▼第十六章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第十六章「エイムズ、再び」


─────時空管理局 本局──


アルは一人、本局の廊下を歩いていた。皆が転送ポートに集まったという報告があったからだ。

葉巻の価格の高騰により、タバコを口に咥えながら角を曲がると、正面から火が点いているタバコを咥えながら歩いているレキの姿を捉える。

お互い、表情一つ変えず迫る。そして、間近まで近寄ると二人は足を止める。

「あれ、もう皆集まっていると聞いていたが?」

先ほどの連絡では、転送ポートに集まっていると聞いていたが、転送ポートの近くとは言え、何故彼が此処に居るのか疑問を持った。

「いや、すみません。トイレに行ってましてね。」

淡々とした口調で問いに応えるレキ。だが、その表情は固かった。

言い終えると、転送ポートへ続く扉の方へお互い向くと口を開いた。

「お前、俺の事が嫌いだろ?」

アルが口にしたのは、思い切った質問だった。分かっていたのか、レキは先ほどから表情一つ変えない。

「あの時(J,S事件)から、俺が平然と生きている事が嫌で嫌で仕方ないんだろ?」

語りかけるの様に、アルは眼を細めながら話す。

だが、それでもレキは表情を崩さない。咥えていたタバコを手に取り、口から煙をため息と一緒に吐き出す。

「それは邪推だ王様。嫌いとか、そんな可愛いもんじゃねぇ。」

「いずれ、殺してやるよ。」

その言うと、扉を開けてアルを置いて転送ポートへ向った。

それを聞いたアルは、彼の背中を見つめながら少しニヤけて彼を追いかけた。

分かっていた。彼がアルに殺意を抱いている事は、『J,S事件』前から察していた。

しかし、彼は決して暗殺という手段は取らず、正面からアルに挑んできた。

それでもアルは、レキに殺される事は無かった。副隊長、今のヘレンとリバルがついていたからだ。

だが、アルとレキの関係に決定的なものを生み出したのは、まだ機動六課が立ち上がってすぐの頃だった。

とは言え、『Devil Tear』で殺そうとすれば十分可能だったはず。

それは、暗殺を行う死神と酒を作るバーテンダーとしての切り替えが利いていたからだと思われる。

「お待たせ!」

大きな声で、フェイトに微笑みながら呼びかけるアル。フェイトの隣には、壁に寄りかかりながら腕を組み、瞼を閉じているワタルの姿が確認できる。

それに対し、フェイトも微笑みながら手を振って応えた。

「おはよう。よく寝れた?」

側まで近寄ったアルに向って、話しかける。

「ああ。良く寝れたよ。あの時に寝ておいて良かった。」

元気そうな表情を見せると、ゆっくりと辺りを見渡し人数確認を行う。

モニターを展開させ、転送ポートの起動準備に取り掛かっているワタル。

吸殻を携帯吸殻入れに入れながら、鋭い目線を放ちながらこちらを睨み続けるレキ。

そして、フェイト。こちらを紅く輝いた瞳でこちらを見つめ続けている。

にやけた表情で瞼を閉じ、少し時間を置きゆっくりと開けた。

「行こう。」


─────エイムズ──


樹海や荒野などが広がるエイムズで、アル達が発見した遺跡跡とは言え、比べ物にならない大きな遺跡が佇んでいる。

数多くの樹木によって作られた樹海の中に、遺跡の周辺は樹木の姿は見られない。

それを少し離れた崖から眺めているレイルとベアトリーチェ。二人は、驚きを隠しきれない。

「凄いですね。」

「うん。こんな大きな遺跡、中々見ないね。行ってみましょ。」

瞳を輝かせながら話す彼女は、まるで好奇心旺盛の子供の様だ。興奮して胸の鼓動が速まる。

レイルはコクりと頷き、彼女をお姫様抱っこして飛翔魔法で遺跡へ向った。


四つの魔法陣が展開され、四人の騎士がエイムズに舞い降りる。

騎士甲冑とバリアジャケットを身に纏い、魔法陣が消えてエイムズの大地を踏みしめる。

今まで被っていなかったフードを被るレキとワタル。黒いフードを被った為、より表情が暗く見える。

アルは、辺りを見渡し自分達の現在地を確認し、口を開く。

「此処は、以前来た遺跡跡から近い場所だな。ここから捜索を始めよう。」

三人に目線を送ると、皆コクりと頷ずく。

ここでアルは、ふと頭にレキとワタルの事が浮んだ。

前回、レイルとの戦闘で彼に勝利する事は出来なかった。今回は、一人で彼らを探すという事は彼らと戦闘する事も考えられる。

その為、ランクの事も考えレキとワタルは共に行動させるべきだと判断する。

「レキとワタルは、二人で彼らの捜索。まだ俺達が行っていない場所を捜索して欲しい。フェイトは、二人はとは違う場所を捜索。俺は、前回で皆が周った場所を捜索する。定時連絡は必ずする事、何か些細な事でも分かったら報告する事。以上だ。」

「「了解」」 「うん。分かった。」

アルの説明を受け、二人は応答し絶影を起動して大鎌を片手で持ち、その場から飛翔魔法で移動を開始した。

そして、フェイトはコクりと頷き、こちらを見つめ続ける。アルは、ふと微笑みを見せて頷くとフェイトは笑顔を浮かべ、レキ達同様に飛翔魔法で移動を開始した。

(さて、俺も行くか。)

