▼第十章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第十章「帰還」


「これは、凄いですね。」

死神二人は、アルとフェイトが待つ遺跡跡に到着し、遺跡を間近に眼にして驚く。早速、フェイトが気になっていた文字を眼にした。

古い、そして字が削れて読めないモノが多く、単語が並べられているように見える。アルデバラン、悪魔、など。そして、何よりもレキが見つけた「死神」という単語。三千年前にも、死神というモノが存在した可能性が考えられる。

結局、多少読めるものはあったが、文章として解釈はできなかった。振り返り、二人に向って首を横に振った。

「そうか、しかたない。これらのものを写真に収めて、本局で解析する必要がある。一旦、引き上げよう。あの二人の事もあるからな…」

今できることは少ない自分達に、アルが話したするべき事は正しかった。それに、反対する必要は無いと思い、賛同するのが妥当だと思った。

フェイトは、バリアジャケットを解除し、制服姿に戻るとポケットから小型カメラを取り出して、それを写真に収める。

撮影が終わるまで、三人も騎士甲冑を解く。と、ワタルがアルが片手で持っている本を見る。

「アル=ヴァン三佐。その、本は?」

本について聞かれ、ふと両手で本で持って見つめて口を開いた。

「銀髪悪魔のレイルという奴から渡された物だ。そいつは、これを渡して此処から消えた。フェイトのバインドで拘束されながらね。」

(バイントで拘束されている状態で?)

ワタルは驚いた。バインドとは、対象のものをその場に固定される拘束魔法。それを受けながら、消える、転移魔法なんて発動できないはず。

だが、確かにアルはそう言った。此処から消えた、と。

そして、再びわたるの長年蓄えられてきた知識と経験が頭の中で渦巻き始めた。何か、似たような経験は無いか、バインドへの知識を記憶の中から引きずり出す。だが、そんな事は自分の記憶には無かった。

「なるほど、あの悪魔は危険です。悪魔にしては最高ランクかと。」

認めなかった。悪魔如きにこの自分が苦戦を強いられるとは思わなかった。数多くの人間、魔族、そして悪魔を殺し、狩り続けてきたワタルには、これほどの屈辱は無い。敗北より屈辱的だ…

一方、本を両手で持ち、それを見つめながら聞いていたアルの考えは違った。悪魔の最高ランク、それはあんなモノではないと。頂点に立つモノとすれば、アルの頭の中ではあの人物の事しか考えられなかった。

その人物の名は、バンプ・クライアント。魔族を生み出した悪魔。そう、間違ってはいけないのは彼は決して魔族ではない。悪魔の人型として記録されている。やはり、全知全能という伝説とされているせいか、アルの中ではやはり彼しか考えられないのだ。

そして、写真を撮り終えたフェイトが戻ってくる。

「じゃあ、帰ろうか?」

「そうだな。ワタル、二人についてはお前とレキに任せる。何か分かり次第、報告を頼む。」

「了解しました。」

四人とも疲れた表情で、軽くため息を吐く。アルの魔法陣を展開し、エクスキューショナーの返答と共に本局へと帰還した。


─────本局 廊下──


「お疲れ様、アル。」

本局に帰還した後、死神の二人は一旦ミッドに帰ると言い、帰還直後解散となった。

帰還して疲れているが、話したいことが沢山ある。それは、アルも同様だろう。自分が話したい事は、無理に今話す必要は無いと思い、今は此処で二人で帰る場所へと向かっている時間を楽しんだ。

「ああ、お疲れ。写真については、明日調べるとしよう。今日は、それぞれの家に帰ろう。」

腕を組みながら、翌日の予定について話す。その表情は疲れきっていた。

そして、左腕を右手で撫でるような仕草を見せる。何か気になるのだろうか、それとも何か考え事でもあるのか。

フェイトは、此処は黙っておくべきなのか迷ったが、疲れるといけないと気遣い、二人は黙って本局の廊下を歩いた。その後、二人は分かれアルは本局に設けられている家へと帰宅した。

玄関ドアを開け、玄関で靴を脱ぎリビングへと向い、再びドアを開ける。

すると、バスタオルを身体の胸辺りの高さまで巻いているヘレンの姿と眼が合った。髪は濡れており、頭の上にはタオルが乗っかっている。アルと眼が合い、二人とも時が止まったかのように固まっている。

「─着替えて来い。」

少し呆れ顔で、洗面所への方に指を指して移動するよう指示した。

ヘレンは慌てて、頭に乗っかっていたタオルを肩に巻き、洗面所へ駆け込んだ。多少距離はあるが、身体と布が擦れる音が微かに聞こえる。

現在、アルはヘレンと二人暮し。リバルは八神家と共に同居している。

ネクタイを片手で解き、制服を脱ぎ、それらをベットへ投げる。ベットの下の引き出しを引く出すと、衣類が綺麗に畳まれている。最低限の衣類を手に取り、ベットの上に置く。

そして、着替えを済ませ、リビングにあるソファに腰掛けてモニターを展開する。確認するのはもちろん、つい先ほどまで調査を行っていたエイムズに関しての事だ。フェイトの写真は既にデータとして送信されており、モニター上に映し出される。映し出されるとは言え、解析は難しい為眺めているだけ。

