▼第二十一章 
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第二十一章「魔王と魔剣」


魔王として、その運命を歩み始めたアル=ヴァン・ガノン。

彼は、魔界で数々の戦いを乗り越え、魔王として、魔界でその生涯をまっとうしようとしていた。

だが、運命はそれを許さなかった。

とある魔界での紛争で、時空管理局が関与し、その担当を行っていたリンディ・ハラオウンと出会う。

時が少し流れ、新暦65年。

アル=ヴァン・ガノンは、嘱託騎士としてリンディ・ハラオウンと共にロストロギア『ジュエルシード』を捜索する事になる。

三千年前から長く栄えている世界魔界アルデバランは、時空管理局が設立前からロストロギアの捜索、回収を行っており、その魔界を代表としてアル=ヴァン・ガノンが嘱託騎士として選ばれた。

そして、彼は運命的な出会いを果たす。

その人物の名は、高町なのはとフェイト・テスタロッサ。

彼が時空管理局で勤め始める理由となった原点となる、『P,T事件』のことを振り返ってみよう。

事件は、次元震の発生によって始まる。

第97管理外世界にて、高町なのはとフェイト・テスタロッサがジュエルシードを取り合う途中、次元震が発生する。

時空管理局は、その次元震を感知すると、高町なのはと共に行動を共にすることになる。

高町なのはとフェイト・テスタロッサとの決着が付き、フェイト・テスタロッサは時空管理局に身柄を拘束される。

そして、アル=ヴァン達は驚くべき事を知る。

フェイト・テスタロッサは、母親であるプレシア・テスタロッサの実の娘アリシアの遺伝子を使って作り上げた人造生命体に、アリシアの記憶を移したものだった。

プレシア・テスタロッサは、娘のアリシアを復活の為に現代の魔法技術では不可能なことでも、遺失技術ならば、と思いこみ、その技術が眠る場所、異世界アルハザードへ渡る手段として、ジュエルシードを求めていたのだ。

戦い破れ、母親からの期待に応える事も出来ず、プレシア・テスタロッサからその事を告げられ、さらに必要ないと宣告されて、彼女は人格崩壊しかけてしまう。

プレシア・テスタロッサを逮捕する為に、『時の庭園』に高町なのはと執務官を務めるクロノ・ハラオウンが突入する。

フェイト・テスタロッサもまた、再び母親に会う為にアル=ヴァン・ガノンと共に『時の庭園』へ向う。

そして、過去との決別。

だが、この複雑な戦いは思わぬ結果で終わる。

崩壊しかけ始めた『時の庭園』で、プレシア・テスタロッサは、ときの声をあげる。

戦いを終えたアル=ヴァン・ガノンと高町なのはとフェイト・テスタロッサは、それぞれ帰るべき場所、向うべき場所へと歩き始める。

これで終わったかと思われたが、運命はアル=ヴァン・ガノンをさらなる戦いへと向わせる。

魔王の戦いは、終わらない。


─────エイムズ 壁画の間──


(やはり、この程度では無理がある。)

煙が消え去り、無傷な二人を見つめながらバンプ・クライアントは、心の中で呟く。

そして、魔法陣を展開し二人に向って左手を前に掲げる。

すると、二人は頭上に強烈な魔力反応を感知する。だが、時はすでに遅かった。

(魔力反応っ!?)

(無咏唱で遠距離発生の収束砲っ!)

遺跡から少しの上空から、魔法陣が展開されており、そこから二人に向って白く巨大な集束砲が放たれる。

壁画の間の天井は崩され、鉛の空がくっきりと見える。それによって、砂煙が壁画の間を包み込み、視界を奪う。

だが、彼は一歩たりとも動き事は無く、ただ掲げていた右手を下に下ろして前を見つめていた。

遺跡は今の一撃によって、遺跡跡のような無残な姿へと変わる。

そして、強く吹きあられる風が壁画の間へと吹き込み、押し流されていく。

煙が消え去った後には、息を荒くしながらも傷一つ無いアル=ヴァンとフェイトの姿が残されていた。

「ありがとう、フェイト。助かった。」

「うん。でも、正直危なかったよ。」

機動力が優れているフェイトは、収束砲が放たれる前にアルを抱えてその場から離脱をしていた。その為、体力の消耗があるが、大魔法の直撃を受ける事は無かった。

その様子に、バンプ・クライアントは表情一つ変えることは無い。彼が見つめる先には、アル=ヴァンが手に持つ魔剣エクスキューショナー。彼は、それに向って魔力刃と化した右腕を横に伸ばしてアル=ヴァンに向って一気に詰め寄る。と思われた。

