▼第九章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第九章「迷信」


─────エイムズ 遺跡跡地──


「やぁ、フェイト。調べ物については老王をキーワードとした検索は、色々と引っ掛かった。色々と興味深いものが見つかったよ。」

モニター越しに、ユーノがフェイトへモニターを多数、展開をする。それには、知らない文字。ゲヘナのものの字と思わせる文章も映される。多数のモニターを展開される中で、画像なども展開されているのも分かる。

モニター展開が終わり、軽くため息を吐くと改めてフェイトに向って口を開く。

「お待たせ。フェイトも知っていると思うけど、約3000年前の魔界。老王、バンプ・クライアントは今の魔界、アルデバランを魔界として作り上げた。その後、彼は全知全能の力を使って様々のものを創り出した。そして、人間との出会い。全ては此処から始まっても過言ではない。バンプ・クライアントは、一人の人間の女性と出会い子供を授かる。その子が魔族として初めて生まれた子。第二代魔王レイム・クライアント。彼が魔王としての名を受け継いでからは、魔界アルデバランに悪魔は急激に減少し、魔族が急激に増えたんだ。そして、気付いてみると首都ゲヘナからは悪魔は一匹も居なくなった。今現在、悪魔達が首都ゲヘナに攻め、魔族との紛争はもともとは自分達の居場所を取り戻す為なんだ。だけど、今の魔界最高責任者のヒカリ・グラリティやアルを始めとする者達は、はるか昔の事なんか知らない。その為、永遠と紛争が繰り返されるんだ。どちらかが滅びるまでね…」

話を聞き、少し俯いて情報の整理をする。アルから知ったのは、ユーノが話したことではなかった。彼が話したとおり、はるか昔の事なんか知らないアルが自分に教えることなんて不可能だ。

アルは、本当に知らないのだろうか?もしかしたら、決して話してはいけないこともあるのでしないか。それは無いと考えても、騎士ヒカリの事もある。彼女なら、何か知っているのではないか。様々な考えが頭の中で、構築されていく。

だが、あの時アルが話したことはアルが知る全てだと信じたい。だが、ユーノが無限書庫で調べ上げた事に資料の数々、魔王であるアルが魔界や老王についてそれだけしか知らないというのも、それはそれで怪しいものを感じる。

「魔界については、ざっとこんな感じにして、本題の老王の話に入ろう。バンプ・クライアントは、全知全能の力を五つの神器に変え、後世に受け継がせた。それが、老王。神器と言っても、神のような絶大の力が手に入るわけではない。それは、フェイトやアル本人が分かってるよね。それでも老王の心臓についてだけど、五つの神器。老王として書かれた所が一つもないんだ。」

『王は全知全能の力を持ち、王は天に落ちた。王は五つの神器を生み、王は天に落ちた。』先ほど出現した謎の青年が話していた事が、重なる。アルが知る限り、老王は右腕、左腕、右足、左足、眼、そして心臓である。

だが、ユーノが聞いたことを重なり合うと、心臓だけが神器として呼ばれていない事が分かる。もしかすると、老王の心臓は老王としてでは無く、別の役割を持った物なのではないか。フェイトは、そう憶測した。だが、そんな数少ない情報を集めただけの考えなど、当てになら無い。

「そして、エイムズの事なんだけど。此処、資料によるとバンプ・クライアントの生まれ故郷となってる。3000年前は、此処には大量の悪魔が生息していたけど、バンプ・クライアントが魔界アルデバランに移住する際、此処の悪魔の全てが彼に賛同し、アルデバランに移住したそうだ。大量の悪魔を転送するなんて、かなりの魔力。いや、そんな事まず3000年前の事を考えれば不可能だ。」

現在の魔法と古代三千年前の魔法と比べ、資料の記録を完全否定した。だが、彼には全知全能の力を持っている事を考えれば、何らかの方法で可能なのだろうか、という推測を立てる。

