▼第三十二章
「魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 Immortality Emperor」 第三十二章「男、二人」
「予定通りだな、同士よ」
「同士?」
手を差し伸べながら、握手を求めるブレイ・ガノン。
それに対し、レイルは彼の言葉を理解できなかった。
「お主と我はお互い悪魔。それだけで、同士と呼んでも良いのでは?」
「ベアトリーチェの身体を弄ぶあなたを、同士なんて呼べるもんじゃない」
「彼女を返してほしいのか?」
「当たり前だ」
握手を断り、敵意をむき出しにして話す彼に、嘲笑うかのように話す。
彼女を取り戻すためにここにいる彼にとって、彼女が戻ってこなくては意味が無い。
ブレイ・ガノンはそんな彼の態度に残念な表情を見せ、差し伸ばしていた手を下に下げた。
「彼女は我の心臓の役割をしている。我が完全なる復活を遂げるまで、彼女を返すわけにはならんのだ」
「完全なる復活?」
「左様、復活を遂げたばかりの我は、心臓に代わる魔力供給源のリンカーコアが精製されるまで、心臓を頼りにせねばならん。そのリンカーコアが精製さえすれば、我は心臓に頼ることなく、リンカーコアを魔力供給源として彼女を解放することができるのだ」
彼は疑った。この男が言っていることはあり得なくはない話だが、そう簡単に彼の話を信用することができなかった。
だが、その思いを打ち消すように、脳裏にある言葉が蘇る。
(彼と合流し、あとは彼に従っていれば良い。彼女を助けたければ、な)
時空管理局の局員から、命令されている事を思い出し自分に拒否権が無いことに気づく。
ベアトリーチェを助けたい。だが、管理局に逆らえば何をされるか分からない。
そんな恐怖に怯えることしかできず、俯いて悔しそうに歯軋りする。
そんな中、ブレイ・ガノンが突然遥か遠くを見つめる。
(──来たか)
「同士よ」
その声に俯いていたレイルが視線を起こす。
「奴らが来た。何をしに来たか知らんが、我は七代目と決着をつけてくる。お主は、邪魔な死神を殺せ」
彼が言っていることは、即ちアルとワタルが再びここに帰ってきたことを意味していた。
何故、何故あそこまでやられおいて尚、戻ってきたのか彼には理解できなかった。
唖然としているレイルに、ブレイ・ガノンが言う。
「どうした、行かぬのか?我を助けなければ、彼女も助けることできぬぞ?」
狂気に満ちた勝ち誇ったかのように話す彼に対し、レイルにそれを拒否することは許されなかった。
彼は、何も言わずに数歩前に歩き、飛翔魔法で迎撃に向かった。
(さぁ、来るがいい…)
─────エイムズ──
草原を颯爽に走る黒の乗用車。黒のサングラスを掛けてハンドルを握るワタル。
その助手席に腕を組んで目を閉じているアル。
ゆっくりと目を開ける彼は、手のひらを開くとスタンバイフォームのバルディッシュが姿を現す。
少し見つめ、再びバルディッシュを握り締めると、車体が大きく揺れる。
草原から森林地帯に入ると、地面は凸凹しており高速で走っているため、揺れが増大する。
樹木などが倒れていて、それを回避するためにハンドルを大きく切る。
車は森林を抜け、広々とした荒野に出る。アルはモニターを展開し、魔力反応の察知に集中する。
魔力反応は、すぐに現れた。
「捉えたっ!」
「上に出て、確認しますか?」
「ああ」
すると、後部座席に移動し黒の天井が外されると、天井に窓が現れる。
その窓をスライドさせ、席を足場代わりにして身体を車上に乗り出す。
高速で走行しているため、強風がアルを襲う。
(一つは北東。もう一つの大きいのはそのまま北か。そっちに奴が居る)
モニターを再度展開し、魔力反応がある方角を見つめる。
「ワタル、今データを送る。お前は、北東に行け。俺は、このまま北に向かう」
「了解。こちらが済みましたら、すぐに援護に向かいます」
「ああ」
アルはバルディッシュを握り締めている手を強く、強く握り締める。
「バルディッシュ、力を貸してくるか?」
「Yes, sir.」
アルの頼みに、バルディッシュは力強く、それに応えた。
そんなバルディッシュの返答に、ほっと笑顔をこぼす。
「──ありがとう」
そう感謝の言葉を話すと、金色の魔力光が身体を包み込む。
球体と化した魔力光が突然と粉々に砕け散る。その中から、騎士甲冑を身に纏ったアルが現れる。その手には、アサルトフォームのバルディッシュが握られている。
全ては老王の全てを終わらせるための戦い。だが、そのために捕えられた仲間や大切な物がある。
レキ、老王、そして、魔剣エクスキューショナー。
(欲しいものは奪う!取られたものは奪い返すっ!)
そして、ここまで自分の為に付き合ってくれるワタルに、少しだが感謝の思いが湧き出る。
だが、それでも戦いに行く以上、ある程度の覚悟はしてもらう。
(ワタルには悪いが、腹括ってもらうっ!自分勝手かい?そうだよな!)
(さあ、行くぜっ!)
そう誓ったアルは車上を蹴り、飛翔魔法を使ってブレイ・ガノンの元に向かっていった。
そんな思いで飛び出した反面、老王の力を奪われる直前に聞いた『助けて』という言葉。それはきっと、ベアトリーチェの言葉。
(必ず助けてみせる──絶対に)
そんな彼に対し、アルがブレイ・ガノンの元へ向かっていったことを確認したワタルは、さらにアクセルを踏む。
そのサングラスの向こうの瞳には、ある男の姿しか映っていなかった。たとえ其れが、実際に彼が居なくても。
彼が道を間違えているのなら、それを助けやらねばベアトリーチェを助け出すことが出来たとしても、彼女がそれに対して悲しむだけだ。
それを確かめるために、ワタルは車を走らせる。
ただ、その方向に彼が居ると信じて。
次回予告
「決戦」
あとがき
どうも、ご愛読ありがとう御座います。
今日から、娘TYPEが発売ということで早速購入して読みましたよ。
みなぎっきたー。
漲りますね、やる気が出ますねー!内容はあれなので、言いませんがw
ということで、やる気が噴火して土曜日ではないのに更新しました。
まぁ、土曜日も更新しますのでご安心をw
切が良いところなので、普段より少し短い内容だと思いましたが、自分的には強い思いがあったのですが、どうでしたかね?w
とまぁ、今回はこんな感じに終わりました。
次回は、題名通りなので張り切って行きますー