▼第七章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」


第七章「エイムズ」


─────エイムズ──


浜辺で一人の女性が地平線を眺めていた。

彼女は黙って、地平線を見つめ続けている。

だが、ふと突然我に帰ったかのように、辺りを見渡す。

「……誰かが、来た?」

彼女がそう呟いた時、遠い場所でアル=ヴァン達がエイムズに舞い降りる。

既にバリアジャケットを身に纏い、デバイスを片手に持って着地する。

「此処が、エイムズ。」

アルがそう呟くと皆、辺りを見渡す。

小さな世界とは言え、それなりの広さを感じることが出来る。

辺りは山々があり、自然もあり、しっかりとした大地もあり、空は綺麗な青空。

人、生物が居ないというのが不思議と思わせる光景。

「内容を確認します。今回の調査任務は、老王の心臓の発見、そしてその確保。形状は不明。そして、何処かで保存されているのか、それとも誰かが所持しているのか、それについても不明である。しかし、全ての老王は微弱な魔力を放っています。よって、微弱な魔力反応があれば老王の可能性があると思われます。ですが、いくら人や生き物が居ない世界とは言え、油断は禁物です。いつ、何が起こるか分かりません。調査、捜索は慎重にお願いします。」

「「「了解。」」」

ワタルが内容や、調査について簡単に説明する。

そして、レキがタバコを吸いながらアルとフェイトに話しかける。

「調査は二人一組で行います。自分は、兄貴と。アルさんはフェイト執務官とお願いします。」

「ああ、分かった。」

アルが応答すると、二人は軽く頭を下げると南の方角へ飛んでいった。

黒の曲線を描きながら、消えていく二人を見つめる二人。

二人が消えると、アルはモニターを5ほど展開し、魔力反応を探す。

「現在、此処周辺には魔力反応はない。まずは、此処から移動しよう。」

「うん。」

フェイトが頷くと、アルは全てのモニターを閉じ二人でその場から歩き出した。

一方、ペア組んで上空を飛行している二人は、森林地帯の中に着地が出来そうな場所を見つけた為、振り返り飛行しながらレキとアイコンタクトを取って、ゆっくりと地上に降りていた。

