして彼にとって、アルは倒すべき相手であり、上司でもある。
「……役割だ。」
「役割?」
ワタルから出た言葉は、”役割”。
レキには、それはどんな意味なのか分からなかった。
「レキ、俺らは魔界に生まれた者。魔界の王として君臨する彼に協力するのは、そこに生まれたものとして当然だと思うが?」
「それはそうだけど…でも!」
「でも、というのは、ただお前が彼との闘争心があるだけだろ?それは、今回の作戦に関係しない。それに、彼を誘ったのはお前だろ?」
鋭い目付きで、強い口調で話すと皿が盛られたお盆を持って、その場を後にしようとする。
「それは、あんたが!」
必死に反論しようとするレキ。
「忙しい俺のことを少しは察して欲しいね。それに…」
「死神は、殺し、戦いを生に換えているだけで、それ以外が出来ないわけではない…」
最後にそう呟くと、その場を去っていった。
レキには、彼が最後に言った言葉が重く突き刺さった。
死神は、殺し、戦いを生に換えているだけで、それ以外が出来ないわけではない…
「言ってくれるじゃねぇか…」
ゼスト隊に所属していた頃の自分がふと、脳裏に蘇る。
自分にとって、まだ思い出したくない過去でもあった。
そんな言葉を言い残したワタルに、少しばかり殺意を覚えたレキだった。
「そろそろ奴に話すか、死神が存在する本当の、理由を…」
そして、少しして慌ててアルとフェイトが食堂に現れた。
レキは既にお盆を片付け、食堂を去っていた。
二人とも、辺りを見渡すと食事を取っているヘレンを見つける。
だが、それともう一人ヘレンと共に食事をしている女性が居た。
オレンジ色のロングヘアー。アルとフェイトには、それが誰なのかすぐ分かった。
「ぁ、フェイトさん。それに、アル=ヴァン三佐。」
オレンジ色の髪をした女性は、後から迫る足音を聞いて振り返って話す。
「ティアナもお昼?」
「はい。先ほど、偶然ヘレン三尉とお逢いしまして。」
すると、フェイトがヘレンの方に顔を向けると、お互い笑顔で軽く会釈する。
「どうも、フェイトさん。お昼、一緒に食べませんか?もちろん…アルも!」
フェイトに対して、笑顔で勧めるヘレンだが、アルに対しては、少しばかり怒っているようだ。
「いや、悪い。色々と…あってな…色々、と…」
説明しようとするが、先ほどの出来事を説明するには、あまりにも恥ずかしかった。
それを見るフェイトは、苦笑いする。
「うん。本当に色々あったんだよヘレン。だから…許してあげて?」
苦笑いしながら、アルをフォローするフェイト。
それを聞いているアルは、情けない気持ちだった。
「ヘレン三尉、まぁ皆さんと食べましょうよ?」
「むー、まぁティアナと一緒に食べれたから良いけどね。」
少し悲しそうな表情で、許したヘレンだがアルを見つめ続けながら話していた。
軽くため息をしたアルは、フェイトと共に椅子に座って昼食を注文した。
昼食がテーブルに運ばれ、四人で食事を取る。
すると、ふとヘレンが食事を取りながら、口を開く。
「そう言えば、アルが会った面会者って誰だったの?」
アルは、手を止めた。ヒカリと面会した事を話していいのか?
隣には、ティアナも居る。どうするか迷った。
すると、ふと視線を感じる。視線の方の目を向けると、フェイトと眼が合う。
そして、フェイトは軽く目を合わせながら頷く。
それを見たアルは、安堵したのか口を開いた。
「ヒカリと会った。」
ヒカリの名を聞いて、ヘレンは目を丸くした。
「えぇ、ヒカリさんと!?」
驚くヘレンだが、二人を見ているティアナには、誰の事かさっぱり。
「(フェイトさん。ヒカリという人、ご存知ですか?)」
直接聞くのはどうかと思い、念話で訪ねるティアナ。
「(えっと、アルやヘレンの故郷に居るちょっと偉い人かな?)」
「で、あの人とどんな事を話したんですか?」
目を輝かせて、詳細を訪ねるヘレン。
その目に、少し戸惑いながらも口を開く。
「調査の依頼でね、フェイトと死神達を連れ、後日調査に向うんだ。ティアナ、悪いな。フェイトを借りるぞ。」
「ぁ、いえ。私はまだ研修とか色々ありますし…」
その後、四人は食事を済ませ解散する。
数日後、任務開始日を迎えた。
アルは一人、ミーティングルームへと向っていた。
そして、ミーティングルームの扉の前に立ち、扉が開く。
すると、部屋の中には、アルを迎える三人の姿が。
それを見たアルは、ふと微笑む。
「さぁ、行こうか。」
三人は大きく頷き、転送ポートへと向っていった。
次回予告
「エイムズ」
あとがき
どうも、こんばんわ。
毎度、SSをお読みに頂いて有難う御座います。
今回は、まぁあまりぱっとしませんでしたね。
最後は、展開がなんとも言えませんし。
でも、次回からちょっとシリアス編に突入かなと思います。
次回は、いよいよエイムズに行くのですが、調査ですからね。
あまり戦闘はないかと思いますww
まぁ、今回はこんな感じで勘弁して下さい〜 (´ω`;)
では、また次回をお楽しみ下さい〜