▼第十五章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」第十五章「美女と野獣」
数年前、私は彼女と出会った。
人間が住む世界に私は、一人街中を彷徨っていた。
つまらない、退屈だ。どこの世界を転々しても、退屈だけが纏わり付く。
私は、享楽に飢えていた。
そんな私だが、街中を歩いていると、他に無いほど赤く光る場所を見つけた。
私は、興味本位でその場所へ足を運んだ。
すると、赤く光る場所というのは病院だった。
火事だ。私は何処か、残念そうな顔を浮かべ、群衆に混ざって赤く燃える病院を眺めていた。
少しして病院は全焼し、炎は消えた。群衆たちは、残念そうな顔でその場から去っていった。
気付くと、そこには私と消防隊しか居なかった。私は、群衆たちとは反対方向へ歩いた。
角を曲がると、一人の女性が少し焦げた服を身に纏いながら、足を引きずって歩いていた。
(焦げ臭い。まさか、先ほどの火事の──)
私はすぐさま走り出し、彼女の元に迫った。すると彼女は、私がたどり着く前に細く白い身体は地面に倒れた。
彼女の元に駆けつき、両手で彼女の身体を抱きかかえる。
少し黒く焦げた服の臭いが鼻に突くが、瞼を細めながら彼女は私の顔を見つめていた。
これが、私とベアトリーチェとの出会い。
それから、私は彼女を保護した。彼女は身体が弱く、よく入院していたらしい。
ただの人助けだと思っていたが、時間が経ちにつれ彼女に引かれ始めた。
彼女は、その世界を拠点として様々な世界を転々し、その世界にある遺跡などを調査や観光をしていると話す。
今まで退屈で押し潰されそうだった私は、彼女に付いて行く事に決めた。
だが、それから彼女と私は、悪魔達に追われるとは思ってもいなかった。
そこで、私は『老王の心臓』を知る事になる。
その心臓を宿しているのが、ベアトリーチェだった。悪魔達は、その心臓を狙い私達二人は追われ続けた。
私は彼女を守り続けた。何度も何度も懲りずに、私達を追う悪魔達と戦いながら、私は守り続けた。
だが、私達を狙うものは悪魔だけではなかった。
時空管理局。
世界を転々としていた為、時空管理局の存在は知っていた。
時空管理局が私達に目を付けた理由。それは…
第七代目魔王アル=ヴァン・ガノンだった。
─────ミッドチルダ──
翌日の夜、とあるレストランにてワタルが一人、椅子に座っていた。
薄暗い店内で、男女カップルがテーブル越しに向き合い、楽しい一時を過ごしている。
しばらくすると、店内にレキが入ってきて彼のテーブルの向い側に設けられている椅子に座る。
「ごめん、待たせた。」
椅子に座りながら、あまり謝罪の意を述べている様には見えない表情で話す。
「気にするな、メニューが決まらなくて困っていたところだ。」
そう言うワタルは、両手で開かれたメニューと睨めっこをしている。
数多くのメニューが存在するこの店は、時々二人で食事する際に訪れる店である。
それを訊いたレキが、彼に続いて側に置かれていたメニューを両手で開き、彼同様にメニューと睨めっこを始める。
暫く彼らの周りで静寂が包み込む。店内としては、男女カップルの楽しそうな会話が微かに聞こえる。
「で、明日の再調査の事だが。」
静寂を破ったのはワタルだった。その声に、メニューを見つめていたレキの瞳がメニューでは無く、ワタルに向けられる。
彼は黙って、ワタルの言葉を待った。
「お前から聞いた通り、今回からあの悪魔と金髪の女性の身柄を確保する事も、任務の内容として追加された。」
「ああ。匿名からだが、可能性は低いが彼らが老王の心臓や、魔界に関して何か関わっているのではないかと。」
メニューを突然閉じるワタル。
そして、グラスに注ぎ込まれていた清水を口にする。この事によって、レイルとの戦闘は確実となった。
今さらになって逃げ出すような者とは思えない。それに、本局の方で常にエイムズ全体は監視されており、彼らがエイムズを去るような行動は見られない。
「いや、低いのではない。高い。」
だがワタルは、レキから発せられた匿名の言葉を素っ気無い言い方で否定する。
何故。
レキは、彼が否定した事について疑問を抱く。
「何故言い切れる?」
