▼第八章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」


まず、皆さんに死神というものと、死神のレキとワタルについて認識してもらたいので、SSが始まる前にこれを読んで貰えると助かります。
死神。人間の一種、魔族の中から生まれる珍しい人種。
珍しいからとは言え、何か特殊なものがあるのかは不明。
身体の構造も人間や魔族と変わらない。だが、彼らは心のリミッターを持ち
戦いになると、戦いに喜び、生に換え、それを糧として生きていると考えられている。
その為、管理局の上層部は死神のワタルとレキがそれぞれの部隊に所属するまでは、暗殺や極秘任務を与え続けていた。
そして、今生きる数少ない死神の一人、レキ。
彼は、その後ゼスト隊に所属。そこでクイント・ナカジマと出会い、彼女に片思いする。
だが、ゼスト隊は「戦闘機人事件」によって全滅、メガーヌとゼストと共に捕獲されてしまう。
魔族の捕獲、そして希少種の死神。スカリエッティはレキの身体に魅力を感じ、研究の結果戦闘機人の身体と化してしまった。
レキは、ワタルの必死の捜索によって救出されるが、彼は大切な仲間を失い、心には深い傷が出来ていた。
「J,S事件」の途中から、機動六課へ配属され事件解決の為、なのは達とは距離を持ち孤独に居た。
それでも、事件解決によって彼は過去への清算を行い、心の傷は癒えた。
だが、彼の心の傷は消えることは無く、今も彼は苦しんでいる。
そして、レキの実の兄、ワタル。
彼は、新暦72年辺りにて、ギンガと共に108部隊に入隊。
だが、新暦73年に除隊。しかし、新暦75年に再入隊。
ギンガに片想いを抱きなかせら、「J,S事件」、「戦闘機人事件」の調査を密かに行う。
レキを影から支え、時にはギンガさんに思いを寄せ、そして時には自ら戦いに出るときも。
「J,S事件」が解決され、彼の役目は終え、再度陸士108部隊を除隊しミッドチルダから去った。
各世界を転々とし、穏やかな人生を送っていた。だが、「J,S事件」から数ヵ月後、再びミッドチルダに戻り
今度は、魔界の為に戦うとは思ってもみなかっただろう…

以上、死神の簡単な説明と、レキとワタルの簡単な説明でした。

少しでも認識して貰えたら助かります。

では、これらの事を頭に入れ、第八章へとお進み下さい。

長い前振りで、申し訳御座いませんでした。

では、どうぞ。



第八章「真実の断片」


─────未登録世界エイムズ 浜辺──


そこには、二人の死神と謎の青年と女性。二人は、大鎌を構え僅かばかりか微笑んでいた。

そして、青年は二人を見つめ、眼を細める。すると、彼の周りに少しばかりの魔力弾が現れる。

それを見た二人は、お互いを見つめ合いこくりと頷き、ワタルが口を開く。

「何故、悪魔が此処に居る。それに、そこの女性は何者だ?話を聞きたい。」

二人は、手を離して絶影を砂浜に落として、戦う意はない事を示す。

最初は、ワタルも戦う気ではあったが、今回の任務はあくまで調査。必要以上の戦闘は避けたい。

それに、人は住まないこの世界に何故女性が悪魔と共に居るのも興味深かった。

鼻で軽く深呼吸して、心を落ち着かせて相手からの返事を待つ。

「そもそも、貴方は何者なんですか?まずはそこからです。」

眼を細め、二人を見つめながら青年は話す。

だが、至って冷静だった。呼吸を整えている。表情で警戒心を表している。

「ぁ、そうだな。まずは名乗らないとな。俺達は時空管理局局員。未登録世界、エイムズの調査任務で此処に来ている。此処は人や生き物が住まない世界に、君達のような女性と悪魔が何故居るのかという事だ。」

すると、青年は表情を和らげた。そして、魔力弾が消えた。

「レイル?」

女性は、青年レイルの後ろに立ち、心配そうな表情で彼に呼びかける。

「大丈夫です。彼らは、時空管理局という次元世界をまとめて管理する組織の人達です。各世界の文化管理や、災害救助。様々な面で活動しています。決して、悪い事をしなければ、私達に害はないはずです。」