モニターに映し続けながら、銀髪の悪魔レイルから受け取った本を手に取って開き、黙読する。

すると、洗面所からヘレンが出てくる。バスタオルを四つ折りにして両手で抱えている。

「おかえりなさい。」

苦笑いしながら挨拶をし、寝室に向いバスタオルをベットの上に置き、リビングに戻ってくる。

「うん。」

ただいま。とは言わず、ただ機械のような応答をする。

脳裏に、エイムズの遺跡跡が蘇る。一体、あれはなんなのかとアルは思いながら、本を読み続ける。

その思いは本が自ら答えを出した。本には、あの遺跡跡をスケッチしたような挿絵が描かれており、それについての詳細が書かれている。あそこは、決して遺跡跡ではなく世界を転移する為の場所だった。

本に記されている限りでは、そこから悪魔達はエイムズを離れ、今の魔界アルデバランに世界転移したと記されている。

しかし何故、悪魔達はエイムズから去って行ったのか。その理由は、この本には記されていなかった。

「ここが、アルが行ってきた場所?」

ヘレンは両手を腰に当てながら、腰を曲げてモニターを覗き込んで訪う。

「そうだ。エイムズという小さな世界で、魔界とバンプ・クライアントと関係を持っている世界。まだ詳しい事は分かっていないが、調査を重ねて調べる予定だ。」

再度調査に行く事に、ヘレンは心配していた。疲れきった顔に、日々仕事漬けのアルに自ら調査に行かせるは厳しいと思っていた。

だが、彼にも今回の件に重要性を感じている。故郷に関する事が分かるかもしれないという、アルの必死な思いが疲れきった身体を動かしていた。それでも、やはり不安が募る。

そして、ソファの後ろに回り、両腕をアルの肩に回し、身体を寄せる。それに、少し驚いたのかアルの身体がピクりと固まる。

「身体、大丈夫?無理して無い?」

声を震わせながら、眼を閉じて耳元で囁く。その言葉が心に強く突き刺り、胸がとても痛く、辛い。

また、自分は無理を犯している。自分からそんな事は気付かず、いつも誰かに言われないと分からない自分が情けなかった。フェイトにも、散々迷惑と心配をさせてきた。

だけど、今回だけは無理を通す。今まで見つからなかった老王の心臓。それがようやく、手掛かりとして見つかった今、無理を通してまでも老王の心臓を見つけ出し回収しなければならない。

それでも、嬉しかった。いつも、お茶目で笑い続けている彼女が、母親のように感じる。

「大丈夫、心配するな。」

と、はっきりとした声で返答した。ただ一言をはっきりと…


────エイムズ──


「レイル、何だったのあの人達?私達を狙ってたわ。」

夜の砂浜で、金髪の女性ベアトリーチェはしゃがみながらレイルに訊いた。

レイルは口を開けなかった。彼女にどう説明すれば良いのか、真実を語れば良いのか迷っていた。

「何か、私に隠してるの?」

選択が迫られていた。今、真実を話せば彼女はきっと自分を恐れ、泣いてしまう。そして、永遠の別れをしなければならないのかもしれない。そんな恐怖が彼の脳裏に過った。

「いえ、別に何も。彼らは此処エイムズの調査と言っていました。それに、私達を狙っていたというのは…──」

言葉が続かなかった。自分から、あの二人に襲ったのだから、原因は自分にあった。

「何で、あなたから襲ったの?どうして…何で?」

レイルは追い詰められた。誤魔化すのは難しい。だが、偽りの真実を言っても今の彼女には意味が無い。

「それは、今は言えません。此処を去る時、ちゃんと話しますから。」

今は何も言えない自分が悔しかった。悔しいとは言え、自分が原因の為、余計に情けない。

だが、こんな事を言って彼女の反応が怖かった。

ベアトリーチェは黙っていた。そして、彼の瞳を見つめ続け、仕方無さそうな表情でコクりと頷いた。

そして、彼女は再び果てしなく続く水平線を眺め続けた。



次回予告

「思惑」



あとがき

どうも、ご愛読有難う御座います。
今回も内容が少ないですね。と言うと、此処の話は中途半端なところなのです。
なので、丁度この章が一日の終了なので此処で切るしかないんですよね…('A`)
次回は、この翌日の話。内容は量は期待しても良いと思います。自分で言うのもあれですがw
以前と比べると量が圧倒的に少ないですね。困ったものですw
次回からちゃんと書けるか不安です。
改めて、ご愛読有難う御座いました。

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