だが、彼女の速さには流石の彼も敵わない。

「はあぁっ!」

地面を蹴った途端、フェイトのバルディッシュの刃が前方から襲い掛かる。大剣の姿をしたザンバーフォームのバルディッシュを前に、彼は後退を余儀なくされた。

金色の刃は、軌道描いて彼の頭上へと振り下ろされる。だが、彼は眼を細くしてそれを見つめながら、即座に地面を強く蹴り彼女の背後へと回り込む。金色の刃は、身体を切り裂く事は無く床へと突き刺さる。スピード型のフェイトと言えど、これは大きな隙となってしまった。彼がこの機会を逃すわけが無い。すかさず、右腕の魔力刃を彼女の背後から先ほどの彼女同様に、上へと振り上げて彼女の頭上へ振り下ろされる。

強烈な金属音が鳴り響く。

刃と刃が噛み合う瞬間花火が散りながらも、彼の斬撃をアルがエクスキューショナーを両手でそれを受け止める。

同時に、フェイトは自由を取り戻す。

「はあああっ!」

バルディッシュの柄をフェイトが両手で小さく振るう。大剣で振るわれる刃は、決して大きく振る必要は無い。当たればその巨大な刃が身体を切り裂く。

瞬時に、アルの元から離れ距離を置くが、同時にフェイトの細かく素早い斬撃が襲い掛かる。それは一度だけではなく、後ろに後退すればされに懐まで詰められて斬りかかる。すると、先ほどまで後退する事によって回避していたバンプ・クライアントは、左手を前に掲げて防御障壁を展開しそれを受け止める。そして、すかさず余った左腕でバルデッシュに斬りかかる。

バルディッシュが宙を舞う。

簡単にデハイスを手放す事はないのにも関わらず、彼の魔力刃がバルディッシュと接触した時、彼女の両手にこれまで味わった事もない激痛が襲い掛かる。その瞬間、意識はしていなかったのだろう、手の力が少しばかり抜けてしまい、バルディッシュが彼女の元から離れてしまう。そして、床に落下する。

(何なの、今の?)

激痛を両手で必死に堪えている彼女だが、デバイスを持たない彼女は無防備。少しもしない内にバンプ・クライアントは魔力刃が突き掛かる。しかし、フェイトの後方から黒き小さな光がいくつか現れる。それは、弧を描くようにバンプ・クライアントへと飛ばされる。彼は、フェイトへの攻撃を中断し、防御障壁を再び展開しそれを難なく防御する。

その間に、フェイトは慌ててバルディッシュ飛び込むかのように手に取り、身体を一回転させて体勢を立て直す。

そして、魔力弾を放ったアルがフェイトがバルディッシュを取りに行った途端、その姿が現れて両手でエクスキューショナーを持ち、防御している彼に向って突きの体勢で突撃する。防御障壁を展開している彼に向って、その一撃は決して牽制でもなく、侮辱するような舐めた真似をしている訳ではない。

魔剣の剣先が防御障壁と衝突し、激しい火花を散す。

全力の一撃。足腰と両腕に全力を注ぎ、ただひたすら力を一点に集中させる。先ほどの魔力弾は難なく防御できたが、今回ではそうはいかない。衝突の際に発生した衝撃がバンプ・クライアントの体勢を崩しかける。足に力が入り、足がついている床はひびが入り凹んでいる。

「エクスキューショナーっ!」

魔剣の名を叫び、爆音と共に石突の部分がスライドし、カートリッジが吐き出された。

刃を魔力光が包む。

そのまま魔力光によって伸長した刃は防御障壁を貫通し、ひびが生まれる。そして、柄を握っていた両手を右手に持ち直して横に薙ぎ払って防御障壁を破壊する。続いて余った左手が顔面を掴むと、そのまま彼に映る正面の壁へ、頭から鈍い音と共に激突する。壁は大きくひびと共に凹み、バンプ・クライアントの頭部からは鮮血が垂れ流れている。

戦闘不能までとは言わないが、少し動けなくさせたと思い、顔面を掴んでいた左手を離してその場から離れようとする。その時の彼は、無防備だった。頭部が出血していようが、壁に激突しようが、彼はすぐさま先ほどの激突によって消えた魔力刃を再び発生させる。

そして、懐に踏み込み横に薙ぎ払った。バリアジャケットは紙の様に切り裂かれ、腹部から鮮血が飛び散り、三,四歩ふらふらと後退する。腹部に生まれた妬けるような痛みが、アルを襲う。

(っ!?)

