▼第十七章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第十七章「眠りから覚めた狂気」


遺跡内に入る二人。外からの光が入り口から、少ししたところまで入り込んで照らしている。

コツコツと足音を立てながら、奥に進んでいくうちに外からの明かりは届かなくなり、両側の壁に灯りが灯されている。二人が入っていく際に点けていった可能性が高い。

モニターを開きながら、熱源、魔力反応の検索を行っている。

(臭うな。)

モニターに眼を向け続けているワタルに対し、レキはその後を追いながらも、僅かな悪魔の臭いを嗅ぎつけた。それは、ワタルも分かっているかもしれない。

その臭いは、魔力反応や熱源よりも頼りになるものだ。レキは、内ポケットに入れられていたタバコを一つ手に取り、灯りの火で火を点けると口に咥える。

タバコを吸いながら、入り口から続く細い道は、両側に点けられている灯りと共にその後も続いた。

ふと、二人は足を止めた。長い続いていた細い道は無くなり、大きな空間が辺りに広がる。両側の壁側の床には凹みがあり、そこには灯りが灯されており、その大きな空間を照らしている。

壁には、壁画が描かれていた。造られて長いのだろうか、壁画は朽ちて所々見えない。

二人は、警戒しながらゆっくりとその空間へと足を踏み入れる。

モニターを閉じ、絶影の柄を両手で握って構える。レキは、タバコを床へと吐き落とし、靴で踏み潰す。靴の底からは微かな煙が漏れる。

辺りを見渡しながら、ゆっくりと奥へ進むと人影が現れる。二人は、それが誰なのかはっきりと分かる前に、レイルだろうと分かっていた。

近づくにつれて、その人影がはっきりと分かる。人影は一つ。レイルの顔がうっすらと捉える。

「またお会いしましたね。見てください、この壁画。」

絶影を構えている二人に対して、レハルは全く動じる事も無く話す。レイルの反応に、二人は構えを解き、壁画の方へ身体を向ける。

この空間の壁側一杯に、様々なモノが描かれている。人間と思われるモノや、悪魔を想像させる異形の形をした生物。

「この壁画は、約2800年前。バンプ・クライアントがこの地を去る時に、描かれたと言われています。」

レイルが話すと、入り口方面から足音が鳴り響く。それに聞いた三人は、その方向に顔を向ける。

「バンプ・クライアント?いや、違う。ブレイ・ガノン、じゃないのか?」

そこには、ワタル達を追いかけてきたアルとフェイトだった。

アルは、そのように話すとレイルは、懐にしまっていたアルに渡した同様の本を取り出す。

「読まれたんですか、どうでしたか?」

「非常に興味深いものが書かれていて、とても読んで楽しかったよ。」

笑みを浮かべてながら感想を述べるが、腰に納刀されているエクスキューショナーに手掛ける。

そして、ゆっくりと鞘から抜き、彼に向って白銀の刃を向ける。

「以前にも忠告しましたが、この世界は時空管理局による非常事態区域に指定されています。それに、あなたともう一人の女性を重要参考人として、任意同行してもらいます。」

アルに代わって、バルディッシュを構えて忠告するフェイト。その表情は、今までに無いほど険しい。

忠告したとは言え、彼が同意するとは思っていない。いい方法ではないが、拘束して本局へ連行して事情聴取をするつもりだ。それは、昨日の夜でアルとの会話で確認した通りである。

だがベアトリーチェ、彼女の姿が見られない。

「困りましたね。まだ私は、王様に伝えなくてはならない事があると言うのに。」

困った表情で、何処か嘲笑うかのように本を懐へしまいながら話す。

「ならここで言いな。ちゃんと聞いてやる。」

剣先を向けながらも、そう話すアルは魔剣を持つ腕を下に下ろす。

「ここで言える事ではありません。私は、あなただけにお伝えしたいのです。」

すると、彼の周囲に突如魔力弾が現れる。皆、とっさにデバイスを構え彼に向けられる。

そして、レイルは全ての魔力弾を天井へ放つ。爆発音と爆発によって崩れる瓦礫と共に、とてつもない量の砂ぼこりができ、視界を奪う。

砂ぼこりが晴れると、天井は外まで穴が空き、日光が穴を通って空間を照らす。その先に、飛翔魔法で空中で静止しているレイルの姿が見える。

(ワタル、レキ、頼む。)

((了解。))