着地し、レキは右手で大鎌のセンスフォルムの絶影を持ち、肩に乗せて辺りを見渡す。

辺りは、森林の中は若干暗い。樹木の周りには、植物が絡まっている。

見る限りでは、生き物が住んでいてもおかしくない環境。

レキは、その不思議で少し不気味な環境に、何か老王と関係するかと考えた。

だが、そんな事はあくまで憶測の世界。何か違う理由があるのだろうと、その考えを頭から捨てた。

「魔力反応、一切なし。レキ、移動するぞ。」

左手でレキ同様に大鎌の絶影を肩に乗せながら、残りの右手でモニターを叩いて魔力反応を探すワタル。

レキに話しかけると、モニターを全てを閉じて歩き始め、レキもそれに続く。

道無き道を進み、森林地帯を進んでいく二人。

首は動かさず、眼動かし、視界の全てに注意して直進する。

後ろのレキは、ワタルに代わってモニターを展開し魔力反応、熱源反応を測っている。

「…………」

だが、その森林地帯の中で二人を見つめる者が居た。


─────エイムズ 草原地帯──


「んー、未だ反応が無し、か。」

二人並んで草原地帯を歩き、草原のど真ん中で立ち止まる。

「中々見つからないね。」

アルが展開しているモニターを彼の肩に寄り添って見つめる。

そんなフェイトを横目で見て、頭を軽く掻きながら口を開く。

「まぁ、魔力、熱源反応だけだからな。何か、遺跡みたいなところがあれば良いんだがな…」

と、呟いて二人同時にある物を見つめた。

そこに映る物は、半径10m程の遺跡の跡地だった。

アルはモニターを全て閉じ、フェイトの肩に手を伸ばして跡地に足を運ぶ。

跡地の中央に到着すると、手を離して腕を組んで辺りを見渡す。

フェイトは、ゆっくりと歩き回り、折れた柱を軽く触れて柱に刻まれている文字を見つめる。

「アル。これって、ゲヘナの文字?」

首を傾げて、アルを呼ぶ。

アルは、辺りを見渡しながらフェイトのもとに歩み寄って文字を見つめる。

「うん。ゲヘナの言葉は、3000年前と変わらないから読める。うーん、だけど文字が若干崩れているな。もっと拡大すれば、分かると思うけど…」

アルがそう呟くと、フェイトがモニターを展開し文字を拡大しようとした時。

「王は全知全能の力を持ち、王は天に落ちた。王は五つの神器を生み、王は天に落ちた。」

「「ッ!?」」

背後に知らない者の声が聞こえ、二人は驚いた表情で振り返る。

そこには本を開らき、腰辺りまで伸ばした銀色の髪をした青年の姿があった。

「貴様、何者だ?」

アルは、腰に納刀されたエクスキューショナーに手に掛け、フェイトもバルディッシュを構える。

「現在、この世界は時空管理局による非常事態区域に指定されています。」

「知っていますよ。私は、伝えにきたのです。」

フェイトが青年に忠告すると、青年は平然とした表情で本を閉じ、座っていた横に置くとすっと立ち上がって話し、アルの方を見つめた。

そして、こう呟いた。

「魔王アル=ヴァン・ガノン。あなたに…」

「「ッ!?」」

二人は、度肝を抜かれた。

何故、アルの名を知り、さらに彼が魔王である事を知っているのか。

アルは、エクスキューショナーを抜いて構える。それに、青年から発せられる異臭。

それは、魔族しか嗅ぎ分けられない臭い。フェイトには、そんな異臭は感じられない。

アルが嗅ぎ分けられる異臭。それは、魔界に生息する悪魔の臭いだった。

だが、青年は人間の姿。悪魔は、様々な形状をしている。その中の形状の一つ、人型とアルは判断した。

それを考えれば、自分が魔王であると知っていてもおかしくない。そう思い、彼から驚きは消え去った。

「悪魔の貴様が、何故魔界ではなくエイムズに居る。魔界からどうやって此処に来た?」

眼を細め、青年に話しかけて構えるアル。

それを聞いた青年は、跡地に置いた本を手に取る。

「その本は?」

フェイトも眼を細め、バルディッシュを青年に向けて問う。

「これですか?これは、記録書です。」

そう呟くと、持っていた本をフェイトに向って投げる。

突然こちらに投げられ、フェイトはバルディッシュを持って身構えるが、それをアルが片手で受け止める。

アルは、エクスキューショナーを地面に突き刺し、両手で本を開く。

「老王に関しての記録書…貴様、老王について何処まで知っている。それに、貴様は俺に伝えに来たと言ったな。何を伝えにきた?」

顔を本に向けているが、瞳が青年の姿に向けて話す。

「まず、身柄を拘束させて頂きます。話は、その後に聞きます。」

フェイトが低い声で眼を細めて話すと、青年にバインドを胴体と腕を合わせて掛ける。

青年は驚いた表情を浮かべ、バインドを解除しようと身体を動かす。だが、頑丈なバインドの為破壊する事が容易ではない。

「無駄です。この魔法は、力では破壊できません。」

「そのようですね。仕方ありません…」

すると、青年がため息をすると彼の周辺に小さな青い光が集まり始める。

そして、彼は軽く微笑みながら光に包まれていく。

「王様、またいずれ…」

軽く頭を下げると、光が完全に彼を包み込む。

「ぉ、おい!」

アルが慌てて青年を呼ぶが、その時には青年は光と共に此処から消えていた。

「(転移魔法?私にバインドを掛けられた状態で、そんな事が?)」

少し驚いた表情で、彼が居た場所を見つめるフェイト。

バインドは、指定空間内の物体をその場に固定する魔法。転移魔法は、バインドによって発動はできない。

それとも、幻術?だが、青年はアルに向って持っていた本を投げ渡した。幻術魔法でそんな事が可能なのか?