すると、彼女の表情も和らいだ。彼の服を握っていた手も、自然とほどけた。

彼女にとって、最初のワタル達の印象は悪人としか見えなかった。

何故なら、彼らは元々は死を与えるもの、死神。自然にそう見えてしまうのだろう。

「なら、ちゃんと説明した方が良いんじゃない?」

「そうですね。」

そして、レイルは自分達がエイムズに居る理由を話し始めた。

それを二人は、良く耳を澄まして聞く。

「私達は、様々な世界を転々としているものです。理由は、各世界に存在する遺跡の調査と…観光ですかね?」

最後の言葉は頭が捜したような感じがし、レイルは頭を掻いて話す。

だが、彼が話していることはワタルには信用が出来なかった。

彼は200年以上を生きている為、もちろん二人のような各世界を転々として旅行のようなものをしていた頃もあった。

今、自分が居る世界から転移する世界については、予め調査をする。

そこの世界がどのような世界なのか、そして時空管理局がどのように関与しているのか。

それをしっかり調べているのなら、こんな所には普通来ない。というより、此処には来てはならない。

世界を転々としている者として、彼の発言にワタルは違和感を感じた。

さらに、ワタルは彼の発言を振り返る。

各世界に存在する遺跡の調査と観光。という事は、此処エイムズは遺跡がある可能性が高いと考えられる。

そして、その遺跡が老王に関する遺跡という事もあり得る。

ワタルがそう頭の中で様々な事を考えていると、レキに通信が入る。

二人に向って、失礼と言いモニターを展開すると、フェイトの姿が映し出された。

「ぁ、レキ一等空尉。フェイト・T・ハラオウン執務官です。アル=ヴァン三佐と遺跡のようなものを発見。ゲヘナの言葉で書かれているのですが、アル=ヴァン三佐一人では時間が掛かります。お二人も来てもらえませんか?」

その言葉にワタルが驚いて、モニターを覗き込む。

「フェイト執務官。こちらは今、女性と青年を発見。青年の方は悪魔です。銀髪色をして腰辺りまであります。女性の方も、金髪で同じぐらいの長さがありますね。どうしましょう?」

フェイトは、「A,B事件」に関わっている為、悪魔に関しては最低限の知識は持っている。

ワタルが訪ねると、フェイトは驚いた顔をした後、真剣な鋭い目付きで口を開いた。

「二人を一時的に保護する形で確保。その二人を連れて、私達のところに来て下さい。場所のデータを送ります。」

「そう遠くない……了解しました。では、いまから──」

と、レキが通信を切ってモニターを閉じようとしたとき、前方から高速で魔力弾が接近する!

