▼第二十七章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」

第二十七章「光と影」


「なぜ、何故今になってお主は我の前に立ちふさがる!?」

「光が消えぬ限り、影が消える事は無い。そして、今回は七代目王様と目的が同じだからな」

それを聞き、厳しかった表情が歪み始める。

彼に対し、怒りを感じるのか、それを力に変えてガタガタと震わせながら魔剣を握り締めている。

「おな…じ、だと?」

少し離れた場所から、かすかに聞こえる声。

薄い意識の中、虚ろな目でぼやけながら見えるシャドーの後ろ姿を捉えながら呟く。

(っ!?生きていたか…よし)

「初代様を殺るという目的は同じ事だろ?そして、俺はアル=ヴァン・ガノンという男の影。光が消えてもらっては困るんでね」

彼の言葉は、アルを助けるという意味を持っていた。

その言葉に、ブレイ・ガノンは魔剣を握り直し、臨戦態勢へと移行して構える。

「七代目を逃がすと言うのか?」

「だとしたら?」

彼の問いに、影はニヤけた表情で問い返した。

その問いに彼は指をパチんと鳴らして白き魔法陣を展開し、フェイトやアル、シャドーを囲むように小さな魔法陣が幾つか展開した。

そして、その魔法陣からグランベリアルが再び姿を現し、彼らを包囲した。

「こうするまでだ」

黄土色の大槍を両手で持ち、グランベリアル達が構える。


どん


金属音と共に、一体のグランベリアルがブレイ・ガノンの足元へ吹き飛ばされ、土と塵と化した。

皆、吹き飛ばされた方へ顔を向けると、銀色の脚甲を纏っているワタルが立っていた。

「なら、それを薙ぎ倒すまでだ」

悪魔レイルとの戦闘から離脱し、シャーリーとも連絡を取って彼らの居場所を知ってここまで来たのだ。

だが、シャドーはそんな増援に対して、嬉しさ一つ見せる事無く、指を鳴らした。

魔法陣が展開され、バインドが発生して彼の両腕と身体を包むように拘束する。

「──な、何をっ!?」

突然のバインドに、おもわず眉のしわが寄る。

そして、黒き魔法陣がフェイト、アル、ワタルの足元に展開されていく。

「悪いがお前も帰れ。ここは俺に任せろ」

彼らを転送しようとするのを目にし、周囲に構えていたグランベリアルが一斉に地面を蹴ってアル達に迫る。

「待て…シャドー」

アルは僅かに残された力を振り絞り、右手を必死に彼の方へ掲げて呟く。

しかし、彼の言葉に彼は応えることは無く、迫り来るグランベリアルの大槍が彼らに到達する時

彼は再び指を鳴らし、黒き粒子と共に三人は時空管理局へ転送された。

消える三人を見て、ブレイ・ガノンは厳しい目付きで影を細い瞳で見つめる。

もう既に、あの神々しい姿をした彼は、そこには居ない。

「お主、なぜここまで我にたて突く?」

「理由は簡単さ、老王の心臓と共にこの老王にもあんたの防衛プログラム同様にあらゆる情報が送られていた。そのため、あんたの計画なんざ、すぐに分かった。だから俺は、死神を使って王様をここまで誘導したのさ。ま、王様本人、そのことは知らないようだけどな」

それでも、問いは続く。

「ならば、何故七代目の影であるお主が、初代である我にこれほどの敵意を示す?光と影、それは七代目同士であるお主らが戦うのであろう?なぜ、我はお主と戦わなければならないのだ?」

「同じ代同士戦わなきゃいけないって、一体誰が決めたと言うんだ?光が二人居るなら、誰と戦うのかを選ぶのは影であるこの俺だ。結果、俺はあんたと戦う事にした。理由は…まぁ色々とあるけどな」

それを聞き、表情を変える事無く右手を彼に向けて掲げる。

すると、周囲を包囲していたグランベリアルが再び大槍を構え、一斉に地面を蹴る。

(─ふん)

迫り来る騎士達に、身体と握っていた魔剣エクスキューショナーと共に横に振るうと、斬撃が騎士達の騎士甲冑を切り裂き、一瞬にして砂へ化すと、流れる風と共に消え去っていった。

「こんな雑魚を用意するなんて、この俺も随分となめられたモノだ。」

苦笑を浮かべながらも、挑発的な態度を取る影は、魔法陣を展開し始める。

そして、足の関節を曲げて少し姿勢を低くし、地面を蹴る。

先制に思わず魔剣を構えるブレイ・ガノンだが、目の前に影は見当たらない。

「楽しませてくれよ、折角初代様と殺りあう事ができるんだからよぉ」

彼は、彼の真後ろの影に立っていた。影である彼が他人が持つ影を転々する事は、決して難易な事ではなかった。

そこでも、彼は挑発的な言葉を放つ。

流石に気に触ったのか、無言でエクスキューショナーを横に振るう。

それは、決して殺意を持った斬撃ではなく、牽制の意味も含んだ斬撃。

もちろん、そんなモノが彼の身体を切り裂けるとは思っていない。

案の定、彼が斬撃を放ったときには彼は宙を舞い、先ほどまで立っていた場所に舞い降りてそれを回避した。

「良いだろう。お主が望む通り、相手をしようではないか!お主を倒さぬ限り、我の計画は成し遂げられぬっ!」

魔剣を鞘に納刀し、居合いの体勢に移行する。

それは、相手の斬撃を受け流すと共に、相手に斬撃を放つ体勢。

それに対しシャドーは、左手を上に掲げながら魔方陣を展開する。

彼の周囲には、白い魔力弾がいくつか発生し、宙に浮きながら静止している。

「なら、行くぜぇっ!」

(──スピリットブレイカーか)