もしかしたら、そんな事が可能な魔法が存在する。アルは、青年を悪魔と呼んだ。という事は、ゲヘナ式?

「逃げられたな。」

気に食わないような表情で、フェイトに話しかける。

そして、本を閉じて片手で持ち、地面に突き刺さっていたエクスキューショナーをもう片方の手で取り、納刀する。

「追えるかな?」

フェイトが若干冗談半分で、笑みを浮かべながらアルに訊ねる。

「んー無理だな。あれは、転移魔法に近いと思うから追跡は無理だ。」

と、アルも軽く笑みを浮かべながら応える。

「ワタル達から報告があるまで、此処の調査をしよう。」

「うん。そうだね。」

二人は、それぞれの考えと思いを抱き、遺跡跡地の調査を続行した。


─────エイムズ 森林地帯──


その頃二人は、森林の中を歩いていた。

「そろそろ、森を抜けるよ。海がある。」

モニターを見つめながら、淡々と兄に報告するレキ。

だが、ワタルからは一切返答がない。その異変に、頭を傾げるレキ。

「おい、聞いてるのか?」

少し強い言い方で、ワタルに話す。

その時、ワタルの身体がピタッと止まる。モニターを見つめながら歩いていた為、立ち止まったワタルの背中にふづかる。

慌てて、その場から退く。そして、辺りを見渡す。

続いてモニターを見つめても、熱源、魔力反応はない。だが、今さらでもあるが、気配を察知した。

すると、再びワタルは歩き始める。突然歩き始め、慌てて追う。

「(おい、誰か居るのか?)」

ワタルに向って念話を送るが、ワタルから返答はない。

さすがに諦めたりのか、ため息をして黙る事にしたレキ。

その時、ワタルは地面に転がっていた小石をつま先ですくい上げ、高速で身体を一回転させ足で小石を蹴り飛ばす。

小石は、彼らから4時方向の樹木に向って飛んでいった。

だが、聞こえたのは小石が樹木に当たった乾いた音だった。

「……外したか。レキ。」

少し残念そうに話すワタル。すかさず、レキの名を呼ぶ。

「熱源。海に向ってる。追う?」

モニターに映し出されたのは、熱源反応を示したものとその行方。

レキは、嬉しそうな笑みを浮かべながら訊ねる。

「当たり前だ。追うぞ!」

ワタルも笑みを浮かべ、二人は急いで森を駆け抜ける。

森を駆け抜けると、一面に砂浜と綺麗な水色と青色した海が広がる。

すると、二人が眼にしたのは、銀色の髪をした青年と金髪の女性の姿だった。二人とも腰辺りまでの髪をしている。

青年は、彼女を守ろうと彼女の前に出て、左腕を彼女の前に出している。

「人?いや、一匹変なのがいるな…」

ワタル達も一種の魔族であり、人間でもある。

だが、魔族として悪魔の臭いは嗅ぎ分ける事が出来る。二人は、その臭いを森林の中でも嗅いでいた。

そして、その臭いのもとがあの銀髪の青年と分かった時、二人は絶影を構えた。

「レイル。」

金髪の女性は、青年をレイルと呼び心配そうな表情で彼に寄り添う。

「大丈夫です。任せて下さい。」

青年レイルは、鋭い表情で二人を見つめる。

彼女は守る。必ず。

彼はそう、自分に言い聞かせた…



次回予告

「真実の断片」




あとがき

ご愛読有難う御座います。
ついに、謎の新キャラが登場です。
新キャラと微妙な新キャラの死神兄弟が対峙。
どうなるのやら…( -ω-)
次回は、死神についての説明が多くなるかもしれません。
StSレキ編にて、死神について少しでも読者の皆様に認識して貰う為です。
アルとフェイトはどうなるのでしょうかね。
そろそろシリアスな感じなので、余計二人が気になってしまいます。書いているのは自分ですがw
しかし、新キャラ、キーパーソンみたいのが死神と対峙しているので、次回死神達の方で話が進みそうですね。
では、次回もお楽しみ下さい〜

決闘(デュエル)したいなぁ…( -ω-)
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