そして、モニターにゲヘナの文字で書かれた文章が映し出される。そんな文章を見せられても、フェイトには全く理解できない為、首を傾げる。

理解出来ぬまま、文章が映されていたモニターは消され、再びユーノが口を開く。

「彼は、342歳で自然死。だけど、彼は死んだ事で五つの老王を残した。老王は二代目とその部下が大事に保管したらしい。だけど、それ以降の事は記されていない。その後、老王はどうなったのか。そして、二代目と老王の関係も。ごめん、僕ができるのはこれぐらいだ。」

「ううん。ありがとう、色々と参考になったよユーノ。」

三千年前から現在までなら、記録は大量にあってもおかしくないだろうと思ったユーノだが、予想は悉く砕かれる。あまりにも資料が少なかったのだ。検索魔法の結果、見つかった資料は二、三冊ほどしか無かったのだ。

唖然した。これしかないなんて。だが、それほど後世に伝えてはならないものが、老王にはあるのかもしれないという考えも生まれた。

ため息をするユーノ。だが少し笑顔が見られた。相変わらずだな、というフェイトへの想いだろう。アルの事に関わると、フェイトは熱心になって調べ物をする。だが、そんなフェイトだがアルにはそんな事は言わない。そして、そのアルもフェイトがそんな事をしているとは、思ってもいなかった。この任務が始まる数日前までは…

「じゃあ、また何かあれば言ってくれ。」

うん、と微笑みながら頷き、モニターが閉じられる。

「ユーノから、何か分かったのか?」

瓦礫の上に座り、謎の青年レイルから受け取った本を閉じ、片手でそれを持つとフェイトの元に歩み寄る。

ユーノとの話し声は聞こえていたが、詳しい事は聞こえなかった。あの出来事で、ユーノに無限書庫で調べるよう頼んだと予想が出来ていた。その為、少し期待を膨らませている。

「アルは、あの時話してくれた事以外に、何か知ってる?」

期待をしていたのに、突然質問された為ふと、動きが止まる。彼女は、何故そんな事を聞くのか分からなかった。

少しすると、口を開く。

「どうして、そんな事を?」

質問を質問で返した。彼にとっては、当然の選択だと思われる。あの時、自分が話した事が彼女は信じられないのか、それとも何かあるというのか。まずは、理由が知りたった。

「ユーノから、老王について調べて貰ったの。」

(やはりな──)

フェイトから出た言葉は、予想通りのものだった。だが、はやてから聞いた事が本当なら、突然の事なのかもしれないと考えた。決して、疑っているわけではないが…

心の中でそう呟くと、さらに話し続ける。

「検索結果を教えて貰って、今回の件に直接結びつくものはあまり無かったけど、色々分かったの。魔界、バンプ・クライアントの事とか…」

「そうか、だが俺はあの時話したこと意外、何も知らない。それを知ったのは騎士ヒカリからだ。彼女なら、何か知っているのかもしれない。」

( ぇ?)

フェイトの心の中で、自然と呟いた。本当に知らないのかどうかとして、アルなら少し話してくれるのかと思っていたからだ。だが、彼から出たのは騎士ヒカリ。アルから聞き出そうとした自分に罪悪感を感じた…

だが、アルが話したことは本当だった。彼は幼い時に、魔王の後継ぎとして騎士団に入った。そして、魔王になってからも、教育、勉学などの教養は全て当時、秘書を担当していた騎士ヒカリだったのだ。