「アルっ!」

迂闊と言えば迂闊だった。

今までの戦闘で彼の戦闘能力の高さは、明らかだった。あれほどの頭部の衝撃では、彼は止まらない。それぐらい分かっていたはずだ。何故、攻撃を止めた?何処かで納得してしまったのか?自問自答を繰り返すが、答えは見つからない。だが、ビースト形態の老王でのあの攻撃は、かなりのものだと考えられる。普通の人間なら、一撃で動けなくなるものだ。

そんな甘い考えが、アルをあのようにしてしまった。自分の相手は誰なのか、もう一度確かめろ。アルが相手にするのは、老王の防衛プログラム。だが、プログラムとは言えそれを組んだのは、当時のバンプ・クライアントに違いない。まさに、初代魔王バンプ・クライアントと言っても過言ではない。全知全能の力を持つと言われている彼に、その程度では倒れない。

そこで攻撃を止めなければ、せめてこのような傷はできなかったはずだ。

青色の瞳は、どこか不機嫌そうな様子でアルを見つめている。

「この程度で倒れると思ったのか?」

その右腕の魔力刃は、真紅の液体で濡れていた。

左手で腹部を押さえながら、それを見つめる。出血してくる血液と刃に付着している血液を見て、出血は思ったほど多くない。

「アル、大丈夫っ!?」

「ああ。なんとか。」

フェイトの言葉に、彼女の元まで後退してゆっくりと口調で応える。移動している最中、常に走る痛みは浅い傷ではないという事を示していた。

だが、数々の戦いを乗り越えてきたアルの意志を持ってすれば、無視できない痛みではない。

力強いため息と共に、自分に渇を入れる。

バンプ・クライアントは再びゲヘナの魔法陣を展開する。それと同時に白き魔力弾が周囲に現れる。二人は、その魔力反応に対してデバイスを握りなおす。

「行け。」

(冗談じゃねぇよ…!)

小さな掛け声と共に、数えて五つの魔力弾はアルが放った魔力弾とは違い、小さな集束砲が放たれる。五つの小さな集束砲は、一つに合わさり強大な集束砲へと姿を変える。二人は既に、魔力弾が現れた時から防御障壁を展開してある。二人には、彼とは違い瞬時に大魔法を放つことはできない。

白き光が二人、いや遺跡を包み込む。

彼が繰り出される大魔法によって、遺跡は本来あった姿はもう見られない。跡形もなく、二人が最初に見つけた遺跡後と同じように壁画の間も跡形のなく、砕け散ってしまった。

白き巨大な光から、黒き光と金色の光が飛び出す。そして、その光にはアルとフェイトの姿が確認できる。

「プラズマ──」

「ロード・オブ──」

集束砲から抜け出した二人は、すぐさま魔法陣を展開。そして、二人は愛用する技の名を叫ぶ。

「スマッシャー!」

「ブレイカー!」

二人が放ったのは、金色に輝く魔力の光と黒く染まった魔力の光。こちらも、大きな集束砲が掲げられた手に展開する魔法陣から放たれる。

「ほぅ。」

上空から注がれる集束砲を目にし、バンプ・クライアントは一言漏らす。そして、その二つの光は直撃すると辺りは爆発に巻き込まれる。

爆煙はすぐに晴れ、消え去った後には左手に焦げ目が付いただけのバンプ・クライアントの姿が残されていた。

「集束砲で我と殺りあうつもりか?冗談も程ほどにして欲しいものだ。」

(何なんだあいつ、あんな化け物が本当に三千年前に存在した者かっ!?)

二人の集束砲も、難なく防御した事にアルは強烈な危機感を感じた。彼の言葉に、フェイトも顔をしかめる。

そして、二人はゆっくりと俯き一つ言葉を呟いた。魔法陣が展開され、大剣とは大きく変わりザンバーフォームよりも細身の片刃の長剣形態ライオットブレードへと姿を変える。それは、バルディッシュのフルドライブに当たるフォースフォーム。それはある意味、フェイトの彼への危機感の大きさが伺える。

続いて魔力光がアルを包み込みそれが薄くなり、彼の姿が明かされる。それは、今までに無い軽装な姿。アグトレット形態と呼ばれる形態へと姿を変えた老王は、バリアジャケットも変化し、ロングコートは無くなり上半身は軽装と変わっている。腰には腰マントが設けられている。何よりも、老王の鎧化が強化され、一回り二回りとその姿は大きなり、鎧化はわずかだが左頬まで行われている。

その様子に、バンプ・クライアントは驚きを隠せない。今まで自分が鎧化をしていたのは、ビースト形態までだからだ。情報を得ているとは言え、あまりの変化に凝視してしまう。

(私の速さとアルの爆発力。これなら。)



次回予告

「語られる真実」


あとがき

どうも、ご愛読有難う御座います。
今回は、前回の更新一昨日という事なので、少し急いだ感じで書きました。
内容は少し納得いったのかどうか不明ですが…(;・ω・)
途中、表現の仕方が分からない場所があり、少し苦戦しましたがなんとか仕上げました。
一場面に三人もいると、書くのが大変ですね。特に戦闘になるとw
どのようにして、場面に応じて書いていくかが難しいですね。
これも、練習が必要ですね。難しいですw(汗
最後の部分も少しばかり、書くのに手こずった場所なんですが、まぁこんな感じで許してください。
もっと良い書き方があると思いますが、これも数多く書いて上手く書けるようにしたいですね。
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