「おかしいと思わないか?現在、エイムズに『老王の心臓』が存在する可能性がある為、準非常事態区域に指定されている。にも関わらず、彼らはのうのうとそこに居座り、楽しく遺跡調査だ。きっと、管理局も今回の件について関わっているのかもしれない。上層部、いやそれとも一部の人間が…」
理由を述べたつもりが、今度は勝手に考え始め独り言を呟き始める。
だが、最初に言った彼の言葉は正しかった。それを聞き、レキは納得した表情でメニューを閉じる。
「ま、お偉い方が関わっていようが、俺達がする事に変わりは無い。管理局が関わっていると困るのは、王様の方だろ?」
確かに、今回の『老王の心臓』に直接関係しているのは、アルだけである。レキ達は悪魔で、今回の任務での協力者という関係で、直接は関係していない。
「そうだな。」
顎に手をあてながら、そう応えると彼は店員を呼び、お気に入りのメニューを注文した。
「いよいよ明日だね。」
深夜遅く、寝室でアルはフェイトと通信を行っていた。
ベットの上に座り、少し眠そうな表情で話している。
「ああ。また彼らと会い、何か得られれば良いんだが。」
「彼らから今回の事に関する調査の為に任意同行して貰い、そして事情聴取を行う、か。」
モニター越しに、何かモニターを展開して作戦内容を確認するように淡々とした口調で話す。
「遺跡跡では僅かな情報しか得られなかったが、やはり今は彼らから事情聴取するしかないかもしれない。」
エイムズの全てを調査した訳ではないが、訳6割程度把握してあるがその中で遺跡跡のようなモノが発見されたのは、一つだけである。
残りの四割で、遺跡跡のようなモノが発見される確立は低い。その為、彼らへの期待は低くは無い。
「狭い世界とは言え、ある程度の広さがある故に、樹木や樹海が存在するために見つめだすのは難しいかもしれないな。」
「という事は、手分けして?」
難しい顔を浮かべながら話す。まだ、全てを把握していない為彼の表情は一段と暗く見える。
フェイトの問いに、瞼を閉じながら頷いて応える。
「前回は二手だったが、今回は一人で捜索する。発見次第全員に連絡。もちろん、発見するまでは定時連絡は怠らない事。」
すると、リビングからヘレンの声が寝室に響く。
「私、そろそろ寝るからねー。おやすみなさい〜」
少し大きな声でそう伝えると、リビングの灯りが消える。
「ヘレン寝たの?」
「ああ。もう遅いからな。」
よく見ると、アルは表情は今にでも寝てしまいそうな危険な状態だった。危険というほどでもないが。
流石にそろそろ終わらして、寝かせてあげた方が良いと考えた。
「じゃあ、そろそろ終わりにしようか。アルも寝た方が良いよ。」
「そうだな、明日は早いからな。寝るとするよ。」
そう話すと、ベットの近くに設けられている小さなテーブルに置かれているコップを手に取り、口にする。
氷によって、冷やされた清水が口の中をさっぱりとする。だが、それでもアルの眠そうな顔は消えない。
「じゃあ、また転送ポートで。」
笑顔で話すフェイトに、アルは微笑みながらコクりと頷いて通信は切れた。
─────時空管理局 本局──
とある会議室。
深夜にも関わらず、会議には数名の局員が顔を並べていた。
「いよいよ、エイムズ二度目の調査が行われるわけですね。」
「覚醒の時は近い。後は、あの悪魔がやってくれれば良い事。いや、奴がどう動こうがもう避けられぬか…」
意味深な言葉を話しながら、奇妙な表情を浮かべている。
「これで、彼も終わり。もう魔界からの脅威は消えるわけですね。」
「いや、まだ死神が居る。一人は『戦闘機人事件』の生き残り、悪運には強い。だが、今回ばかりはその悪運には敵うまい。」
「そう、全ては順調。後は待つだけである…」
次回予告
「エイムズ、再び」
あとがき
どうもご愛読有難う御座います!
はい、一話で休日を纏めました。正直、とても辛かったですw
次回からは、いよいよシリアスに突入ですよ〜!(・∀・)
これから話の展開も面白くなりそう。自分でもなんですが…
でも、ちゃんと8時には更新できるようにしたいです。
時間が欲しいです。一日を48時間にして欲しいくらいです(ノД`)
それに、そろそろ冬も近づいてきてますからね。風邪を引かないように気をつけないといけませんね。
皆さんも、お身体をお大切に。