紅い光の軌道と金色の軌道を描かれるのを見届け、それが見えなくなると同時に背を向けて、飛翔魔法でエイムズの大空を黒の光で軌道を描いて行った。


「今回から、シャリオ・フィニーノ執務官補佐が本局からサポートして貰うことになった。」

大空を翔る二人の死神。高速で飛行している為、フードは既に頭から外れていた。

そして、ワタルが今回の任務での追加メンバーの紹介をした。

シャリオ・フィニーノ執務官補佐。フェイトの執務官補佐であり、『デバイスマイスター』の資格を持っており、シャーリーという愛称を持っている。

機動六課では、通信主任と共にデバイス関連の整備や作成などを手がけていた。レキも度々彼女には、世話になっている。

「彼女のサポートがあれば、心強い。」

『J,S事件』で陰から実績を上げた彼女に、レキは大きな信頼を寄せていた。

すると、突然二人のモニターが展開される。二人は、モニターに眼を向けると一人女性の姿が映し出された。

「お二人さん、どうですか現場は?レキ君、久しぶり。」

映し出されたのは勿論、シャーリー。笑顔で二人に話しかける。

「お久しぶりです。シャーリーさん。」

「現在、目標の捜索を始めた所です。まだ、前回で捜索できなかった部分を自分達とフェイト執務官で捜索しています。そして、アル=ヴァン三佐はその他の場所を捜索しています。」

挨拶を交わしてすぐに、ワタルが状況を報告する。

「了解。今、エイムズの全体マップのデータ送るから、これでまだ捜索していない所も分かるから。」

パネルを打ちながら話すシャーリー。するとすぐに、データは送られてきた。

もう一つのモニターが展開され、縮小されたエイムズの全体地図が映し出される。その中に、四つの点が映し出されている。

「シャーリーさん。この点は?」

レキが不思議そうな表情で問う。

「えっと、これは今誰が何処に居るかを表す点。何処に誰が居るのか分かれば、応援を呼ぶ場合誰を呼べばいいか分かると思うから。」

「なるほど、有難う御座います。」

問いに応えて説明するシャーリーに、礼を言う。

すると、突然ワタルが動きを止めた。驚いた表情で下を見下ろしている。

何かと思い動きを止め、続いて下を見下ろすレキ。

下には、数多くの樹木によって作られた樹海の中に、ぽつりと佇んでいる大きな遺跡を発見する。

「大きな遺跡ね。」

シャーリーが呟くと、ワタルは急いでモニターを展開し、フェイトとアルに連絡を入れる。

少しばかりモニターが点滅すると、二人の顔がモニターに映し出される。

「どうした?」 「何か見つかったの?」

「大きな遺跡を発見しました。中々の大きさです。」

そう話すと、ワタルはレイルとベアトリーチェの事を思い出す。

遺跡調査と観光をする二人は、このような遺跡を発見すれば必ずと言って良いほど、中に入っているに違いないと思った。

二人を待つより、先に行くべきと考えた。

「分かった。今からフェイト執務官とそちらに向う。地上に降りて待機してろ。」

「いや、中に奴らが居る可能性がある。ここは行かさせてもらう。」

ワタルはアルの命令を無視し、レキとアイコンタクトすると二人は地上へ急降下した。

「二人共、行っちゃ駄目!」

フェイトが慌てて二人に忠告するが、そう話した時には既に通信は切られていた。

慌ててモニターを展開し、地図で二人の居場所を知ると旋回して彼らの元へ向った。

アルも同様、身勝手な行動に気に入らないのか一度動きを止め、舌打ちして彼らの元へ急いだ。


地上へ降下した二人は、大人が三人ほど並んで入れる広さの入り口を見つける。

「中に居ると思うか?」

フードを被りながら、レキに冗談で問う。

「居ようが居なかろうが、行くんだろ?熱源と魔力反応は注意して行く必要はあるが、シャーリーさんがやってれるだろ。行こう。」

同じく、黒のフードを被りながら話す。

そして、二人は微笑を浮かべ、マントを靡かせながら薄暗い遺跡内へと足を踏み入れていった。



次回予告

「眠りから覚めた狂気」


あとがき

どうも、ご愛読有難う御座います。
最初にアルとレキの会話は、微妙と思った。今さらだですが、、、
今回は、レイルとベアトリーチェのサイドは一瞬でしたが、今回からアルサイドになりますので、アル、フェイト、レキ、ワタルを視点に置いた書き方になると思います。
とは言え、所々ちゃんとサイドを設けて書きますがw(`・ω・´)
で、今回からレキとワタルのバリアジャケット、いや騎士甲冑と言った方が良いんですかね?
マントにフードが着いている事を発表します。まぁ、死神というイメージからフードか何か被り物があった方が良いのではないかと思ったので、そう決めました( -ω-)
表現の書き方に苦戦しますね、中々難しいものです。。・゚・(ノД`)・゚・。
フードを被るシーンとか、どうの様に書けば良いのかいまいち分かりません。。。
今回の書き方で、良いのならそれで良いんですがね…w
とまぁ、色々と模索しながら、頑張っていきます。

では、また次回をお楽しみに。

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