それを、素早くワタルはレキの身体の前に立ち、防御魔法陣を張ってそれを防ぐ。

「くふぅ…!」

レキは飛び込むように前転し、ワタルが落としたセンスフォルスのままの絶影と自分の絶影を手に取り、ワタルに投げ渡す。

前転したせいか、レキの髪やバリアジャケットは砂まみれだ。だが、緊急時の為、それを払っている余裕も無い。

青年が攻撃してきたと言うと、やはり何か知られるとまずい事があるのかと考えられる。

そして、ゆっくりと立ち上がりる。だが、砂がバリフジャケットの中に入っており、気持ち悪い。

嫌々の表情で、ワタルに寄り添って小声で話す。

「どうする?」

彼らと戦うことは避けられないようだが、フェイトの指示によって彼らを連れて行かなければならない。

独断で判断はせず、此処はワタルに相談するのが妥当だ。

「どうするって、フェイト執務官の指示を最優先だ。相手を無力化する!」

そう言い終わったと同時に、青年の魔力弾が襲い掛かる。

二人は、左右に分かれると、魔力弾は森の中へと消えていく。

「レイル!」

女性は、レイルの後ろから怒鳴りつけて再び彼の服にしがみ付く。

戦いをしない彼女には、恐ろしいものだろう。

そして、死神二人の表情。あれは普通の人じゃない。彼女は心の中でそう想った。

「ベタトリーチェは先に行ってください!後で追いかけますから!」

「でも!」

そう話しているときに、ワタルが大鎌を持って迫る。

大きく振りかぶり、レイルを切り裂こうとするが、レイルは女性を抱いて上空へと上昇してそれを回避する。

空中に上ると、レイルは高速で再び森林地帯の中に入っていく。

それを追いかける二人。

姿は見失うが、魔力反応がはっきり分かっていた為、追跡が可能だった。

しばらくすると、魔力反応はある場所に止まる。二人は、その場所へと急ぐ。

その場所で、レイルは女性の身を隠していた。

「あの人達は必ず来ます。ですから、此処で待っていてください。」

「レイルはどうするの!?」

女性は、草むらの中でしゃがみこんでいた。いや、その体勢にさせられていると言うべき。

女性は、心配そんな表情で訪ねる。

「大丈夫です。すぐに追っ払ってきますよ。」

そう言い、軽く頭を下げてその場を後にしたレイル。

その姿を見えなくなるまで見つめていた女性は、恐怖心と彼が帰ってくるという希望を持って彼の帰りを待った。

その頃、二人は森林を走っていると、少しずつ樹木が減っていき、辺りが少し明るい。

走るのをやめ、辺りを見渡す二人。

「見失った?」

ワタルが一言呟くと、モニターを展開し熱源と魔力反応を測る。だが、反応なし。

地面を見つめるレキ。枯れ葉が地面を覆いつくしている。

全体的に眺めると、レキは眼を細めてワタルから2時方向を見つめる。

地面が少し凹んでいる。枯れ葉を踏んで行った形跡かとレキは考えた。

凹んでいるところに足を運んで間近で見つめる。流石に、足型は分からず何処の方向に行ったか判断できない。

軽くため息をし、ワタルのもとに戻ろうした時、樹木の上から葉が擦れて揺れる音が響く。

驚いて頭上を見上げると、鉄のように輝く爪を持ったレイルが現れる。

鉄のような鋭い爪をレキに向って切りかかる。彼を視界に入れながら、後ろへと飛ぶように退く。

無言で絶影を起動し、2ndフォーム両手リボルバーナックルを装備する。

レキが足を動かそうとした時、後方から脚甲を装備したワタルが現れる。

レイルも自分を狙って迫るワタルに標準を向けて、爪を伸ばしてワタルの脚甲と衝突する。

衝突と共に、鈍い音が鳴り響き、両者に身体に痛みが走り顔が歪む。

お互い、離れあう。レイルは右腕を真上に掲げて魔力弾が出現する。

魔力弾は、少しずつ大きくなっていき、魔力を上昇する。

それを見た二人は、レキはさらに後方に交代し、絶影をセンスフォルムへ戻して魔力弾を手の内に作り出す。

そして、ワタルは姿勢を低くし左足を後ろに下がらせ、踵部分からカートリッジロードする。

自分の顔を二周りも大きな魔力弾を作り上げ、右腕を振り下ろして魔力弾をワタルに向けて放つ。

放たれた瞬間、高速で迫る魔力弾に向けて後ろに下げていた左足が回し蹴りで空を切る。

空を切った時、脚甲からソニックブームが現れ魔力弾と衝突しそれを相殺する。

相殺された事によって、魔力弾は爆発を起こし白煙が篭る。

その時、後方に下がっていたレキが手の内に作っていた魔力弾を頭上へ投げ、絶影の刃でそれを砕く。

砕かれた魔力弾は、五つほどの小さな魔力弾へと変貌し、白煙の向こうへと放つ。これらをバイオレット・ペインと称す。

ワタルは、白煙が晴れるまでレキのもとに後退する。

白煙が晴れる。だが、レイルは防御魔法陣を展開しそれを防いでいた。

そして、その魔法陣は、ゲヘナ式であった。

レイルは、防御魔法陣を消し二人に向って嘲笑うかのような笑みを浮かべた。


─────エイムズ 遺跡跡地──


その頃、アル=ヴァンとフェイトは遺跡跡地に居た。

レキとの通信の最後に突然切られた為、不安が募る。

だが、ただ待つわけにはいかない。彼らから連絡があるまで跡地の調査を続行していた。

倒れた柱に座って、レイルに投げ渡された本を黙読していた。

本に記されていたのは、老王の歴史とエイムズとバンプ・クライアントとの関係についてだった。

アルが本を黙読している間、フェイトはモニターを展開し跡地に残されている文字の解析を行っていた。

その時、フェイトに通信が入る。解析を一時中断し、通信モニターを展開する。

「!ユーノ。」

「やぁ、フェイト。調べ物については老王をキーワードとした検索は、色々と引っ掛かった。色々と興味深いものが見つかったよ。」

そして、これからユーノが話す老王と魔界の歴史。それは、真実へのほんの一かけらに過ぎなかった。


次回予告

「迷信」  


あとがき、翌日に
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