そして、上に掲げていた手をブレイ・ガノンに向けて振り下ろすように掲げると、彼が発生させた魔力弾は一斉に放たれた。

ブレイ・ガノンは柄に手を掛けることをやめ、飛翔魔法で上空を飛翔する。

大きく左に旋回するも、追尾性能を兼ね備えたスピリットブレイカーはそんな彼の動きに対しても、追尾し続ける。

飛翔を続けていたブレイ・ガノンは、真後ろに迫る魔力弾に振り向き、納刀していた魔剣を抜くとともに放たれる衝撃波により、魔力弾と共にそれは相殺された。

余った左手を上に掲げて足元に魔方陣を展開すると共に、彼の頭上にも大きな魔方陣が展開される。

その魔方陣には、魔力が徐々に集められていき、それは大きな魔力弾へと姿を変えた。

そして、掲げていた左手を地上で佇むシャドーに向かって振り下ろし、頭上の魔法陣に集められた魔力弾が集束砲となって放たれる。

爆音と共に迫り来る白い光。

シャドーは地面を蹴ると、集束砲を右に旋回して回避すると、そのまま上空へ上昇しブレイ・ガノンの元へ迫る。

彼が静止して留まっているところを更に上空へ上昇し、両手で握られたエクスキューショナーで上段から放ったのは、正中線を割らんとする一直線の斬撃。

ブレイ・ガノンは刃と柄を両手で持ち、その斬撃を食い止めた。

「──ふん」

刃と刃が絡み合ったのは僅か一瞬。

斬撃を食い止められたシャドーは自ら刃を引き、左手を前に掲げ魔方陣を展開し魔力弾を放つ。

(至近距離からっ!?)

白き魔力弾が放たれ、慌てて真似するように左手を前に掲げて防御障壁を展開し、それを防御する。

しかし、魔力弾が防御障壁によって打ち消されたと同時に、彼の身体にバインドが発生する。

スピリットブレイカーは、直撃する際にバインドを発生させる特殊な射撃魔法。

先ほどの上段からの斬撃はフェイク。本命はこっちのバインドが目的だった。

トリッキーな動きでバインドを発生させ、彼の身体を拘束することがてぎたシャドーはさらに魔力弾を放つ。

「ちっ!」

拘束され、何もできないブレイ・ガノンは厳しい表情を浮かべ、魔力弾を正面から浴びた。

巻き起こる爆煙の中から、頭部から出血しながらも魔剣を構えながら現れる。

「エクスキューショナー!」

怒りがこもった声で叫ぶ。

爆音と共に余剰魔力を排出する石突がスライドし、カートリッジが飛び出された。

刃を魔力光が包む。

そして、魔剣を下から切り上げるように刃を放つと、刃を包んでいた魔力光が衝撃波と共に放たれた。

先ほどブレイ・ガノンが防御したのと同様に、シャドーもその衝撃波に対して防御障壁でそれを防ぐ。

だが、それは一瞬にして砕かれ、防御し切れなかった衝撃波が彼を襲う。

衝撃波で体勢を崩した彼を見ながら、大剣へと形態を変えた魔剣を片手で持ち、それを強靭な筋肉で強引に振り下ろす。

「っ!?」

シャドーは慌てて魔剣を盾代わりで防御するが、そのまま地面へ叩き落された。

大地は大きく凹み、仰向けにた折れている彼の身体はピクりとも動かない。

少しして、ブレイ・ガノンは上空からゆっくりと舞い降りる。

「たいしたこと無いな、影というのも」

「誰がたいしたことがないって?」

彼の声を聞き、シャドーはゆっくりと上半身を起こし、魔剣を杖代わりにして少し身体をふらかせながらも起き上がる。

所々騎士甲冑が切り裂かれ、出血していながらも彼が戦意を失うことは無い。

これが、彼が待ちに望んでいた戦いなのだから。

「ほう、まだやると言うのか?」

「当然っ!」

そして再び、二人は対峙する。

互いに、狂気に満ちた笑みを浮かべながら。


─────時空管理局 本局──


シャドーによって転送された俺達は、本局に到着すると、すぐさまに救護班によって総合病院に搬送された。

意識が朦朧していながらも、隣で自分と同じように搬送されるフェイトを見つめながら、俺はゆっくりと意識を失った。



次回予告

「現実か、幻か」


あとがき

ご愛読、ありがとうございます。
久々の更新ですが、なんとか更新できました〜
戦闘に関しては、最後ら辺ぐらいしかあまりよく書けてないかなと不安なのですが、それに関しては次回修正して書けるようにします( -ω-)
さて、捕獲結界によって捕まったレキの方もそろそろ書かないといけませんねw
次回は次回で書くことが多そうです(`・ω・)
では、また次回〜
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