念話で話すと、二人はフェイトにアイコンクトを送り、フェイトが頷くと二人は、彼に向って飛んでいった。

凄まじい爆発音と瓦礫が崩れた後の遺跡内は、一時の静寂に包まれる。

レイルがここから逃げた為、戦う相手を失ったアルはエクスキューショナーを腰に付けられている鞘に納刀する。

だが、それでもアルの表情は険しかった。それは、フェイトも同様である。

何かに警戒しながら、辺りを見渡す。壁画をある程度見渡すと、ここからさらに奥に壁画の側に寄り、こちらを見つけ続ける金色の髪をした女性の姿がうっすらと確認できる。

「…女性?」

フェイトと顔を合わせお互い頷くと、ゆっくり彼女の元へ歩み始めた。

女性は、こちらに迫ってくるアルとフェイトを見つめながら、ゆっくりと立ち上がるが眼は反らさない。

「時空管理局本局武装隊所属、アル=ヴァン・ガノン三佐だ。君の名は?」

女性は、アルの自己紹介を聞き少し戸惑いながらも、口を開く。

「…ベアトリーチェ。」

ベアトリーチェは、ゆっくりと自分の名を言う。怯えているのか、両手を胸に当ててこちらを下から見上げるような眼付きでこちらを伺っている。

「私はフェイト・T・ハラオウン。少し聞きたい事があるんだけど、良いかな?」

そんな彼女に、少し姿勢を低くしてフェイトが優しく自己紹介し、問いかける。

フェイトの問いに、彼女はまだ戸惑いながらもコクりと頷く。

「さっきの、あの男性。あなたの友達?」

フェイトの問いを聞いた彼女は、それを聞くと突如目付きを変える。

「友達というのではありません。彼は、命の恩人です。」

先ほどの少し怯えていた彼女だが、強気な口調になる。

彼女にとっては、命の恩人。アルやフェイト達は違う印象を持っているが、彼女は彼にとても感謝をしている。そんな人を友達という言い方をされたのが嫌だったのだろう。

「ごめんなさい。でも時空管理局では、君とあの人は重要参考人として色々と聞きたい事があるの。」

ベアトリーチェは疑問を抱いた。

何故、私が重要参考人に?

私が何かに関係しているのか、分からなかった。その、時空管理局に関与した覚えは全く無かった。

「それ、どういう事ですか?」

疑問をフェイトにぶつけるベアトリーチェ。だが、あまりこの事に理解出来ていない彼女に、どう説明すれば良いのか戸惑うフェイトに、アルが口を開く。

「それは──」

と、何かを話そうとした時、一瞬にして目の前の景色が強い閃光に包まれる。


アル=ヴァン・ガノンは、真っ白で殺風景な部屋の中に居た。

どうやってこの場所に来たのか、全く覚えていない。気が付いたら、ここに居た。

辺りを見渡しても、天井や床、あらゆる場所を見渡しても、この殺風景の部屋には出入り口というモノが見当たらない。

殺風景な部屋は、それほど広くない。窓も無く、息苦しい感じがするかもしれないが、全く苦しい感じはしない。

そもそも、この部屋には前方に設けられている椅子だけが存在する。アルは、ゆっくりとその椅子に歩み寄り、何かに警戒する事も無く、腰掛けた。

再び、椅子に座った状態で視線を一巡りする。とは言え、こんな殺風景な部屋を見たとして、何も変わる事は無い。

(ここは、どこだ?)

先ほどまで、エイムズの遺跡内でフェイトと共に居て、ベアトリーチェという女性と出会っていたのは覚えている。

だが、ここがどこなのか、どうやってここに来たのか分からない。

ここから脱出方法が分からず、途方にくれため息を漏らす。

すると、前方の壁からノックする音が部屋に響く。何かと思い、眼を細めて音の方向を見つめる。

「おっと、こんなところに居たのか。」

アルは度肝を抜かれた。壁から人の上半身が出現したのだから。

さらに驚いたのは、最も自分が知る姿。自分そのものが現れたのだから。壁から現れた自分は、ゆっくりと手、足を出現させ、空間内に侵入した。

だが、アルは違和感を感じた。これは自分ではない。何故なら、瞼から生えている様な刺青が施されていたからである。

そして、その自分と同じ姿をし、瞼からから続いている刺青をしている男をアルは知っていた。

驚いた表情で、こちらを見つめ続けるアルにその男は、不気味な笑みを浮かべた。

「久しぶりだな、王様。」



次回予告

「対峙」


あとがき

いつもご愛読有難う御座います。
今回は、ちゃんと更新時間になる前に更新が出来て良かったです♪(*-ω-)
やっとの事で、アルとベアトリーチェを会わせることが出来ました。
さてはて、これからどうやなって行くのやら…結局、死神とレイルとの戦いになりそうですし、大丈夫でしょうかね?(汗
最後は凄い展開になってしまいまして、どう話を作っていこうかなと迷います。
三連休もありますし、ゆっくりと考え行きます。
あと、GvsGも練習しないと…グフカスタム以外に、何か使えるMS探さないと…
そして、冬コミで合同誌の原稿もありますからね、来週は更新がないかもしれません。(;・ω・)
原稿はしっかりと締め切り前日ぐらいには、出せるように頑張ります。

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