その為、自分が知らない事は騎士ヒカリが知っていると考えられる。

「そう。ごめんね、変に質問しちゃって。」

少し俯いて、申し訳無さそうに話す。

「気にするな、魔王だからもっと何か知っていると思ったんだろ?まぁ、しょうがいさ。」

気にする様子は見せず、責める事はしなかった。その為、少し元気になったのか、フェイトの表情が少し晴れる。

すると、突然二人に通信が入る。二人は少し慌てながらモニターを開く。

「失礼します。レキ一等空尉です。先ほどの青年と女性は、逃してしまいました。申し訳ありません…」

通信はレキからのだった。悔しそうな表情を浮かべながらな頭を下げる。一体、彼らとどのような戦闘を繰り広げたか気になるところだ。

「ワタルは?」

アルが心配そうにレキに訪ねる。すると、レキの隣にワタルが歩みよって画面左半分に現れる。顔には複数の傷が多く見られる。そして、傷もすり傷とは違い痛々しい。

「あのレイルという悪魔、中々できます。そして、金髪の女性……あれは何かありますよ。戦闘中だったとは言え、自分の背後から頭を撃ち抜かれましたからね。あの時の彼女の表情が恐ろしい…」

ワタルの話を聞いたフェイトは、意味不明な事を話され理解不能のような顔をしている。無理も無い。頭を撃ち抜かれました、と平然と言われて驚かない人は居ない。彼の身体について、知っているアル達は焦りの一つも見せない。

死神には、一人一人に特性が備わっている。レキには、血液を炎に変える力。そして、ワタルはリンカーコアが尽きるまで不死の力を持っている。だが、ワタルに関しては、リンカーコアの機能が止まれば、不死ではなくなってしまう。

「そうか、しょうがない。合流してくれ。」

「あの、フェイト執務官。大丈夫ですか?」

心配そうな表情でフェイトに訪ねるレキ。まだ、驚きが隠せないようだ。

「うん。大丈夫。ありがとう。」

そう言い、少し強引に通信を切ってしまった。そして、軽くため息を吐く。ギンガから多少、彼については話を聞いた事があるが、流石に驚いてしまう。

この世に、死者を蘇らせる事はできないが、不死というものが存在するとは知らなかった。ただ、ワタルの顔の奥に見える不気味な表情が、プレシアと重なる。

そして、落ち着いたのか瓦礫の上に腰掛けた。二人が此処に来るまで…


─────エイムズ 森林地帯──


二人は、通信を終え地面に腰を降ろしていた。

戦闘で魔力消費が激しい。レキは魔力ではなく、体力的に疲れているようだが、ワタルは疲れた表情は一切見せず、自分の頭を魔力弾で撃ちぬいた金髪の女性の事にも頭が一杯だっとた。

油断なんてしていなかった。それなのに、後ろから。それに、その時まで彼女はレイルの後ろに怯えていた。それなのに、あの時は別人になったかのように魔力弾を放った。そう、魔法が使えるのにも驚いた。

「兄貴?」

深く俯いて考えていたワタルを心配そうに話しかけ、肩を優しく叩くレキ。

肩を叩かれ、今は考えても駄目だと分かったワタルは、ゆっくりと立ち上がる。それに続いてレキも立ち上がる。

「帰ってから、色々と忙しくなるぞ。良いな?」

真剣な眼差しで、話す。レキは分かりきっている様な表情で微笑みながら頷いた。

二人は飛翔魔法で大空を飛び、二人が待つ遺跡跡に向っていった。そして、逃走した今だ謎に包まれている二人は、森林の奥深い場所から彼らが大空を舞う姿を見つめ続けていた。



次回予告

「帰還」




あとがき

どうも、二週間ぶりです。お久しぶりです!
二週間も間をあけてごめんなさいです!
こうやって、またご愛読してくださって有難う御座います。
今回は、若干短めでした。二週間もあったのにも関わらず、この量で申し割れないです。・゚・(ノД`)・゚・。
九月に入れば、急がしくなるものです。毎日SSを更新している人は凄いですよね。時間をどうしているのかきになるところですww
と、まぁ、今回はユーノとフェイトがメインというかたちになりました。
次回?それとも二つ後?に関しては、二人の会話で分からなかった死神とレイルとの戦闘を描きたいなー
とまぁ、ゆっくりではありますが、着々と話は進んでます。次回はもっと長く書けるかな…不安ですw
では、また次回をお楽しみ下さい!


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